第五章【2】
ショウの手つきは、本当に見事だ。
たまねぎやトマトが、たちまちのうちに細かく切り刻まれていく。
ワタシは、それをうっとりと対面式キッチンの向こう側に腰掛けて……
本当に、うっとりと眺めていた。
マンションは、都内、それも、六本木の駅から歩いて僅か10分足らずのところにあった。
マンションの地下は、駐車場になっていた。
その入り口には、シャッターが下りている。
ショウが、車のダッシュボードから、小さなリモコンを取り出し、操作すると、それが、するすると上がっていった。
ちょっと、感動した!
マンションは、6階建てで、ショウの部屋は、その最上部、6階にあった。
ショウは、エントランスドアの暗証番号を解除し、手慣れた風に、エレベーターのボタンを押した。
エレベーターは、鍵を差し込んで、ボタンを押すタイプだった!!
ワタシは、これにも感動してしまった。
鍵を差し込んでエレベーターを操作するなんて、かっこ良すぎる!!
「ようこそ、わが家へ」
ショウは、そう言うと、玄関の頑丈そうな扉を開いた。
部屋は、おっきなワンルームで、軽く20畳ほどはあるだろうか?
大画面のプラズマTVにCDコンポ、大きな寝心地のよさそうな黒いベッドにダークブラウンのクローゼット。
どれも、高級そうで、しかも、とても、趣味が良いものばかりに見えた。
部屋の一角は、大きな机が置かれており、パソコンとプリンターが並べられていた。
机の前の壁には、コルクボードが飾られ、そこに、沢山の写真が無造作にピンで留められていた。
どの写真にも、様々な外国人がショウと並んで写っていた。
どれも、一様に笑顔で、ふざけ合ってる楽しげな写真ばかりだった。
多分、学生の時に撮ったものだろう。
その机がある一角と対角の位置に、対面式のキッチンがあった。
シンクの向かいには、大理石調のカウンターがあり、白い革張りの背の高いおしゃれな椅子が2脚備えられていた。
ワタシは、そのすわり心地の良い白い椅子に座って、カウンターに頬杖をつきながらずっと、ショウの様子を眺めていた。
手早くフライパンにオリーブオイルを塗り、といた卵を流し込む。
具を入れ、焦げ目がつくかつかないかの絶妙なタイミングでひっくり返して、あっという間に完成した。
予め用意されていたお皿に盛る。
そして、もう一枚……ほんと、どこかのレストランの厨房にいるような手際の良さだった。
それぞれのお皿にレタスとキュウリ、トマトを添えて、出来上がりだ。
「出来たよ~」
「なんだか、凄く美味しそうですよぉ」
「ん~それは、どうかなぁ……まあ、一応、イタリア風オムレツだよ……」
カウンターにお皿を置き、ワインセラーからワインを取り出す。
なんと、ショウの家にはワインセラーまで完備されていた!!
「んで、これも、イタリアの白ワインなんだよね~実は、これが飲みたかったから、これに合う料理を作ってたりして」
そういって、ワインとワイングラスを持ってきて、カウンターに座る。
なんだか、凄く至高な時間なんですけど……
「じゃあ、食べようか?」
「はい。いただきます……」
ってか、すごく美味しい!!
卵が舌の上でとろけて、ほわ~んって感じだ。
トマトとたまねぎも絶妙な歯ごたえで、オリーブオイルの香りも食欲を掻き立てる。
最後にぱらぱらと具の中に振りかけてたのは、多分、チーズだ。
ほんのり感が、舌に心地よい。
「ん~なんか、ホント、オムレツ専門店にいるみたいです。今まで食べたオムレツの中で一番美味しいかも……」
お世辞ではなく、ワタシは、本当に感動していた。
「いやぁ~嬉しいこと言ってくれるね。ありがとっ」
ショウは、嬉しそうに自分で料理したオムレツを頬張った。
「うん。今日は、すごく上手に出来たよ。たまたまだけど……
ちなみに、隠し味は、バルサミコ酢ね。知ってる?」
「いいえ……」
「そりゃ、バレてたら隠し味じゃなくなるよねぇ」
そう言って、ショウは、笑った。
バルサミコ酢とは、イタリアで作られている香りの高い果実酢らしい………
凄い。
そんなものまで常備されているとは……
ワタシの家には、ピエトロドレッシングさえないのに……




