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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第五章 氷雨の夜に
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隠しごと

ゲートを通って墓山町に到着すると、そこは人気の無い樹海近くの場所だった。


大木が密集して繁茂するその樹海は鬱蒼としていて、人工林と違って光が下に届かないため暗い。


不気味な気配を漂わせる樹海の方に靴の足跡が一つ伸びていて、智也と昏はそれを追った。


しばらく足跡を追跡していたが、あるところで忽然と足跡が無くなり、ゲートを使用した跡も無いため、智也達は追跡が困難になった。



昏は不思議そうな顔をしていた。

「足跡が途絶えてる......どうやってこの先へ進んだんだろう?」


「飛行出来る魔術があるって、朝霧さんから聞いたことがあるから、もしかしたらそれを使ったのかも」


「お姉ちゃん、そんな魔術覚えたっけ......?」


「そう言えば、紗由理さんってどんな魔術が使えるんだ?」


「えーっと、私たち二条家は【変形魔術】って言う魔術を代々受け継いでいて、お姉ちゃんはそれを使えるよ。私も、魔術の術式自体はわかるけど、一族以外には秘密だから、智也には教えないよ」


昏には魔力が無いため魔術は使えないが、魔術言語や術式自体は理解している。危険な魔術の研究を彼女なりに手伝おうと努力した結果だろう。



「て言うか、この足跡、お姉ちゃんのより少し大きい気がする」


「......あっ、確かに......なら、この足跡は誰の......」


悪寒が走るが、特に何も起こることは無く、一度、公道に出てから聞き込みをすることにし、二人は足跡を逆に戻って行く。


そんな彼らの姿を見る深緑色の複眼があった──



◇◇◆◆◆◇◇



ゲートで来た位置まで戻った二人は話し合いをした。


「とりあえず、紗由理さんを見た人がいないか聞き込みをしよう」


「スマホにお姉ちゃんの写真もあるから使ってみよう。でも、聞き込みなんてうまく出来るかな......」


智也は自信のある顔をした。

「任せとけ、こう見えて探偵の助手だからな!」


「そう言えばそうだったね」




智也と昏は聞き込みをしていくと、住宅街の方へ紗由理が向かっているのを見たという目撃情報があった。


話によれば、裸足の紗由理がよろよろと歩いていたらしい。

二人は住宅街の方へと向かき、さらに聞き込みをすると、住宅街にある、とある児童養護施設の方へ向かったという話を聞いた。



早速二人は児童養護施設へ向かうことにした。


その道中、昏が話しかけてきた。

「ねえ、智也、お姉ちゃんが二条家に来る前の話を施設の人に聞いてみたいの、協力してくれる?」


昏は紗由理の様子が突然おかしくなった原因を探りたいようで、真剣な眼差しを智也に向けた。


「おう」



児童養護施設に着き、人を呼ぶと施設の人間が出て対応してくれた。


智也は朝霧探偵事務所の名刺を見せた。

「探偵業をしている者ですが、二条 紗由理さんの、児童養護施設に来る前の話を聞かせて貰えませんか?」


昏も自身の身分証を見せて、妹であることを伝えると、施設長がやって来て話を聞かせてもらえることになった。


施設長と智也たちは椅子に腰掛けた。


施設長は二人を少し訝しんだ目で見た。

「なぜ、紗由理さんの話を聞きたいんですか?」


昏は施設長の目を真っ直ぐ見で答えた。

「この近くで見つかった白骨遺体のニュースを見てから、お姉ちゃんの様子がおかしくなって、私の知らないお姉ちゃんの過去が、何か関係していると思うんです。だから、お姉ちゃんの悩みを分かち合えるように、知りたいんです」


「......そこまで言うなら、話すわ」



施設長の老いた女性は、紗由理の児童養護施設での話を二人に聞かせた。





十七年ほど前、一人の男が少女を連れて施設にやって来た。


体中に爪痕のある男は少女を引き渡すと、その場を去ってどこかへと消えた。



紗由理は施設に引き取られた当時、言葉を喋ることが出来ず、奇妙な言語に聞こえるようなものを話していた。


身体能力が異常で、五歳児の時点で大人並みの力があり、ネズミの死体を部屋に隠していたこともあった。


その当時の彼女は周囲から気味悪がられていて、施設長も内心では不気味がっていた。



数週間後、一人の大男が施設を訪ねて来た。

片目に爪のような引っ掻き傷のある男と紗由理が出会った翌日、突然紗由理の異常性が治った。


身体能力は平均的な五歳児と同じくらいになり、奇妙な行動をしなくなった。

しかしながら、なぜか肉が食べられなくなり、食べても吐き戻してしまうようになった。


それから一年が経った時、施設に昏の母である二条 白が訪れ、紗由理を見てすぐに引き取ると言った。


そして二条家の養子になり、今に至る──




施設長の話を聞き、二人は施設の外へ出て紗由理の足取りを再び追い始めた。


昏は浮かない顔で智也に話しかけた。


「......話を聞いて思い出したんだけど、小さい時に、私がジャングルジムから落ちたことがあって、それをお姉ちゃんが助けてくれたことがあるの。その時のお姉ちゃんの身体能力は、今思うと年齢にそぐわないくらいだった」


「それって、二条家に引き取られてからも異常な身体能力が残っていたってことだよな?」


「多分そう。もしかしたら身体強化の魔術を使っていたのかもだけど.......」


「でも確かに、紗由理さんの身体能力はアスリート並みを少し超えてるなって思う時はあるよな。ということは、"隠していた"ってことか」



昏は少し暗い顔をした。

「......お姉ちゃんには隠し事しないでって言ってるんだけどな............私のこと、信じきれてないのかな.......」


「..............お前のことが大切だから、怖いんだよ。もし、拒絶されたらって考えたら」



昏は少しムクっとした顔をした。

「.......もう、お姉ちゃんは、隠し事が多すぎる! 会ったら絶対に洗いざらい話してもらうんだから!」



「そうだな。僕も、聞きたいことがある」



そして再度聞き込みをした結果、紗由理は住宅街近くの樹海の入り口へ歩いていったことがわかり、二人は再び樹海の方へ向かった──




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