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「メリークリスマ~ス、チキンいかがですか~、メリークリスマ~ス

チキンいかがすか~。」

定型文を繰り返す僕は既に半壊状態だが未だ全壊でないことが僕を苦しめている。

時間が長い、もう何十時間とこのセリフを繰り返している気になるが

先ほどから10分もたっていない。

今日はクリスマス、町は色めき浮足立った空気が充満している。

これ見よがしにカップルが群がっており、

非常に不愉快な冬景色を作り出している。

だが世間様は違うようで、どうしても特別な日にしたいらしい

こんな聖なる夜に何もしないことは罪であり罪人である。

罪深い僕は、本当であれば若く可愛い女子に着せたかったなんて余計な嫌事言わ

れながら着替えたサンタの格好で寒空の中放り出されている。

僕だってやりたかない、誰が好き好んで中年の太った男と一緒にサンタの格好を

して喜ぶのか。

店長ご指名だった可愛い子は今頃、彼氏と熱い夜を過ごしていることだろう

ざまあみろ、お前臭いって言われてたぞ

僕は、童貞ってバカにされてるけど

誰が童貞だ、良くわかったな。

やっぱり臭いで識別してるんだろうか・・・

チッあのカップル僕のこと見て笑ってたな何が可笑しい

チキンぶつけるぞ。

「すみません、チキンを1つ下さい。」

おっと客か、仕方ない仕事するか

「ありがとうございま~す。1点で800円です。」

しかしこの人怖いな~まず顔が怖い、頭つるつるだし、なんか傷とかあるし

普通のサラリーマンですなんてことはないだろう。

いやそうあってくれ、ギャップであってくれ

でもこの人の彼女さん可愛いんだよな~二人で食べんのかなチキン。いいな~

そこでふと何かを忘れているような気がした。

けして思い出すことは無いのだが忘れていることは確かだという変な感覚

この禿頭のおっさんは良く来るお客さんだ。

それ以外に何かあったっけ?

差し出されたお金も受け取らず長らくトリップしていると、それに気が付いた店

長が店の中から飛び出してきた。

そして飛び出した勢いのまま滑り込むように土下座していた。

それはそれは見事な土下座だった。

土下座という競技があれば店長も輝いた人生を歩んでいたことだろう。

「すいません、こいつほんと使えなくて言ったことはすぐ忘れるし

これおまけですんで。申し訳ありませんでした。お前も謝れ!」

「すみません・・・」

「いいです、いいです、気にしないで下さい、逆に申し訳ない。」

店長の押しが強く半ば強引におまけ渡し、禿頭の人もしぶしぶと

言った様子で受け取り帰って行った。

「店長、謝罪とはいえ、良くあんなに強引に行けますね。

怖くないんですか?やっぱり見た目だけのサラリーマンなんすか」

「この馬鹿!あんなん筋者に決まってんだろ。」

唾飛んでますよ、店長・・・

「勘弁してよ~今日出れるって言って無かったらもうクビにしてるよ。

それと、この前の処理また間違えたよ。どうして覚えられないの。」

僕は別に覚えられない訳では無い、忘れてしまうのだ。


僕の脳は壊れている。半壊している。

僕にその時の記憶は無いが、毎朝見ている僕の日記には

事故が原因で記憶が欠損しやすくなってしまったと書いてある。

このコンビニで働いて三年になるがこの三年の間でも記憶の欠損は何度も起きて

いるしコンビニで働き始める前の記憶となると僅かな断片的なものしか

覚えて居ない。

さすがに自分が何者かなんてところから記憶が無いわけではないが

時たま数日、僕の感覚としては飛ぶので起きたら日記を見返すのは

習慣になっている。

日記も見返すことを前提にしているので一行で書かれたものがほとんどで

仕事の詳細などは書いていない。

飛んでない時に教えないと駄目ですよ。まあ今日の記憶も

飛ぶかもしれないんですけど

そうだから童貞と決まった訳じゃない、それは僕にも証明出来ない

ただお前が臭いのは確定だけどな。

「ちょっとまたぼーっとして、そろそろ思い出してよ。」

そういって店長は刃渡りの大きなナイフを手渡し来た。

そうかあいつなのか

僕は自分が何者かは忘れていない。

素晴らしい、今日は僕にとっても特別な日になりそうだ。

今日という日を覚えていられますようにとかのイエスキリスト様にでも

祈るとしよう。

自然と踊る足取りは雪道蹴って進んでいく

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