黒戸様
智也と昏は少年の案内の元で、とある人物に会うため歩いていた。
少年は妖術、つまりは魔術のことを知っており、この地域で一番の魔術師と呼ばれる"黒戸様"に教わっている。
そして、黒戸様は彼に、魔術師に会ったら、その魔術師を自分のの元へ連れていくように伝えられているため、二人を案内しているのだ。
案内して貰いながら辺りを見てみると、かなり建造物が古いように感じ、コンクリや街灯も見当たらない。
道行く人の格好は古風で、まるで過去にタイムスリップしたような感覚だった。
「もしかして、私たち......」
昏がこっそりと耳打ちしようとした時、こっちだと少年が大きな声を出した。
そこは小さな山で、智也にとって見慣れた形をしている。
階段を登ると、そこには石造りの鳥居があり、既視感のある魔術言語のような文字が刻まれていた。
「さっき、黒戸様って言ってたよね?」
「ああ、そしてこの鳥居.......ここは、黒戸神社だ」
黒戸神社は智也の祖父が神主を務める神社であり、現代では寂れてしまっている。
そして、タイムリープのための門である時空門がこの鳥居であり、次元の神を祀っている。
少年が二人を連れて案内し、ある部屋の前で止まると、この部屋に入れと彼は言って去っていった。
智也と昏は意を決してその扉を開いた。
扉の先には巫女姿をした一人の女性が座っていた。
その女性から感じる気配は、どことなく安心感を覚えると同時に、真逆の恐怖を感じさせ、智也は体が震えるのがわかった。
髪は銀色で、瞳は赫い光を放っていた。
女性は二人を見ると不敵に笑った。
「久しぶりだね、彩島智也、二条昏」
その声に、智也は聞き覚えがあった。
「楓......!」
それは智慧の魔女を自称する、夢の中で聞いた声だった──




