表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
78/88

蒼天の夜空、果ての奈落

 右半身が眷属化した智也と悍ましい怪物と化したグリフィン、体躯たいくの巨大さならばグリフィンの方が遥かに大きいが、溢れ出る魔力の大きさは遥かに智也の方が大きい。


赤と白の二体の魔物は智也の放った魔術によって体の半分を抉られ、瀕死の状態だった。


グリフィンは瀕死の二体の魔物を巨椀で掴むとそのまま口の中に放り込み、喰らった。



その途端、グリフィンの手のひらに変化が現れた。右手には赤い魔力のオーラが放たれ、左手には花弁のような形の突起が現れた。


「魔物の肉体を取り込み、体の一部としました。貴方がそれほどの力を得てしまったのは誤算でしたが、私はまだ、勝機を失った訳ではありません!」


グリフィンはそう言うと智也に向かって俊敏な動きで急接近し、巨椀を振り下ろす。

智也はそれを避けず、右手だけでそれを防いだ。


(なんだ、この感触は......まるで不動の剛体を殴りつけているような)グリフィンは驚愕していた。岩をも容易く砕く男の一撃を、智也は片手で受け止めてしまったからだ。


「もう、終わりか?」智也はグリフィンを睨んだ。


その目を見たグリフィンは全身に悪寒が走り、無意識に後退した。


(私が、恐れたのか? そんなことあるはず無い。私は既に魔物だ、恐怖心など無い!)グリフィンは再び智也に接近し、右手から溢れ出す赤い魔力の斬撃を放つ.......その直前。



「流刃」


智也はそれを先読みしているかのようにグリフィンよりも早く、先に魔術を放った。


蒼い魔力の斬撃が"空間を断つ"。

それによってグリフィンの右腕が吹き飛び、吹き飛びされた腕が宙を舞った。


「馬鹿な......!」グリフィンは焦りを露呈させるような声を出す。


 グリフィンは右腕を失った直後、左手を智也に向け、手のひらから白い魔力の光線を放った。


「不可視の衝撃」


智也の放った蒼い魔力の塊が光線を呑み込み、男の左腕を抉り取った。


(やっぱりだ。僕の通常魔術が『蒼星の雫』のように蒼い魔力を用いた魔術と同等の効果を発揮している)


智也は体の半分が眷属化したことにより、次元の神の力を普段よりも大きく引き出している。故に通常の魔術にも次元の力が宿っている。


しかしながら、眷属化状態で放つ『不可視の衝撃』よりも通常状態の『蒼星の雫』の方が威力は高い。



 智也は溢れ出る魔力をどうにか制御し、グリフィンとの戦闘を続ける。




(魔物化も眷属化も、その人物の魔力量が多いほど強大な力を得る.......前兆という魔力の塊が眷属化すれば、これほどの力を得ると言うのか......!?)


グリフィンは両腕を再生させ、智也を中心として、彼の周囲を円状に回転し始めた。


(......何か仕掛けようとしている?)智也は目で男の動きを追っていた。


その時、声がした。

「前兆!」


 グリフィンは突然叫んだ。

「貴方の力は凄まじい。ですが、私の力には敵わない!」


グリフィンは回転を止め、そのまま正面から智也に突撃した。


少し先の未来が見えている智也の右目にも、突進するグリフィンの姿が鮮明に見えている。


智也はグリフィンに向かって『不可視の衝撃』を出力を上げて放った。


正面から突っ込んでくるグリフィンの体は、いとも容易く木っ端微塵になり、消滅した。


智也はいぶかしんだ。

(.......おかしい。回避もしないなんて、これは......)


その瞬間、智也の右目が視界の端に映るグリフィンの姿を見た。


その直後、背後から強烈な一撃が智也に叩き込まれた。

赤い魔力と白い魔力、加えて強化魔術や『不可視の衝撃』などの魔術をいくつも重ね合わせた男の渾身の一撃が智也に放たれたのだ。


智也が咄嗟に振り返ると、そこには先程倒したはずのグリフィンがいた。


智也は男の一撃により数メートルほど吹き飛ばされ、地面に着地。揺らついた様子で立ち上がった。



「くははは、どうですか? "幻魔ピプシード"を使った不意を突く一撃、貴方にもダメージを与えられましたね!」グリフィンは嬉しそうに叫んだ。


「確かに、これはこたえたよ」智也がそう言うと、グリフィンはさらにニヤリと笑った。



「でも......」

智也は右腕で自身の体に触れた。

智也は頭では知らなくても、体で力の使い方がわかっているのだ。



瞬間遡行リバース

智也がそう言うと、突然、彼の体にあった傷が消えていった。


グリフィンが負わせた傷は【常態化】によって治らないと言うのに、智也は容易くその傷を消してしまった。



「は? どう言うことです、魔術でも無く、私の負わせた傷を癒した!? なぜ、なぜそんなことが!」グリフィンは叫んだ。


「うるさい。お前だって再生してるだろう!」智也も叫んだ。



「ああ、ああ! これでは、美の追求どころか、神託すらも果たせない! なぜ、これほどまでに世界は無情なのか!」グリフィンは叫んだ。


「世界が無情だと言うなら、まずは自分の行いをかえりみろ」智也は言った。


「くそ、私は、こんな場所で死んで良い存在では無い! 私は至高の美の追求者、辿り着くまで死ねないのですよ!」




 グリフィンは"最後の切り札"を使うことに決めた。


「これだけは使いたくありませんでしたが、致し方ない。使いましょう。これが私の、最後の切り札です!」



 グリフィンは巨大な赤い目の模様のついた魔術陣を構築し、悍ましい旋律のような呪文を唱えた。


虚構世界門ハーデース・ゲート


グリフィンが唱えた終えた瞬間、魔術陣の目の模様が開き、そこから黒色のヘドロのような影の球体が現れ、膨張していった。


その球体の内部には人間や動物の骸が無数に見え、内側から外側に這い出そうともがいている様に見えた。


 それを発動させたグリフィンは明らかに消耗している様子で、荒い息を吐き、黒い体液がより吹き出している。


「この魔術こそ、私の切り札。深淵教団の幹部のみが知る古代魔術です。この魔術によって先程私が取り込んだ二百三十七の魔物の魂を集結させ、これを解き放ち、この一体にいる生命を根こそぎ奪い取ります。貴方はまだ半分人間です。故に、一撃で殺せばいいのです!」

グリフィンは狂った様に叫んだ。



「そんなこと、させるかよ」

智也は魔術を放とうとした。


「無駄ですよ。少しでもこの球体に貴方の攻撃が当たれば、即座に暴発しして一体の生命が死に絶えますよ」


そう言っている間にも球体は大きくなっていく。いずれこれが風船のように破裂し、中から亡者達の魂が生あるものの命を奪い取ろうと溢れるのだろう。



(どうする、グリフィンには生半可な攻撃は効かないから強力な範囲攻撃が必要だけど、そうするとあの球体が暴発してしまう......)智也は考えた。


 黒い球体はさらに膨張していく。


(そうだ!)


智也は上空へと飛んだ。


「ははは! まさか逃げる気ですか?」グリフィンが嘲る様に言った。


「そんな訳、無いだろ!」


智也は上空で浮遊した。

眷属化の影響により飛行が可能になっているのだ。



 一面の夜空、そこには星々が輝いている。智也は空に向けて右腕を掲げた。


そして、彼から放たれる蒼い輝きを放つ魔力が空一面に広がった。


夜空を覆うように放出された蒼の魔力は、黒い夜空を蒼空へと染め上げた。



(空を覆うほどの魔力......! 異常だ! 人間の持って良い力では無い)グリフィンはその光景に驚愕し、釘付けになっていた。


突如として、蒼天にグリフィンよりも遥かに巨大な魔術陣が現れた。


(生半可な一撃じゃダメなら、あの球体ごと、全てを一撃で消し去る!)智也は魔術陣を構築した。



 彼の構築した魔術陣は『蒼星の雫』、しかしながら眷属化状態の今、その威力は計り知れない。その調整のため、彼は空中に魔力を放出することで強引に出力調整を行った。


魔術陣の内側に黒い空洞が開き、その空洞はまるで宇宙を映す窓のようだった。




「グリフィン・ヒューラー、お前の弄んだ人々の報いを受けろ」


「報いなど受けません。私の美の追求は何人たりとも邪魔をすることは許されないのですから!」グリフィンは黒い球体から亡者達の魂を解放しようとした。


「お前が、もっと他人と価値観を共有できていたら、こうはならなかったのかもな」


グリフィンが魔術を解き放つ、その寸前で智也は唱えた。



「蒼星の雫」



その瞬間、蒼空に開いていた巨大な黒い空洞から蒼い稲妻のような、光の柱のような光線がグリフィンに向かって放たれた。


その光景は、まるで神の裁きを受ける咎人の姿を映したようだった。


黒い球体は蒼い光線によって一瞬にして消滅し、グリフィンの視界には蒼い輝きしか映らなくなった。


完全消滅までの一瞬、グリフィンは周囲がスローモーションのように遅く感じられた。しかし、体はこの光線を避けられるほど速く動かない。


(ああ、私は、ここで死ぬのか......? この、私が?)グリフィンの腕が光線によって削られる。


(まだだ、私は至高の美に......深淵に辿り着けていない! 嫌だ、こんなところでは死ねない!)グリフィンの肉体が徐々に削れていく。


グリフィンは必死にもがく。皮肉にも、そのもがく姿は男が魔物化させた人々の姿と重なった。


(私は、私は、探求し続け..........ああ、そうか)グリフィンはついに何かを悟ってしまった。

男の肉体は大半が削れた。


(至高の美など、最初から無かったんだ。いくら求めても、その果てにあるのは空虚くうきょ。私の求めたものは不完全だった......)グリフィンの肉体が崩れていく。


死の間際、男は過去の記憶がフラッシュバックした。今まで殺してきた人間、父や母、赤の他人。そして命を弄んできた人間達の自分を憎むような目、美の探究に盲信した男は、最期の最期になって、気づいた。


(私の美の追求は、万人にとっての悪だった)


男は狂っていた。しかし、同時に弱い人間だった。自身を正当化しなければ自身の狂った美の探求を続けられなかった。



男はただ、自身の美しいと思うものを探求し続けた。それが生む犠牲や悲しみを無視して。


その結果、男が最期に辿り着いた先には......"何も無かった"。



グリフィンの肉体は蒼い輝きによって完全に消滅し、跡には何も残らない。偉大な芸術家達は後世の者たちに小さくとも、大きくとも、何かを残していくだろう。しかし、男の探求した至高の美は、何かを残すことは無かった──


ついにグリフィン戦の決着まで書けました(思ったより長かった)。元々は四章のストーリーにグリフィンなんていなかったですが、思いつきで書いたキャラでこんなに長くなるとは...四章はあと少しで終わりになるので、もう少しお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ