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第六章【5】

「コンコン」

ドアをノックする音がしたようだった。

ワタシは、ベッドから頭だけ出して、音のするほうに目をやった。

ドアは開いており、男が、入り口に立っていた。


「コンコン」

スチール製のドアをペンか何かで、叩いている。

左手に、バインダーのようなものを持っていた。

黒いスーツに地味な深い青色のネクタイを締めている。


ワタシは、ベッドから身じろぎもせず、その男を睨んだ。

「よく寝てたな。ぐーぐー、いびきまでかいてたぞ」

男は、そんなワタシの視線を軽く受け流し、涼しい顔で話しかけてきた。


「……」

ワタシは、無言で、男を睨み続けた。


男の声と姿には、見覚えがあった。

ショウの家でワタシを拉致したリーダー格の男だった。


男は、まったくこたえた風もなく、ちらりと持っていたバインダーに目を落とし、そして、続けた。

「おまえ、薬、飲んでないだろう?なぜ、飲まない?」


「ワケわかんないところに連れてこられて

ワケわかんない薬なんて、飲めると思うの?」

ワタシは、腹立たしげにまくしたてた。


「まあ、別に飲まなくても、いいけどなー」

男は、もう一度、バインダーに視線を落とす。


「その薬、避妊薬と、抗生物質だぞ……」


「え?」

意外な言葉にワタシは、思わず声をあげた。


「まあ、そういうわけだ。自分が大事なら、飲んだほうがいいんじゃないか?」

「……」

それよりも、ショウだ。

ショウのことを聞かなきゃ……

「ショウは、ショウは、どこにいるの?」


「ああ、あのイロオトコか?」

男は、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。

「さあなぁ……そういえば、あいつ、本当に、おまえに面会願いを出してきたぞ。」


「え!」


「あと、7日くらいで認可されるんじゃないか?」

「ホントに?」

ワタシの問いに、男は、再びバインダーを覗き込んだ。

どうやら、そのバインダーに挟まれている紙には、ワタシのデータが書かれているようだ。


「ああ……そうみたいだぞ。しかし……」

男は、ワタシに向き直り、そして、ゆっくりと値踏みでもするように視線を上下に動かした。

「イロオトコの考えることは、分からんねぇ……」

男は、いやらしい笑みを浮かべながら続けた。


「こんなの、どこが、いいのやら……

後々面倒なだけなのになぁ……」

男は、吐き捨てるようにそういった。

そして、入り口の方に向き直り、ドアから外に出ようとしている。

「ちょ、ちょっと、待って……」

まだ、聞きたいことがあるのに!!


ワタシは、慌てて叫んだが、男は、何事もなかったかのように、ドアを閉め、部屋をロックした。




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