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こんな田舎は俺には小せぇと北海道を飛び出し、東京に来て五年

BIGになるんだと意気込み分かったことは、空気が悪いことと

水がまずいことと、牛乳が薄いこと。

何年経っても馴染めず、今日も朝焼け浴びてるどうも俺です。

TV番組で見たホストという仕事、こことは何もかも違う煌びやかな世界

憧れだけで飛び込んだ世界は、東京湾の方が綺麗だった。

いつまで経っても田舎もんだと馬鹿にされ、後輩にも舐められる。

ひたすら女性をヨイショすれど気に入らなければ罵倒の嵐

「おい、そこの、なんか面白いことやれ」

どこぞのキャバ嬢か風俗嬢か知らないが、もう耳にタコが出来る程言われた。

「つまんねー、男としてもつまんないのに何があんた出来んの?」

これも鉄板、俺、年上ですけど!

「すいません、出直してきやす。」

「二度と面見せんな、目が汚れるー」

これが、俺に与えられたここの世界での役割。

あと上位の方々のお世話と、酒を飲む担当。

酒だけは強かったからそこは重宝されたが肝臓さんが

もうだめかもって言ってる。

こんなはずじゃ無かった、

入りたての頃、先輩に教えてもらった。

俺たちは羊の皮をかぶった狼だ。

優しい言葉で近づいて最後は食べちまう。

でもな女も食べてもらいに来てるのさ。

自分たちが甘くて美味しいことを確かめてもらいたくて。

男前がそんなこと言うもんだからそりゃかっけーと思いましたとも

でも俺はどうやら羊の皮を被った羊のようで、

なんか女の子騙すとか気が引けるし、高い酒を注文してたら心配になる

混じりっけ無しのウールをお届けしております。

そんな俺が今でもホストをやれているのはたった一人俺にも太客がいるからだ


めぐさん、本名は知らない

俺でも知ってる有名キャバの№1だった

うちに通い過ぎて店を首になったらしい、胃が痛い

最初に見たときはなんて綺麗な人なんだろうと思った。

同じ夜の世界にいるはずなのに住む世界が違うと思った。

俺には縁の無い人なんだろうと思った。

落とすお金の額は半端ないし、あの美貌、上位陣が本気に

なって落としにかかったが結局落ちることは無かった。

それでもお店にとっていい客であることは間違いなく

来店とあらば店を上げてもてなした。

何人かを交代で指名していためぐさんだったが

どういう訳か、ある時から指名するのは俺だけになった。

そのせいといってはなんだが、№1になりかけた。

なんでお前なんだとやっかみを言われたがこっちが聞きたい。

なんで俺なんだ。

そんな日々が約一年続いている。

その間にめぐさんは店を首になって新しい店で働きだした。

借金があると噂もあり、上位陣はめぐさんを避けるようになった。

サゲちんと罵られたが俺もそう思います。

流石に当初程ではないが、今でもめぐさんは来店されると高いボトルを一本入れてくれる。

変に心配して、安いのにしたらどうかと言ったら本気で怒られた。

「ホストが何言ってんの、馬鹿じゃないの、高いボトルを入れてもなお満足させ てまた入れてあげようと思わせるのがあんたの仕事でしょう。

逃げんな。」

なんでこんなかっこいい人が落ち目に合ってるんだろう。

やっぱ俺、サゲちん?素人童貞なうえに?

情けない俺に、尽くしているとも見えるめぐさんと俺が出来ていると噂が立った

そんな訳ない、そりゃ俺はもうメロメロですよ。

でも、めぐさんがずっと別の誰かを見ていることは馬鹿な俺でもわかる。

俺じゃダメなんだ。

めぐさんに思われている男はどんな奴なんだろうな。

きっと男前で、スタイル良くて、頼りがいのある男なんだろうな。

ていう感じの人に詰められてる、どうも俺です。

思ったよりいかついお顔でガタイが良い方でおそらく堅気ではないんですけども

ようやくするとめぐさんに近づくなということらしい

めぐさんてユキさんて名前なんだーて現実逃避してたら

ちゃんと殴られました。

もういいよ、分かりましたよ。

やっぱりあんなに頼りがいのある彼氏さんがいたんだ。

この人殴ってますけど、これが嫉妬とかちんけなもんじゃないことは

羊の俺だって分かる。

本気でめぐさんを思ってるんだ。

愛してるんだ。

こんなにいい人がいるなら俺の出る幕なんてありはしない。

きっと俺に良くしてくれたのも、めぐさんもとい、ユキさんの暇つぶしかなんかだったんだろう。

向いてないのは最初の一週間で分かってたし

田舎に帰ろう。

ユキさんのおかげでそこそこ貯金はあるし、

両親も帰って来いって言ってるし、親孝行しよう

牛の世話してゆっくり生きよう。それが俺の道だ。

殴られたところは痛いし、奥歯は抜けたし、二日酔いで頭は痛いし

二日酔いだよね?

本物に殴られると仕返ししようとか思わないもんだな、生きてて良かった。

店長に顔面の写真を送って今日は出勤出来ないと伝える。

了解と短い返信。

期待もしてなければ心配もしてくれない。

こんなもんだよ都会はさ。

それでもユキさんにはなんか温かさ感じたんだけどな。

田舎もんへの哀れみかもしれないけどさ。

もう会うなってことだったけどメールするとは言われてない。

羊も揉まれればこれぐらいはたくましくなるってもんで

感謝と田舎に帰ることを短く伝えた。

頑張ったね。

見たか店長、同じ短い文章でもこんなに違う。

全てを肯定頂いたようなこの幸福感。

ユキさん今まで本当にありがとう御座いました。

そりゃさスマホに頭下げる顔面ボコボコの男がいれば俺でもおかしいと思うよ。

でもさそんな目で見ますかね東京人。

もう未練はない、おうちに帰ろう。

今日は朝日をふかふかの布団で迎えられそうだ。

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