第五章【7】
ワタシは、そろそろお風呂から出ようと、バスタブからあがって、留めていた髪を手入れしていた。
その時、唐突に、音もなく扉が開いた。
ワタシが長く入っていたので、ショウがしびれをきらせて、入ってきたのだろうか?
ワタシは、次の展開をドキドキとしながら、振り返った。
しかし、そこに、ショウはいなかった。
見たことのない男達が……
黒いスエットの上下に身を包んだ3人の男達が、整然と入ってきた。
「!!」
驚いて、声も出ないワタシを……
裸のワタシを、2人の男が、両脇から抱きかかえる。
そして、もうひとりの男が、素早く、袋のようなものをワタシの頭にかぶせた。
一瞬だけ見えたその男は、うっすらと笑っているようだった。
たちまち、視界が真っ暗になる。
あまりにも突然の出来事で、そして、すべてが一瞬であったために、ワタシは、抵抗することを思い描くことすらできなかった。
なにが起こったんだろう?
両脇の男達は、かなりの力でワタシの腕を締め付けてくる。
「きゃ……」
その痛みが、今、ワタシに起こりつつある出来事を淡々と告げていた。
そうだ。ショウを呼ばなきゃ……
「ショウ!……ど、どこなの?」
ショウは、
ショウは、どうしたんだろう。
ワタシは、暴れた。
でも、そのたびに両腕を締め上げられる。
逃げなきゃ。
ショウを呼ばなきゃ!
「ショウ!ショウ!!」
ワタシは、叫んでいた。
男は、舌打ちし、そして、袋の上から、ワタシの口と顎を押さえつけた。
男達は、ワタシを部屋の玄関の方へ、連れていっているようだ。
男達は、無言だった。
それが、より一層ワタシの恐怖心を駆り立てた。
ワタシは、激しく抵抗した。
突然、後ろから声がした。
「ちょっと……ちょっと、待ってくれ」
ショウの声だった。
その声は、慌てる風もなく、冷静だったが、どこか、寂しげだった。
「………」
ワタシは、ショウに声をかけようとしたが、袋の上から顎を押さえつけられていて、一言も、話すことはできなかった。
「私語は、禁止されているはずだが……」
ぼそりと、初めて、男達の中のひとりが口を開いた。
それは、氷の刃のような冷たく鋭い声だった。
男は、ショウに向かっていっているようだった。
「いいかい?10日したら……」
男が、話し終わらないうちに、ショウは、言葉を切り出した。
「……10日したら、必ず、面会に行くから、それまで……」
言葉を搾り出すように苦しそうに続ける。
「それまで……頑張るんだ」
「おい!!」
先ほどの鋭い声の主が怒気をはらんで短く吠えた。
「ったく……」
左脇でワタシの腕を締め付けている男が小さく、つぶやいた。
バタン!
ドアが閉まる音がし、ワタシは、外に連れ出された………




