第五章【6】
ワタシは、ショウの家のお風呂で大きく背伸びをしていた。
ショウの家のお風呂は、ワタシの家のお風呂の軽く2倍はあった。
いつも、足をかがめないと湯船には浸かれないのに、今は、思いっきり足を伸ばしても、バスタブの向こう側には足は届かない。
それに、このお風呂には、ジェットバスまで付いていた。
さっき、蛇口の横のボタンを何気なく押したら、勢いよく水流が出て、危うく溺れそうになってしまった。
「はぁ~っ」
ワタシは、自分でもびっくりするくらい大きなため息をついていた。
ホント、ワタシの家とは、なにもかも違いすぎる……
ショウは、ちょっと芸能界にもいないんじゃないかってほどのイケメンでしかも、長身。
商社勤めに凄く高そうな車。
六本木にマンション。
シャッター付きの車庫に、大きなプラズマTV。
足を伸ばしても、ゆっくりくつろげるジャグジー付きのバスタブ……
「はぁ……」
もう一度ワタシは、ため息をつく。
ワタシのパパは、まだ若いのに頭がハゲかけていた。
つうか、てっぺんがカッパみたいになってきていた。
恥ずかしくて、友達に、とてもじゃないけどお見せできない。
そして、市役所勤めの冴えない公務員だ。
3年落ちのファミリーカー。
都内まで特急でも90分掛かる住宅地にひしめきあうように建っている一戸建。
カーポートは、日に焼けてぼろぼろで、蛇腹式のシャッターも普段使わないからサビサビだ。
中途半端な大きさの、やたら重いブラウン管TV。
体育座りしなければ肩まで浸かることが出来ないお風呂……
もうね。ダメダメじゃん……
ワタシは、ショウと比べることがいかに馬鹿らしいことなのか、つくづく痛感した。
そして、パパと結婚したママを心の奥底で軽蔑していた。
そうか!
ワタシは、すべてをわかった気がした。
ショウと、もし、ここままずっと一緒になるようなことになったら……
ママなんか、足元にも及ばないくらいの素敵な生活が待っているんだ。
そして、そういう可能性があるからこそ、ママには、邪魔されたくなかったんだ。
すぐ帰ってこいなんて、とんでもないことだ!!
だから、ワタシは、ママとの会話に、すごくイラついていたんだ……
ホントに
ホントに、こんな生活が、ずっと続いたら、どれほど幸せなのだろう……
「しょぉ~おおおっ」
ワタシは、湯船でぎゅーっとショウを抱きかかえる仕草をし、思ったより反響する自分の声にドキリとした。




