表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/53

第六章【2】

気がつけば、ワタシは、小さな部屋の中の粗末なパイプベッドの上に寝かされていた。

パジャマのような服を着せられていたが、下着は、つけてなかった。

天井は、低く、この部屋にも窓はなかった。


ベッドの横には、小さな丸いテーブルがあり、部屋の片隅には、トイレの便器のようなものが、置かれていた。

部屋は、かすかに、かび臭かったが、シーツも、敷き布団も、真新しいようだった。

袋から空けた直後のような臭いがしていた。


ドアは、スチール製で、中央の少し上が20センチほどガラス張りになっていた。

その小さな窓は、鉄格子で補強されている。

たとえ、ガラスを破ったとしても、抜け出すことはできないだろう。

随分、仰々しいことだ。

まるで、刑事ドラマで見る拘置所か、刑務所の独房といった感じだった。


身体の節々が、熱を持ったように痛かった。

特に下腹部は、男の体液や得体の知れない液体が拭いきれておらず、気持ち悪かった。

ワタシは、ベッドに寝たまま、部屋を見回したが、見つかったものといえば、監視カメラくらいだった。


しばらくして、ドアがガチガチと鳴り、ロックが解けるカチッという乾いた金属音がした。

そして、両手でトレイを抱えた中年とおぼしき女性が、入ってきた。

ワタシは、反射的に、ベッドから飛び起き、その女性に抱きつこうとした。

もしかしたら、助けてくれるかもしれない!

同性だもの。

いきさつをいって、ここから、出してもらえるように頼んでもらおう。


「た、助けて下さい!」

そう言いながら、女性の服をつかむ。


「清隔升手!」


「え?」

少なくとも、日本語ではないことは分かった。


「早点放升!!」

中国語だろうか?

女性は、ワタシを乱暴に押しのけ、テーブルの上に持ってきたトレイを乗せた。


「あ、あの?」

ワタシが驚いて、しどろもどろになっていると、女性は、突然、堰を切ったようにまくし立てた。


しかし、ワタシには、彼女が何を言っているのかまったく理解できなかった。

日本人じゃないんだ……

大きな絶望がワタシを覆った。


異国の言葉を話す中年の女は、腰に手をやりながら、お手上げだといわんばかりに、天を仰いだ。

そして、持ってきたトレイにかぶせてあった白い布を取った。

トレイの中身は、見覚えのあるコンビニ弁当と、ペットボトルのミネラルウォーターだった。


カップサラダと、ドレッシングまで付いていた。

ドレッシングの横に、小さな紙の包みがあった。

女は、その包みを取って、開けて口に入れる仕草をした。

そして、ペットボトルを指差し、それを開けて飲めといっているらしかった。

女は、そのことをワタシに伝えると、トレイに掛けられていた白い布だけを持ち去って、ドアの向こうに消えていった。


カチッという乾いた音だけが、部屋の中に残された。


小さな紙包みの中身は、薬だった。

種類の違う錠剤が3錠ばかり入っていた。


ワタシは、こんな状況でもおなかが空くんだということに驚きながら、弁当を平らげた。


でも、薬は、飲まなかった。

こんな得体の知れない薬、しかも、こんな状況で、だれが飲むものか!

ワタシは、薬の包みをくしゃくしゃにしてドアに叩きつけていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ