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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第五章 氷雨の夜に
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泥湖

二人は樹海の方へと進み、こっそりと樹海の中へと入った。念入りに痕跡を辿っていくと、裸足で樹海の奥へと進む新しい足跡が一つあった。


「お姉ちゃん、裸足でこんなとこに入るなんて、怪我してないか心配だよ」


「明らかに様子がおかしいな。早めに見つけよう」


二人は足跡を追って走り、防御魔術で体を保護しながら茂みを掻き分けて奥へと進んだ。


昏が照れくさそうに隣にいる智也の方を見た。

「はぐれ無いように、手つなごう」


智也は頬を赤くしながら昏の手を掴んだ。

「.......そうだな。お前が迷子になったら、もしもの時にゲートで帰れないしな」


二人は暖かな温もりを手に感じた。



 長いこと奥へと進んでいくと、樹海の中に壊れた小屋があるのを発見した。

小屋はいくつかあったが、全て倒壊していて残骸だけが残っている。状態から見てかなり前に壊れているだろう。



小屋の近くには奇妙な文字の刻まれた墓標のようななものがいくつかあったが、花などは添えられておらず、放置されてから長い時間が経っているとわかった。



二人が足跡を追ってさらに奥へと進むと、そこには大樹で囲まれた小さな湖があり、昏はそのほとりに紗由理が座って遠くを見つめているのを見た。


姉を見つけた昏は大きな声を出して走り出し、手を振って駆け出した。

「お姉ちゃーん!」


しかし、紗由理は昏を振り向きもしない。


周囲の霧が濃くなり、昏は紗由理のすぐ近くまで行って声をかけたが反応は無い。


昏がボーッとしている紗由理の肩に触れかけた瞬間、突然、霧の中からもう一人の紗由理が姿を現して、座っていた紗由理を蹴り飛ばした。


その蹴りの威力は明らかに常人を逸脱しており、吹き飛ばされた方の紗由理は首が完全に折れていた。


「昏、あれに触っちゃだめ」


「え、お姉ちゃん!?」



すると、蹴り飛ばされた方の紗由理の体は蜃気楼のように消えて無くなり、そこには上から伸びる一本の白い光の糸が残っていた。


昏が糸の上をゆっくりと見上げると、そこには巨大な異形の手があり、その指先から糸が伸びていた。


そして、湖の方を見ると、先ほどまで綺麗だった水は泥沼のように濁って泡立ち、そして湖の大きさも数倍大きくなっていた。


その湖の中心には、全身に水草と泥を纏った異形の巨人の上半身だけが現れており、その巨人の顔の部分には目、口、鼻のようなくぼみがあって、そこから黒い粘液が絶えず垂れている。



「なに、あれ......」

昏は異形の怪物に体が震えて動かなくなった。


紗由理は昏の体を支えた。

「あれは湖に封印されていた魔物、封印が誰かに壊されていたみたい」



「て言うか、昏は一人で来たの? 智也くんとかは一緒じゃないの?」


昏は周囲を見渡したが、智也は見当たらなかった。

「あれ、さっきまで一緒だったのに......!」



「とりあえず、一旦身を隠すよ」

紗由理は昏を軽々と抱えて霧の奥に身を潜めた。





◇◇◆◆◆◇◇



一方、智也は突然消えた昏を探していた。


「おーい、昏! 返事しろ!」


樹海の中で迷子になるのは非常に危険だ。


「たく、手を離すんじゃねえよ」


智也は湖に近づくが、何も異常は無い。

少し辺りを見渡すと、湖の近くに壊れた石碑のようなものがあった。


直感のようなもので、石碑に近づいて見てみると、石碑には魔術陣が描かれていたことがわかった。


智也は以前見た、封印魔術の術式に似ていると感じた。


「確か、封印魔術は魔術陣が壊れると解除される......封印されていた何かが解放されているのか!?」



分断された三人の、湖の境界線上での戦いが始まった──


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