表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/4

第3話 死なないという異常


「……あれ?」


牙が食い込んだはずの腕を見て、思わず声が漏れた。


傷が――ない。


さっきまで確実に食いちぎられていたはずなのに、 何事もなかったように元に戻っている。


「グルル……?」


目の前の魔物も明らかに動揺していた。


(やっぱりそうか)


頭の中に浮かぶ。


劣化再生れっかさいせい


真価しんか不死級ふしきゅう


「……なるほどな」


理解した。これは――


(死なないってことか)


恐怖が消える、代わりに、確信があった。


「来いよ」


俺は一歩踏み出した、魔物が再び飛びかかる。


牙。爪。何度も体に食い込む、だが全部意味がない。


(全部治る)


だったら――


「捕まえた」


飛び込んできた魔物の首を掴む。


暴れる、爪が食い込む、血が流れる。


 だが次の瞬間には、消えている。


「無駄だっての」


そのまま地面に叩きつけた、ドンッ、と鈍い音、魔物の体が跳ねる、さらにもう一度、叩きつける。動きが鈍くなる。


「終わりだ」


最後に全力で踏み抜いた。骨が砕ける感触。魔物は動かなくなった。


 静寂。


 そして――


「……倒した?」


誰かの声が震えていた。


周囲の人々が、呆然と俺を見ている。


「素手で……?」


「なんで死なないんだ……?」


ざわざわと広がる動揺、逃げていた人間たちがゆっくりと戻ってくる、誰もが俺から目を離さない。


(目立ったな……)


だがが悪くない。


 むしろ――


(好都合か)


この世界は力がすべてだ、なら、見せつければいい、俺は軽く息を吐いた。


「終わりだ」


誰に言うでもなくそう呟く。その時だった。


「ちょっといいか」


低い声がかかった、振り向くとそこにいたのは鎧を着た男だった。剣を腰に下げ鋭い目でこちらを見ている。ただの通行人じゃない。


(強いな)


直感で分かる。


「今の、全部見てた」


男は一歩近づいた、周囲が少しだけ距離を取る。


「お前……何者だ?」


真っ直ぐな視線、試すような目。


 少しだけ考えて――


「ただの底辺だよ」


そう答えた、男は一瞬だけ驚いた顔をし、すぐに笑った。


「面白い」


口元を歪める。


「普通じゃないのは確かだな」


そう言って腕を組む。


「その力、どうするつもりだ?」


 どうする、か。そんなの決まっている。


「稼ぐ」


 即答だった。


「このままじゃ終われないからな」


 男は満足そうに頷く。


「いいな、その考え」


 そしてこう続けた。


「冒険者になる気はあるか?」


 一瞬、沈黙。


 だが――


 答えはもう決まっていた。


(成り上がるなら、ここだろ)


「ある」


 短く答える。男は笑った。


「よし、決まりだ」


 そう言って背を向ける。


「ついてこい。ギルドに案内してやる」


 その背中を見ながら思う。


 底辺だった俺が――


 今変わろうとしている。


(行くしかないな)


 一歩、踏み出す。


 成り上がりの道は、もう始まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ