第五章【3】
キッチンの壁には、映画のポスターくらいの写真が飾られていた。
白地にショッキングピンクの美しい花の写真だった。
花弁は厚く、ちょっとごつごつしており、ボリュームがある。
結婚式とかの花束で、メインになるような美しい花だ。
ランの一種だろうか?
その花が2,3輪、大写しで、写されており、白で統一されているキッチンに文字通り花を添えていた。
ワタシは、ずっとこの写真が気になっていた。
でも、ショウが、料理に集中していて訊けないでいたのだ。
「綺麗な花ですね~」
「ん?」
ショウが、手を止め、ワタシの方を向いた。
「ランですよね、これ?」
「ああ、これ、僕が撮ったんだよ。一時期、写真に凝ったときがあってね。」
へぇ……これ、ショウが撮ったんだ。
「マレーシアに行ったときにジャングルに分け入って撮ってきたんだ。」
ショウは、言葉を続ける。
「……でも、これ、メインは、花じゃないよ。分かるかい?」
「え?」
ワタシは、思わず、写真を凝視した。
他になにか、写っているって意味だろうか?
ワタシは、しばし、考えこんでしまった。
でも、花以外の答えは、見つからない。
「うーん」
ワタシが、困って、唸っていると、ショウは、少しだけ、意地悪そうに笑った。
「ハハ……実は、これ、カマキリがメインなんだよね~」
なんだか、ショウは、得意げだ。
「ほら、ここが頭で、これが、カマで……」
説明されても、それがカマキリだなんて、まるで分からない。
ただの花の一部にしか見えない。
「これ、見つけたとき、ほんとに感動したなぁ~。散々探し回ったけど、わかんなくて……
……もうあきらめて帰ろうって思ったときに、かすかに動いてくれたんだよ!!」
なるほど、写真では、分からないはずだ。
動かないと、分からないらしい。
「しかし、自然ってすごいよね。
なぜ、こんな花そっくりに化けられるんだろう?
こんなの望んだって、絶対できるもんじゃないよ。ホント、自然ってすごいよ」
いや
いや
いや
いや、すごいのは、ショウですよ。ホント




