沈む湖
時は少し遡り、昏と離れ離れになって少し経った時、智也は石碑の周辺を探っていた。
石碑は破壊具合から見て最近壊されたものと予想がつき、紗由理が関係していると感じた彼は石碑の周囲を探っていたのだ。
しかし、何も異変は見つからなかった。
今度はゲートの痕跡を調べてみると、ゲートでは無いが、何か空間に異常があるのがわかった。
まるで見えない結界で空間を隔たれているような、次元の神との契約者である彼くらいにしかわからない違和感を感じたのだ。
「......出来るがわからないが、やってみるか」
智也は隔てられた空間と波長を合わせて空間魔術『空風』を発動させた。
短い距離で瞬間移動の出来るこの魔術を発動すると、硬い結界のようなものに阻まれつつも、隔てられた異空間に強引に突入出来た。
そして、現在──
昏と紗由理が閉じ込められていた異空間に強引に入り込んだ智也は怪物と遭遇した。
吹き飛ばした怪物の腕は少しずつだが再生している。
智也は空中に三つの魔術陣を同時に造り出し、唱えた。
「不可視の衝撃」
三つの不可視の魔力弾が放たれ、怪物の上半身を吹き飛ばした。
そのタイミングで紗由理が智也たちの元へ駆け寄って来た。
智也は紗由理を見て驚いた顔をした。
「え、紗由理さん!?」
「智也くん、良かった来てくれて......話したいこと色々あるけど、とりあえず後にしよう」
「でも、あいつはもう倒したはず......」
しかし、異空間は消えていない。
紗由理が二人に言った。
「あの魔物は狡猾。自身の急所を湖の中に隠している。だからあれは蝶の尾状突起のように損傷しても平気な部分なんだよ」
「なるほど、なら急所の湖の中を狙えばいいんですね! 紗由理さんは昏に防御魔術をかけておいてください。巻き込むかもしれないので」
「わかった」
昏は混乱していた。
「え、何するつもりなの?」
「湖ごと吹っ飛ばす!」
智也が集中して魔力を圧縮すると、魔力が蒼い輝きを放った。
そして両手を前に突き出して、魔術陣を形成する。
魔術陣が構築し終わる寸前、湖から細長い二本の腕が智也に向かって伸びた。
智也に当たる寸前、紗由理が見たことの無い魔術を用いて、二本の魔術式の刻まれた帯のようなものを生み出した。
水色に光る魔力の帯を二本の腕に突き刺すと、帯に刻まれていた術式が起動し、一瞬にして二本の腕が捻り飛んだ。
それと同時に魔術陣の構築が終わり、智也は唱えた。
「蒼星の雫」
蒼い高圧縮魔力が放たれ、湖に一滴の雫が落ちると、それは巨大な波紋を生み出して蒼い光の閃光が辺りを包んだ。
閃光が収まると、三人は元の小さな湖にいた。
「ありがとう」
どこからかそんな声が聞こえた気がした──




