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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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使徒の目

[深淵教団 本拠地]


 巨大な赤い目のシンボルが天井で輝く暗い部屋。六人の男女が円卓に座っている。


その部屋の中に黒い闇が現れ、人の形をとった。その抽象的な人型の闇が言葉を発した。

「使徒の目の諸君、よく集めってくれた......まず話さなければいけないことがある。【魔の目(イビルアイ)】グリフィン・ヒューラーが前兆によって殺された」


「......」



「えーーーーーー! あのしぶとくて生き汚いあのグリフィンがやられたの!」と一人の小さな少年が驚いた。


「うるさいぞ【四色の目(フォースアイ)】、この程度で動揺するな。と言うか、事前に知らせは受けていただろう」

金髪に緋色の目をした女が少年に言った。女は【炎の目(フレイムアイ)】ミスティファ=ドームだ。


「え? そうだっけ? よく聞いてなかったよ。ははは」と"四色の目(フォースアイ)"と呼ばれた少年が言った。


「逆に、君はどうして驚いていないんだ? 実の兄弟だろう?」時計の針のような模様の刻まれた仮面をつけた男が言った。


仮面をつけた男の向く方向には暗く淀んだ青色の目をした灰色の髪の男がいた。顔立ちはグリフィンと似ており、肌は青白い。


「驚く価値もない。あれには力も才も無いから当然のことだ」


その男はグリフィンの兄【ゾルデイラ・ヒューラー】男は興味が無いような、冷淡な口調でそう語った。


「冷めてますねー。それも全て、貴方に余裕が無いからです。貴方も私のように完全で完璧な存在になれば、感情が自然に溢れ出てくるはずですよ。私はグリフィン殿の訃報を聞いた時は自然と目から涙がこぼれ落ちてしまいました。貴方は家族なのですから、彼のことをもっと思ってやることが必要なのではないでしょうか?」と仮面の男が言った。


ゾルデイラはつまらそうな表情で言った。

「......俺はあの愚弟とはどうにも相容れなかったが、一つだけ共通している部分がある.......それは完全で完璧な存在など理想でしか無い。そんな存在がいるとしたら、それは人では無く、"神"だ。お前はただの人間。完璧を語るな」


「ふふふ、私は完璧な人間......この程度で気分を害したりはしません。ですが、それ以上言うなら、命の保障は無いですよ」仮面の男は殺気を向けて言った。


「俺を殺せるとでも......?」ゾルデイラが静かに睨んだ。



 一触即発のその時、両者は突然地に伏せた。

まるで何か大きな力によって地面に引きられているような感覚だった。


「いい加減にしろ。今は仲間内で争っている時では無い」と闇の魔眼が気味の悪い低い声を発した。


地面に引き摺り込まれるような大きな力が無くなり、二人は立ち上がった。


「ふふ、魔眼様がおっしゃるなら仕方がありませんね」と仮面の男が言った。


「......」ゾルデイラは無言だった。




「もういいな。これから、"魔術連襲撃"についての作戦内容を伝える。頭に入れておけ」闇の魔眼は話し始めた。



 

 深淵の神からの神託により、深淵教団は四ヶ月後にロンドンで大規模な魔術テロを起こす。その前に障害となるであろう魔術連にダメージを与えておくための作戦会議だ。


決行日は二週間後の8月21日。

魔術連幹部及び、音の神リディアロスとの契約者を暗殺。その後魔術連構成員を出来る限り殺し尽くすという計画であり、彼らは綿密な作戦内容を話し合った。





闇の魔眼が言った。

「よし、この話はこれで終わりだ......ところで、ゾルデイラ、魔人復活の件はお前に一任しているが、進捗はどうなっている? 確かゴブリンの魔人はやられたのだろう?」



「それなら問題無い。魔人復活のメドはついている」とゾルデイラ・ヒューラーが答えた。


「ほお、亜人たちの確保が出来たのか?」


「グリフィンの案では亜人が大量に必要なようだったが、俺の案は違う。一人、亜人の血族を確保できれば魔人は復活できる」ゾルデイラは言った。


「目処が立っているならば良い。詳しいことは今度聞く。これにて、会議を終了とする」闇の魔眼は深淵教団のシンボル"赤い目"を取り出し、掲げた。




「世界を混沌に染め、我らが神の祝福を......!」


円卓に座る者たちもそれを復唱した。




「諸君、くれぐれも殺されるなよ。青い狼もまだやられてはいない。戦力はこれ以上減らせないからな」闇の魔眼はそう言うとゲートキーを使ってこの部屋を出て去った──




「ねえねえ、闇の魔眼って人間なの? 黒い霧みたいな姿してるし、実は人じゃ無いんじゃ無いの?」と四色の目が不思議そうに言った。


「さあな、あいつに関しては何もわからない。素顔だって一度も見たことがない」とゾルデイラが言った。


「私はいずれ魔眼の座に就こうと思っていまして、闇の魔眼についても調べているのですが、何一つわかりません。完全に自身の素性を隠し切るなんて、何か裏があるのでしょうね」と仮面の男が言った。


「へー、そうなんだ。それで、魔眼様って強いの?」と四色の目が尋ねる。


「あれは、相当な化け物だ。魔力量もフィジカルの強さもわからないが、少なくとも得体の知れない力を隠し持っているのは確かだ」とゾルデイラが言った。


「ははは、『使徒の目』最強であるこの私でも、"未知の相手"にはなかなか挑めません。迂闊うかつに仕掛ければ返り討ちに遭いますからね」と仮面の男が笑った。


「そんなに強いんだ......いつか、殺し合いをしてみたいな!」と四色の目が無邪気に笑った。



「......私は、この中だと二番目に貴方が怖いですよ」と仮面の男が呆れたように言った──




◇◇◆◆◇◇



[魔術連 本部]


 人型の闇が堂々と道を歩いている。魔術連の者たちはその横を通り過ぎるが、全くその異常な存在に気づいていない。


通行人たちは談笑を続けながら通り過ぎていく。



一人の男が他の者と同様にその横を通り過ぎた。しかし、男は突然足を止めて振り返った。


当然、そこには誰もいない。気のせいだったのだ。男は再び歩き始める。




確かに、男が振り返った時に人型の闇はそこにいた。しかし、いなかった。闇に紛れるそれを誰も認識など出来ない。


人型の闇はそのままゆっくりと歩き、一つの部屋の中へと入った。そこには一人の女がいた。


血のように赤い髪に赫い瞳を持つ魔女。

かつて朝霧が殺した深淵の魔女と同じ外見をしている。


人型の闇はひざまづいた。

「お久しぶりです。教祖様」


「そうかしこまらないでくれ。僕は君に頼みたいことがあって来ただけだから」と魔女はニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。


「頼みたいこととは、何でしょうか?」闇の魔眼が尋ねた。


「......君に、朝霧 黎......いや、ミスティファ=シャールを殺してもらいたいんだ。もし成功できれば......深淵の神(我らが神)は"君の願い"を叶えてくださるとおっしゃっている」魔女は言った。


闇の魔眼はしばらくの沈黙の後、答えた。

「............承知致しました。必ずや、期待に応えてみせます」


 魔女はニヤリと不気味な笑みを浮かべた──


第四章は次回で終わりです。

次回は明日の22:00に投稿予定です。

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