第二章【2】
「これ、日本車なんだよね。でも、左ハンドルでしょ?何故だと思う?」
ショウは、赤信号で、ワタシの顔を覗き込むようにして言った。
顔が近くにきて、照れくさいったらなかった。
「いえ……分からないです。ワタシ、そんなに車のこと、詳しくないんで……」
「あ、ごめんごめん、そりゃ、そうだよね?これね、逆輸入車なんだよ。アメリカで売ってたのを取り寄せたんだ……ほら、みてごらん」
ショウは、そう言って、運転席のスピードメーターを指差した。
「ほら、ちょっとおかしいと思わない?」
ワタシは、身を乗り出して、ショウが指差したメーターを見た。
なるほど、言われてみると、なんとなく、表示が、おかしい。
「この60つうのが、大体、時速100kmなんだよ……」
このとき、ショウと目が合った。
微笑し、身を乗り出していたワタシの頭を右手でひょいと掴んで………
そして、キスした……!
あまりにも、自然な動作だったので、ワタシは、びっくりして固まってしまった。
頭が真っ白になっちゃって、なにも考えることが出来なかった。
どれくらい唇を重ねていたのか、それすらも、分からなかった……
突然、後ろからクラクション。
ワタシはびっくりして、思わず、ショウから、離れてしまった。
「ああ……もう、信号、青になってるね」
慌ててショウは、アクセルを噴かす。
「しかられちゃったね~」
ショウは、そう言って、子供のような笑顔でワタシを見た。
しばらく、ショウとは、目を合わせることが出来なかった。
つうか、ずっと下を向いていた。