前世と神
新しく、異世界転生系に挑戦してみました。まだ案が定まってないためこれからも訂正を重ねより良い作品を作れたらなと思います。ここをこうした方がいいなどあったら是非感想欄に書いてください。
僕、*****はごく普通の高校生だ。低いわけではないが特別高いわけでもない平均的な学校に通っている。成績は中の上、運動神経もそこまで高くはない。まあ要するに凡人ということだ。
雨の日の放課後のことだった。
空は朝から重く、雲は低く垂れ込めていて、世界全体が少しだけ息苦しい色をしていた。天気予報では夕方から雨と言っていたはずなのに、その予報を待つこともなく、現実のほうが先に降り始めていた。予報通りなら雨が降らない予定だったので傘は持ってきていない。
そのため、ずぶ濡れになりながら走って帰ることになってしまった。
制服の袖がゆっくりと雨を吸い込んでいく。最初は冷たいだけだったものが、時間とともに重さへ変わっていく。走るのも面倒くさくなってきたので歩いて帰ろうとスピードを落とした。
アスファルトに落ちる雨の音、遠くを走る車の音、誰かの家の生活音。それらが混ざりながらも、どれも僕とは関係のない場所で起きているように感じられた。
住宅街は変わらず動いている。
誰かが笑い、誰かが帰り、誰かがただ生きている。そのすべてが別の層で進んでいるようで、僕だけが少しずれた場所にいるような感覚があった。
手にはコンビニの袋が下がっている。中身は安いパンと飲み物だけ。これはまだ雨が降っていない時に学校の近くで買ったものだ。
そのときだった。
「危ない!!」
鋭い声が雨の膜を裂いた。僕の鼓膜の膜も裂かれると思ったが。その声がした方(真横)を見ると四十代くらいのスーツ姿のおじさんが大声を出していた。
すぐさま僕は視線を前に向ける。
視線の先に、僕より少し小さいくらいの影があった。
僕が中学生の頃から片想いしている相手が、車道へ踏み出していた。そこまではいい。しかし横からトラックが猛スピードで止まる気配もなく飛び出してくる。その女子生徒は気づいている風もなくそのまま信号を渡ろうとしていた。
そのトラックはふと気づいたようにクラクションを鳴らす。
ブレーキの悲鳴が混ざる。
雨音とは違う鋭い音が、一気に世界へ流れ込む。
間に合わない。
理屈ではなく、感覚としてそう理解してしまう。
それでも僕の身体は動いていた。
理由はない。正義感でも使命感でもない。ただ「助けたい」という感覚だけが、思考を経由せずに直接身体へ流れ込んでいた。
足が地面を蹴る音がやけに鮮明だった。雨に濡れたアスファルトの冷たさが靴越しに伝わり、その感覚が異常なほど現実的だった。
距離が縮まる。
あと少し。
あと一歩。
時間が伸びているような錯覚の中で、僕は手を伸ばした。
届く。
間に合う。
そしてその手は女子生徒を捉えて歩道側へ戻すことに成功する。否、その刹那この世界の重力が全て僕にかかっているように何かとても重いものが僕に寄りかかってきたように体が硬直した。
ドン!
大きな音と共に意識は薄れていく。如月さんは助かったのだろうか。如月さんとはその片想いし続けている女子生徒のことである。そういえば明日数学の小テストあったな。勉強全然したなかった。帰ったら勉強しなければな。夜ご飯はなんだろう。さっきコンビニで買ったパンとかを食べようかな。
(死ぬってこういうことなのかな)
無駄な思考がひたすらに頭の中を駆け巡る。ドラマとか映画とかなら好きな人への愛でも心の中で叫んだりするはずなんだけどな。夜ご飯のこと考えて何してるんだろ、僕。
「おい!起きろ!」
「大丈夫か!」
「あいつ女の子を庇って……」
いろんな声がする。ああ、うるさい。鬱陶しい。静かにしてくれよ。せっかく気持ち良く眠れそうだったのに。最悪の寝つきじゃないか。
そのまま思考は刈り取られていき世の中が真っ黒になった。すると僕は上に向かって落ちていた。その世界は真っ白で上下左右がわからなくなっていた。重力がまるでないように感じられる。なぜ上に向かって落ちていると分かったかって?感覚だ。何もない真っ白な世界をただひたすらに落ちている。いや感覚もないのかもしれない。温度、風、心拍、全て感じることができない。
その時何か地面のようなところに着いた。そこで重力は元に戻ったように地面に立つことが許される。その空間は春のように暖かく心地よい風が頬を撫でている。そんな感情に浸っていたら何か人のような影が見えてくる。
その影はこちらに向かってきているようだった。顔がはっきりと見えてくる。白い長い髪に長い髭を蓄えた老人が杖をつきながら着々とこちらにきている。その風格はまるで仙人のようであった。
「정말 미안했어. 참아줘.」
うん。何言ってるのか全く分からないよ。なんか韓国語で言っているようだけど……。
「ちょっと何を言っているのか分からないので良ければ違う言語でお願いします」
はっとしたようにその老人は口を開いた。
「أنا آسف حقا. كن صبورا.」
だから分からないって!もう何語かも分からないし。
「えっと、何言ってるのか全く分からないので英語か日本語でお願いします。」
「ほんまにすまんかった。堪忍してな。ああ、ここまではさっき言ってたことやな。わし、いろんな世界の神やらせともろてんねん。そんでわし、ちいとばかし居眠りをしてもうてな……自分、死なせてもうたわ!」
いや待て待て。情報が完結しないぞ。某アニメの領域の中に入った時みたいに。ふざけるのはこのくらいにして整理しよう。まあ、ふざけているのは主にこの自称神(草)なんだけど。まずこの老人は関西弁でずっと喋っていて神様であるらしい。それで居眠りをした結果僕が死んでしまったと。
「おいおい、括弧草とはなんや。わしはほんまの神様やで。なんなら自分、転生させてやらんでもええんやで。」
待て待て。転生ってなんだ。僕は死んだのか?なら如月さんは?本当にこの老人は神様なのか?というか思考が読めるのか?
「わしかて聖徳太子とちゃうんやから一つ一つ言ってもらわんと分からんわ。そういえば聖徳太子はなわしが与えた音を聞き分ける能力をよう使いなはって十人の声を一度に聞き取れるようになったんやで。ほんで……」
聖徳太子、云々のはなしは気になるけど今はどうでもいいんです。話をいちいち脱線させないでください。本題に戻ってください。
「ん?本題?ああ、転生の話か?」
そうです転生の話です。
「まず、あの女は良家のお嬢様として今は幸せに暮らしとるで。一生遊んで暮らせるような生活やな。ほんで、転生については自分、転生させてやるつもりやねん」
如月さんも僕と同じように死んでしまったのか。でも、幸せに暮らせているならいいのか。
「自分、死ぬ運命ちゃうかったんや。ついでにあの女もな。そんで死ぬ運命ちゃうかったんやつは転生させることができんねん。と言っても転生した肉体の命を奪うわけではないで。あくまでも死んでしまったやつの体に転生させるんや。あの女はたまたま死産になる予定だった家の子供として生まれ変わったんや。」
つまりあれか。僕も転生できるということか?
「ああ、だから行っておいで。」
そう神が口にして指をパチンと鳴らした。その瞬間、閃光が当たったようにピカッと視界が奪われて気づいた時には世の中が見えていた。
戦場だ、と認識する前に戦場として受け入れられてしまう感覚があり、理解ではなく“強制的な認識の固定”として現実が確定していく。
身体は異様に軽く、まるでこの世界にまだ完全に固定されていないまま浮いているような不安定さがあり、それが逆に生存の感覚を曖昧にしている。
「御覚悟願います。」
次の瞬間、視界の端に刃が振り下ろされる気配が走り、避けるという判断が生まれる前に身体だけが先に崩れ、存在そのものが遅れて解釈されるようなズレが起きる。
音が遅れて追いつき、刃が空気を切る音と同時に「死」という概念だけが先に理解されていくが、その理解すらもすでに遅れている。
肩あたりがとても熱くて痛い。左手で触ってみると生暖かい感覚が脳を刺激する。
フン。
音と共に体が崩れる。トラックに異世界転生アタックをされた時と同じように上下左右が分からないの感覚で上へと落ちていく。そして地面に足がついた瞬間、ダッシュで老人の元へ駆け寄る。
言われた話と違うじゃないか。なんだ、死んでいく僕を見て内心ほくそ笑んでいるのか?僕が死ぬことがそんなに嬉しいのか?
「そんなムキにならんで。ストレスはお肌にも悪いで。」
喧嘩、売ってんのか?
「すまんすまん。座標を打ち間違えたんや。ほんまにすまんかった。代わりといってはなんやけど自分、魔術のある世界に魔力∞で転生させてあげる。だからほんま許してや。」
魔術?そんなの男の夢、ロマンじゃないか。そんなことができるのなら全然許すぞ。たださっきのように即死とかになったら許さないけど……。
「おう、そうか。ほんまにありがとうな簡単にその世界について説明しておくで。」
それはありがたい。いきなり見ず知らずの世界に転生させられたところで困ってしまうからな。うん。早く説明してくれ。
「この世界は戦国時代と魔術が組み合わさった世界なんや。自分でも知っている織田信長はんとかもおるけど、その世界に魔獣や魔王、魔神なんかもおるんやで。ほんでこの世界にはスキルや適正職などいろいろあんねん。」
おー。織田信長と会ったりできるのか。まあ僕が好きな戦国武将は立花宗茂なんだけどね。魔術とか魔獣とかマジでラノベみたいで面白そうだな。魔力∞とか最強だろ。無双ゲームみたいな感覚なのかな?いやあ、楽しみだ。戦国時代も魔術もみんな大好きだろ。人生で一回は行ってみたいと思うだろう。
「おー。自分めっちゃ楽しみにしてくれとるやないか。それはわしも嬉しいことやで」
なぁなぁ早くいつもの指パッチンしてくれよ!早く行ってみたくてたまらないんだよ。
「いや、まだあかん。説明が足りてないんや。まず自分には特別な能力を与える。それは神級魔術や。これは消費魔力が大き過ぎて誰も使えん。やからあんま見せびらかさんどきな。その神級魔術については自分の転生先の家の本に書いとくから見といてな。」
もう説明は終わりか?よし早く頼む。
「では行っておいで。」
パチンとさっきと同じ音がする。その瞬間、閃光が当たったようにピカッと視界が奪われて気づいた時には世の中が見えていた。




