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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第五章 氷雨の夜に
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 銀という男は黒戸様と長い付き合いのある人物であり、魔術師だ。彼は基本的にずっと家に引きこもって魔術の研究に勤しんでいる。


黒戸様は諸事情で神社から離れることが出来ないらしく、その都合で理飛がお使いに行くことも多い。


三人は銀の家に向かうため田舎道を歩いていた。


道中に理飛が話したことによると、この地域の田畑は黒戸様の知恵によって非常に効率化され、収穫量は以前よりも跳ね上がったそうだ。


他にも洪水の対策や狩り用の罠の考案、様々なことがらに対しての知識を持ち、人々に恩恵を与えている。



そして、智也と昏は歩いていて気がついたことがあった。

それは現代の町で一番大きな神社、時夜神社ときよじんじゃが無いことだ。


黒戸神社が次元の神を祀っているのに対し、時夜神社は『時夜紅葉ときよもみじ』と呼ばれる神様を祀っている。

時夜神社も黒戸神社の分社の一つであることから、次元の神と関連した何かを祀っているはずだが、詳しいことはあまり覚えていない。



三人は銀の家の前まで着いた。

銀の家は他の家よりも大きいため少し目立っている。智也の土地勘的には現代の二条家のあるあたりだ。


理飛が大きな声で銀を呼ぶと、中から目にクマのある男が現れた。

「理飛、あまりでかい声を出すな。集中できない......そこの二人は誰だ?」


「この二人は黒戸様の客人だ」


二人は銀に軽く挨拶した。

銀は少し訝しんだ目で二人を観察した後、まあいいと思ったのか家の中に入れた。


家の中には魔術陣の描かれたたくさんの木札が散乱しており、その中には『流刃』に似た術式もあった。


昼夜問わず魔術の研究に集中しているようで、部屋は掃除されていないのか汚い。


(朝霧さんタイプだな)と智也は思った。


「それで、黒戸様の要件はなんだ?」


理飛は黒戸様から預かった中に硬いものが入った書簡を渡した。


銀が書簡を開くと、中には銀色の鍵が入っていた。その鍵は四分の三が黒く錆びていた。


その鍵を見た瞬間、銀は目を大きく見開き、暗い顔をした。


智也はその鍵に見覚えがあった。

忘れるはずもない。あの日、過去へタイムリープする際に使用した銀色の鍵と同じ形をしていたのだ。



「その鍵......!」

しかし、その鍵を見て一番驚いたのは昏だったようで、思わず言いかけた言葉を自ら抑えた。


銀は鋭い目つきで昏を睨んだ。

「お前、この鍵を知っているのか?」


過去の世界であまり目立つのは良くない。昏は気のせいだったと訂正した。


銀はさらに訝しんだ目で昏を見つめるが、理飛が間を取り持ってことなきを得た。


書簡の中身を読んだ銀は、智也と昏のことを交互に見てから、ため息をついた。

「......俺に、聞きたいこととかあるか?」


理飛が手を挙げた。

「黒戸様について聞きたいです!」


「お前には聞いてないが......」


智也と昏も頷いたため、銀は話を始めた。



銀と黒戸様の初めての出会いは、銀がまだ幼い時だった。


銀は小さな山の上で夜空を見上げて過ごしていた。ある時、夜空に流星が駆けた。


その瞬間、目の前にあった古びた鳥居の文字が輝き、まばゆい光を放った。閃光の後、鳥居の境界から宇宙が垣間見得た。


そして、一人の美しい女性が鳥居の境界から姿を現した。それが黒戸様との出会いだった。


銀はその日以降、黒戸様に頻繁に会うようになり、次第に彼女から魔術を習うようになった。



少し脱線して、黒戸様の色々なエピソードを話す銀からは懐かしさや、憧れのような気持ちを感じられた。



「まあ、こんなところだ」


「黒戸様は、突然、鳥居から現れたってことですよね?」

智也は訊ねた。


「そうだ。なんでも未来から来たらしい」


"未来から来た"その言葉で智也は合点がいった。現代の黒戸神社に残る時空門伝説の一つ、鳥居から現れた未来人の話と繋がったのだ。


(黒戸様は未来人......ということは、次元の神との契約者か? だとしたら、どうして自分のことを智慧の魔女と呼んだんだ?)


謎は深まるばかりだったが、日が暮れ始めたので三人は黒戸神社に戻ることにした。


理飛は銀に手を振った。

「ありがとう、銀じいさん!」


「まだおじさんだ!」



三人が去っていくのを見送ると、銀は家の中に入って銀色の鍵を見つめた。


「あれが、俺の子孫か......時夜しや、この鍵で俺は何をすべきなんだ?」


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