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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第1章 禁忌への入り口
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模擬戦

楽しんでいただけたら嬉しいです。

 朝霧の連れて来た見知らぬ少年は魔術連の者のようで、智也と手合わせをさせるために呼ばれたようだ。


「初めまして。俺は遠崎とおさき 純也じゅんやと言います。模擬戦よろしくお願いします智也さん」と少年は言った。


「は、はい。こちらこそよろしくお願いします!」



そして、少し準備したのちに模擬戦を始めることになった。


模擬戦のルールはシンプルで相手に『参った』と言わせるか、地面に引かれた線の外側に相手が出ると勝利となる。


(急に模擬戦......あの人強いのかな)智也はこの状況に緊張していた。


(あの朝霧さんに模擬戦を頼まれた以上は全力でやらなければ......それに彼の魔術の威力は驚異的。スピード勝負だな)と純也は考えた。



 そして模擬戦開始の合図がなされた。


先に仕掛けたのは純也の方で、彼は開始と同時に即座に魔術陣を展開し、そこから黒色の魔力のやりが放たれた。


その魔力の槍は智也の体に当たるが防御魔術によって負傷はしなかった。しかしその攻撃により智也の体は後方に押されて場外の線から残り二メートルほどまで近づいた。


 智也は「不可視の衝撃」を発動しようとするが、魔力の槍による攻撃が連続して飛んでくるため中々発動できず、どんどん後方に押し出され、ついに場外ギリギリまで来てしまった。


(まずい......!)


 そしてやっと魔術の発動準備が終わった智也は「不可視の衝撃」と唱え、魔術を発動させた。


先ほど学んだ力加減で魔力の塊を放つとそれは地面を少し削りつつ純也のところまで急接近した。


(なんて威力だ......!)

純也はそれをすんでのところで横に避けて回避した。


 智也は純也の攻撃が止まった一瞬の隙に空中に魔術陣を展開しながら純也の方に駆け出し、少し近づいたところからもう一度「不可視の衝撃」を放った。


 純也も「黒魔槍こくまそう」と唱え応戦し、智也と純也の二つの魔術が同時に放たれた。



純也の放った『黒魔槍』は「不可視の衝撃」を貫通して智也に命中し、智也は大きく飛ばされた。


しかし、貫通されてもなお大きな威力を維持した僕 智也の魔術は純也を一気に場外まで飛ばし、智也は場外ギリギリのところで何とか耐え、勝利した。


「勝負あり!」と朝霧が叫ぶ。


「勝った!」智也は小さくガッツポーズをした。



「いやー、すごい威力の魔術だったよ。これは俺の完敗だ」と純也は智也に近づいて来て言った。


「いやいや、僕の攻撃速度は純也さんと比べてかなり遅かったので技術だと断然純也さんの方が上です」と智也は言った。


「純也でいいぜ。ありがとう。良い模擬戦だった、またやろう!」


「こっちこそ、お願いするよ」


 智也たちは握手を交わした。自然と友好関係が生まれた気がした。



「そんで......」純也は突然朝霧の方を振り向き走り出した。



「朝霧さん、サインください!」と純也は色紙を持ちながら大きな声で言った。


「え、ああ、いいよ」朝霧は戸惑いつつも嬉しそうな顔でサッとサインを書いた。


「ありがとうございます! 家宝にします!」純也は感謝を述べた。



「朝霧さんってそんなに有名だったんですか!」智也は言った。


「まあね!」朝霧は言った。



「当たり前だ。魔術連の魔術師で朝霧さんのことを知らないやつはいない。なんたって朝霧さんは強力な魔物や魔術師を幾度いくども打ち倒して来た最強の魔術師なんだからな!」と純也が話してくれた。


(そんなにすごい人だったんだ......)と智也は内心思った。


 朝霧は少し照れくさそうな顔をしていたがまんざらでも無いと言った顔だった。


「さあ、今日のところは帰るよ智也くん」と朝霧が言った。


「はい! じゃあまた会おう純也!」


「おう! またな智也!」


 二人が後に再会し、偉業を果たすことを今の彼らは知らない──



 次の日、智也は再び朝霧探偵事務所を訪れた。昨日の帰りに「明日も朝に来てくれ」と言われていたからだ。


事務所に着くと、朝霧はしっかりと起きていて「おはよう」と挨拶をしてくれた。


それから智也も挨拶をして椅子に座ると朝霧さんが話を始めた。


「今日は智也くんの他に人を呼んでいてね、その人は私の魔術の弟子だからまあ智也くんの姉弟子になる人だよ」と朝霧が言った。


「女性の方なんですね。朝霧さんの弟子って何人くらいいるんですか?」智也は尋ねた。


「智也くん含めて五人だね。もしかしたら今後会うかも......」とそんな話をしていた時、玄関のチャイムが鳴った。


 智也は椅子から立ち上がり、玄関の扉を開けると目の前には一人の女性が立っていた。


その女性は二十歳くらいの日本人の見た目で、髪は金色に染めているが瞳の色は黒だった。


「あ、君が朝霧さんの弟子になった人っすか! 初めまして私は【綿嶺めんみね さき】朝霧さんの弟子っす!」



「貴方が朝霧さんの言っていた人ですか! 僕は彩島 智也と言います。どうぞ中へ」


 咲が事務所に入ると朝霧が起きているのを見て驚いていた。


「あの朝霧さんが起きているなんて......明日はヤリイカでも降るんすか......?」と咲は言った。


「それ、昨日も聞いたんだけど......なんか微妙に違うな」と朝霧は思った。




「まあいいや、軽く自己紹介とかは済んでいるみたいだし、早速本題に入ろう」と朝霧が言った。



すると朝霧さんはズボンのポケットからっているビニール服を取り出した。


「この灰は豊峰が屋敷から盗んだという魔導書の燃えカスだよ」


「ああ、確か蛇骨教の拠点で見つけた『神の眼』という魔導書の......一体何に使うんですか?」智也は尋ねた。


「この魔導書はとても危険だからこれを出回らせている元凶を探したくてね、そのために今日は咲を呼んだんだ」と朝霧は答えた。


 綿嶺 咲はモノ探しや"モノの過去の在りか"などを探る『探知魔術「たんちまじゅつ》』のエキスパートで、その精度は朝霧以上である。


「いやいや、確かにその灰から元凶を探れる可能性はありますけど、六年以上も前を探知するとなると魔力量が全然足りませんよ!」と咲が言った。


「そこは心配ない。智也くんがいるからね」朝霧がチラリと智也の方を見て言った。


(なんだか嫌な予感がする......)智也はそう思った。


 それから、咲は机の上に大きめの地図を置き、魔導書の灰をひとつまみほど地図の上に乗せて魔術を発動した。


そして咲と朝霧が、朝霧と智也が手を繋ぎ、机の周りを囲うように並び、朝霧が魔術を使って智也から魔力を吸い、咲に送り始めた。


 段々と力が抜けていく感じがして脱力感があったがそこは我慢してしばらくそれを続けた。


 探知魔術は慎重に行う必要があるのでかなり時間が掛かったが、屋敷にあったという六年前以前の魔導書の所在地はわからなかった。


 六年前にその魔導書はある屋敷から盗まれたと言う話なので、おそらくは特定した場所はその盗み出された屋敷の場所なのだろう。屋敷に魔導書が渡る以前がわからないとは言え大きな手がかりを掴んだと言える。


 しかし、智也はかなりの魔力を消耗し、疲労が大きかったため休むことになった。


そして朝霧は奥の部屋に入ったため、この部屋は智也と咲の二人になった。



「大丈夫っすか、智也くん。相当魔力消費しましたよね?」と咲が僕に声をかけた。


「正直かなり疲れました。魔力が半分以上無くなったのは初めてで、こんなに疲れるんですね」


「凄いっすね。あれだけの魔力を一人だけで補うなんて......」


「僕もびっくりです......」



しばらくの沈黙の後に咲が言った。

「ともやんはどうして魔術師になったんすか?」


「と、ともやん!?」


「なんかフレーズ的に......ともやんって呼んでいいっすか?」


「いい、ですけど......ああ、魔術師になった理由でしたね......大切な人を守りたいって感じですね......ちょっと恥ずかしいですけど」


「恥じる必要はないっすよ。大切な人を守りたいってのは良いことっす」


 智也はほおを赤く染めた。 


「ちなみに、咲さんはどうして魔術師になったんですか?」と智也は尋ねた。



「そうっすね、経緯は色々とあったっすけど.......一番はあこがれっすかね」


「憧れ......」


 咲は昔のことを話した。


 咲の父親は魔術連の魔術師だったが、咲が十四歳の時にある魔術師との戦闘の末に亡くなってしまった。


しかし咲の父は家族に魔術師のことを黙っており、当時は事故死と聞かされていた。ただ不可解な点が多く、本当に事故死なのかと疑問に思った咲は、一人で父親の死について調べ始めた。


そして父親を殺した魔術師に辿り着き、直接会いに行ったのだが、相手は魔術師のため危うく殺されかけてしまった。


そこに偶然居合わせた朝霧がその魔術師を返り討ちにした。目の前でそれを見た咲は朝霧さんに憧れ弟子に志願したのだと言う。



「......何だかすごいですね......アクティブというか、行動力がすごいと言うか......」


「考えたらまずは行動している派っすからね。この金髪も朝霧さんを真似まねてみたんっすよ!」と咲は言った。


「......確かに朝霧さんはカッコいいですからね」


「そうっすよね! まあ、私生活はあれっすけど......」


「ははは、そうですね......部屋を散らかすのはやめてほしいです」



 その会話をこっそり聞いていた朝霧は少しショックを受けるのだった──



 しばらくして疲労が回復した智也たちは屋敷のあるであろう場所に向かうことにした。



 目的の屋敷がある場所を調べてみると、どうやら智也の住んでいる深無町しんむちょうにあるようで、しかも地図を見てみると智也の家のすぐ近くだった。


その時に気がついた。


「ここって、"昏の家"......」智也は思わずそう呟いた。


 それを聞いた朝霧が「知り合いの家?」と尋ねた。


智也は「はい」と答えた後に、思考を巡らして理由を考えた。するとこの前の昏の話を思い出した。


『私の家は魔術の研究をしている』という昏の言葉だ。


(そうだ、昏の家は魔術の研究をしている......それならあの魔導書を持っていてもおかしく無い!)



「何か気づいたようだね」と朝霧が智也に言った。


 言っても良いのか少し迷ったが、同じ魔術師ならば話しても良いと思い僕は話すことにした。

「......僕の友達の家なんです。この前魔術の研究をしていると話を聞いたので、魔導書を持っていたとしてもおかしくは無いかも......」



「なるほど。それならなおさら話を聞いておきたい」と朝霧は言った。


「待ってください。その人達とは知り合いなので僕が話を......」


「いや、私も行く。すまないがこれは譲れない。あの魔導書の影響を受けているなら話を聞いておきたいしね」


 朝霧がとても真剣な顔をして言うので智也は朝霧達と昏の家に行くことにした。


 朝霧はゲートを開き、三人はそのゲートを潜って深無町へと向かった──


読んでいただきありがとうございます。

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