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別れてからしばらくの間、思っていたこと
それは、反響するもの。
それは、響き、残るもの。
まるで寄せては返す波のように、そして、繰り返す度に小さくなっていく。
あの、声。
それは私が失ったもの。愛していたもの。
どうかもう一度だけ名前を呼んでくれたなら。
少しでも長く、響く音が私の中から消えていってしまわないように。
髪に触れる温かな手の感触を思い出せなくなるように、この残響も次第に消えていく。
好きだった。
愛していた。
そんなのもう届かなくていい。
私の中で響くこのエコーが、いつまでも消えなければいいのにと祈っているなんて、どれほどみっともないことか。
でもいつか必ず忘れる。
反響する音が必ず消えるように、いつか想い出になる。
響けと祈り、消えろと願う私の矛盾が醜い。