第2話 100ゴールドの選択
「ほらよ」
店主は無造作にスキルカードを投げてよこした。
《劣化再生》
見た目はどう見てもハズレだ。
だが――
《真価:不死級》
この表示が頭から離れない。
「本当にいいのか?それ、使えねぇぞ」
店主が笑う。
「問題ない」
短く答え俺は100ゴールドを差し出した。正直、ほぼ全財産だ。これを失えばしばらくまともな生活はできない。
だが――
(これは賭けじゃない)
確信があった。
「まいどあり」
店主は興味なさそうに金を受け取る、周囲の視線が少しだけこちらに向いた。
「またゴミ買ってるぞ」
「バカだな」
小さな声が聞こえる、だが気にしない、俺はカードを握りしめた。
「……使うか」
この世界ではスキルカードは体に取り込むことで使用できる、深く息を吸う。
そして――
カードを胸に押し当てた、光が弾ける。
一瞬、視界が白く染まった。
《スキル獲得》
頭の中に声が響く。
次の瞬間――
全身に奇妙な感覚が走った、熱い、だが痛みはない。
むしろ――
(軽い……?)
体が妙に軽い、試しに腕を動かす、問題ない。
「……これだけか?」
拍子抜けした、確かに何かは変わった、だが強くなった感じはしない。
「やっぱりハズレか?」
そう思った、その時、近くで悲鳴が上がった。
「お、おい!魔物だ!」
市場の入り口が騒がしい、人々が一斉に振り返る。
そこにいたのは――
黒い犬のような魔物、牙をむきこちらを睨んでいる。
「なんで街の中に……!」
誰かが叫ぶ、逃げる人々。
混乱する市場。
そして――
魔物の視線が俺に向いた。
「……マジかよ」
最悪だ、武器もない、戦う力もない。
(いや……)
さっきのスキル。
《劣化再生》
《真価:不死級》
もし、これが本当なら――
「試すしかないか」
俺は一歩前に出た、次の瞬間魔物が地面を蹴った、一直線に、突っ込んでくる。
速い、避けきれない。
(来る――!)
牙が俺の体に食い込んだ、激痛。視界が揺れる。
だが――
その直後。
(……あれ?)
痛みが消えた、傷が消えていく、肉が元に戻る。
「……は?」
ありえない光景だった、一瞬で完全に回復している、魔物も驚いたのか動きが止まる。
「……なるほどな」
理解した。
これは――
(当たりどころじゃねぇ)
「最強だろ、これ」
口元が自然と笑っていた、成り上がる、そのための力は、もう手に入っている。




