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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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地獄の果てにあるものは2

 智也の放った超圧縮魔力の斬撃は、彼の魔力に存在する次元の神の僅かな力を引き出し、その周囲の次元ごと魔女の体を斬り裂いた。


あなどっていましたよ、前兆。貴方は予想よりも強かった。流石は、私の選んだ人間だ」魔女は一言呟くと、笑みを浮かべてどこかへと消えた。


(逃げられた? でも、あの傷なら確実に致命傷だ)


智也は再びグリフィンと一対一で対峙する。


「魔女さんが負けるとは......とは言え、これで場がスッキリしましたね」グリフィンは言った。


「ああ、お前との戦いに集中できる」


現在、智也の魔力量は万全時の半分。

既に短剣による記憶の複写も達成している。両者の目的が終わったいま、ここから、彼らの本気の殺し合いが始まる。


二者は同時に動き出す。智也はグリフィンに向かって『不可視の衝撃』を放ち、巨大な風穴を開ける。


グリフィンは周囲の魔物を操り智也にけしかけ、自身も無数の触手を伸ばして攻撃する。


魔物達が智也に襲いかかり、彼は空中へ跳んで逃げる。空中にいる智也に向かって無数の槍のような触手が伸び、智也は『流盾』で防ぐ。



 その時、智也の体に見えない何かが巻きついた。

(これは透明な触手、グリフィンから生えているのか......!)


グリフィンと初めて会ったあの日に襲って来た透明な触手の化け物、あれはグリフィンの体の一部を切り離したものである。


グリフィンの触手には三種類あり、背中から生える先端に手がついた腕型の触手、足から生える赤黒い根のよう触手、そして不可視の根のような触手である。


触手は切り離し可能で、独立して動かせる。また、グリフィンの持つ魔力特性【常態化じょうたいか】により、男が負わせた傷は治らなくなる。



(グリフィンの一番厄介な性質は、あの異常な再生力だ。腹に風穴を開けても、頭を吹き飛ばしても奴は死なない。なら......)


智也は空中へ跳び上がり『蒼星の雫』を放つ。


「一撃で殺しきる!」


 超圧縮の蒼い魔力が放たれ、蒼い雫がグリフィンに接近する。


(ここで大規模破壊魔術ですか!)

グリフィンは無数の触手に魔力を纏わせ、防御魔術を発動した。


蒼い魔力はその防壁をいとも容易く貫通し、グリフィンの体に衝突して爆ぜた。蒼い魔力が溢れ出し、男の肉体は激しい熱と衝撃で木っ端微塵になった。



「......」智也は黙ってグリフィンがいた場所を見た。そこには黒焦げた肉片のみが残っていた。



しかし、まだ終わってはいなかった。


グリフィンの消えた位置に浮遊する赤黒い触手の塊、その塊の中心には灰色の眼球がある。

そこから無数の触手が伸び、地上にいる魔物達を掴み、自身へ引きずりこんだ。



智也はそれを阻止しようとしたが、その時四つ腕の人型の魔物が襲いかかり邪魔をした。その魔物は先ほどの魔物達よりも異常なほど強く、すぐに倒すことは出来なかった。


 触手の塊は魔物達を吸収して肥大化していき、やがて巨大な赤黒いまゆが出来た。


四つ腕の魔物は智也に攻撃の隙を与えず連撃を叩き込む。智也は魔物の連撃の隙に腹に蒼い魔力を纏わせた鋭い拳を放ち、仰け反らせ『流刃』で首を斬り落とした。


 智也は急いで繭を破壊しに走った。しかし、僅かに遅かった。


繭が内側から破れ、赤黒い外殻を持つ醜悪な怪物が現れた。


怪物は六メートルほどの巨大な姿で、二本の巨椀に蛇のような体、頭部には灰色の単眼があり、顔の輪郭が裂けて牙のある口をのぞかせている。


腹からは肋骨ろっこつが露出し、背中からは棘のような骨が突き出ている。

体からは絶えず黒い体液が漏れ出し、外殻の内側はブヨブヨとしたゴムのような皮膚をしている。


怪物が智也に話しかけた。

「先ほどの一撃、私を消し去るには十分な威力でした。しかし、あと一歩足りなかったですね」


その声はまさしくグリフィン・ヒューラーのものであった。


「これはまた、やばい姿になったな」


「ええ、魔物達の血肉で何とか体を作りました。この姿もまた、素晴らしいですね」とグリフィンは上機嫌に言った。


 先ほどの一撃で智也の残り魔力は四分の一、次『蒼星の雫』を撃てば後は無い。


「やはり、歪であるからこそ魔物とは美しい! 素晴らしい!」グリフィンは叫んだ。


「なら、歪んだ壺でも買って愛でてろよ」智也は言った。


「......貴方は、わかっていませんね。ただ歪んでいるから、ただ不完全であるから美しいのではありません。その中にどれだけ人の意思を、願いを感じるかが美しさの基準です。歪んでいるのは単に未熟だから、心に雑念があったから、それは美しくない!」グリフィンは叫んだ。


「......お前は、ただ醜いものを美しいと言っているわけではいんだな......だとしても、人の命を弄んでまで美しさを追求するのは間違っている」


「間違いや悪、そんなものは至高の美の前にはただの足枷あしかせにすぎません! 美こそが正義、邪魔ならば悪。ただそれだけです」グリフィンは言った。


智也は冷静な様子で言った。

「............正義や悪は、時代によって、人によって変わる。生きている環境が違えば価値観も違う。でも、どんな時代にも、共通した善はある。助け、分かち合い、お互いを敬う。考え方が違っても、みんな共通して善を知っているはずだ。お前も、知っているはずだ。みんな一人では生きられないから、どこかで誰かの善と繋がっているはずだ。けど、お前はそれを放棄して自分勝手に生きている。その報いを、今ここで受けさせる」


智也の冷徹な瞳がグリフィンを睨んだ。



 グリフィンの築いてきた生ける亡者達の山、地獄の如きその所業の先には何があるのか──



本編とは関係ない設定

・四つ腕の魔物

グリフィンが自身の変態メタモルフォーゼ中に、智也が攻撃するのを防ぐよう命令した魔物。

魔物になる前は人間の格闘家でそこそこ有名だった人物。怪我を機に引退していたが、十年前にグリフィンにより誘拐され、監禁されてしまった。同じく誘拐された人々を逃すためにグリフィンと戦ったが、両腕を折られてやられてしまい、その後魔物にさせられてしまった。

実は赤子のように小さな手が背中から生えているため六本腕だが、四本にしか見えない。



おそらく今週か来週で四章が終わります。

四章完結後、一年程度更新を止めると思いますが、失踪ではありません。皆さんに見ていただいているお陰でモチベーションが保てているので、一年後にもまた見ていただけると嬉しいです。



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