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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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呪いの鎖

 魂と魔力、それは深く関わり合っている。


魂とは肉体と精神によって形作られる"意識"や"人格"そのものであり、言い換えればその者の【世界】と言える。


なぜならば、意識というものは、思考存在が外界を認識するために、知覚したものを自身の尺度で捉え、変換したものであるため、自分が見ている外界というのは、自分が外界を変換して作った己の世界であるからだ。


例えば同じモノを見ても人によって捉え方に違いがあり、物事の考え方も人それぞれ違う。

人間は誰しも己のセカイを持ち、認識し、思考している。



 そして、魔力は大まかに言えば"精神エネルギー"であり、魂は魔力を生み出すエネルギー源だ。


肉体と精神である魂から生成されるからこそ、魔力特性や適正魔術は親から子に"遺伝"し、精神状態によって魔力の"出力"が変わる。


月の神での一件で智也が『蒼星の雫』を放てたのも、生死の境界で感情のたかぶりが最高潮に達していたからだ。




 魔力は様々な特性や性質を持つが、その中で最も特異な性質は【願いを叶える力】である。


例えば魔術のように、術式を用いて魔力の願いを叶える力を引き出し、特定の事象を起こすものがその力の使用例だ。


 しかし、どんな願いも叶えられる訳でない。


それは、人間の魔力には限界があるからだ。


理を逸脱した願い、例えば神を完全に滅ぼすということや、現実を改変するような願いは叶えられない。


とは言え、相当量の魔力があれば神を招来させることは可能であるため、莫大な量の魔力と儀式魔術を用いればほとんどの願いを実現できる。


◇◇◆◆◇◇


 グリフィン・ヒューラーが観たいものは後天的に魔物化した際におこる"魂の解放"、言い換えれば願いを叶える力の暴走である。


魔物化する間際、最も強く願ったことを魔力は叶えようとする。しかし、どんな人間もその願いを完全に叶えることは不可能だ。


その結果、肉体が変質し、不完全で歪な肉体を持つ魔物が誕生する。


 グリフィンという男はこの不完全な姿に"美しさ"を感じ、それを狂ったように求めている。


ただ孤高に、孤独に、醜悪に──




 智也とグリフィンの対決、智也の目的は短剣を刺し、深淵教団の情報を得た後にグリフィンを殺すこと。


グリフィンの目的は智也を魔物にすること、そのために智也の魂の中にある"神の力"を除去しなければならない。


 互いに今はまだ殺す時では無い。ただ、どちらかの目的が達成された時、すぐにでも決着がつくだろう。



 グリフィンの右腕が触手に変わり、男はその右腕を鞭のように振るい、部屋全体を薙ぎ払った。


智也は頭上に跳んでそれを避け、魔力で空中を蹴りグリフィンに向かって急接近した。


接近する智也に応戦するため、グリフィンは背中から手の形をるした長い触手を十本伸ばした。十本の赤黒い外殻を持つ腕が迫り、容易に頭蓋骨を握りつぶせるほどの脅威的な握力で智也の体を掴んだ。


それは防御魔術に阻まれたものの、もし生身であれば今頃肉塊になっているだろう。



空風そらかぜ

智也は唱え、瞬間移動しグリフィンの背後に回った。そして背後から生えている腕の触手を『流刃』で切り落とし、その直後に首元に短剣を突き刺した。


(やはり、前兆と言うのは侮れないですね。この短期間で高等魔術を覚え、近接格闘が数段上達している......)


 グリフィンは首を百八十度回転させた後、背中の触手を瞬時に再生させ智也の体を掴もうとしたが、智也はすぐさま反応して男から短剣を抜き後退した。


しかし、腕型の触手は止まらず後退する智也を追尾する。


バックステップをしつつ、智也は『不可視の衝撃』の術式を三つ展開し、一瞬立ち止まってからグリフィンに向けて三連撃を放った。


一撃目と二撃目は腕型の触手によって相殺されたが、放たれた三撃目はグリフィンの腹を貫通し風穴を開けた。


智也は三撃目の『不可視の衝撃』と共に走っており、グリフィンの腹に風穴が開くのと同時に男に接近し短剣を突き刺す。


ファングから教わった短剣による格闘術が着実にグリフィンを追い詰めている。




グリフィンは何度も突き刺さされたと言うのに、なぜかニヤ笑いする。そして体を回して智也と正面に向かい合うと、左腕を鉤爪の形に変形させて魔力を纏わせた拳を振り下ろした。


智也は刺した短剣を抜き、鉤爪の攻撃を回避し『不可視の衝撃』をグリフィンの左肩目掛けて放った。


グリフィンの肩が吹き飛び左腕が地面に落ち、智也は身体強化魔術の出力を上げ、一気に四度短剣を突き刺した。


智也はなおも追撃を続けようとする。


(流石に、これ以上はまずいですね......)グリフィンは肉体を再生さると同時に、後方に腕型の触手を伸ばして壁に掴まり、触手の腕力と、自身の脚力を利用して後方に瞬時に下がり追撃を避けた。



「素晴らしい! これまでにも魔術師や魔物達に襲われたことは山ほどありますが、貴方ほど苦戦している相手はいませんでしたよ」とグリフィンは言った。


「その割には、余裕そうだな」智也は言った。


「余裕や慢心と言ったものではありません。私はただ感動しているのです......この闘争こそが美しい芸術を生み出すためのの第一歩なのですから!」


「お前の思い通りにはならないぞ」



智也は『空風』を唱える。


そして、グリフィンの首元を刺した。


「それは、貴方も同じことです」



その時「智也!」と背後から声がした。


智也が振り返ると、そこには"昏"がいた。


「なんで、そこに......」智也の思考が一瞬止まった。


グリフィンはニヤリと不気味に笑い、彼の腕を手で掴む。そして、不快で不気味な旋律を唱え、古代魔術を発動させた。

呪縛の鎖(カースチェーン)


その瞬間、"智也とグリフィンの体"が赤い霧を纏った黒い鎖によって共に縛られた。


「この魔術は鎖を繋いだ者の行動を繋がれた者に強制的にトレースさせます。つまり、私が動かない限り貴方は動けず、私が動いても貴方は私と同じ動きしか出来ないと言うことです」とグリフィンは額に汗をかきながら言った。


「どうして、昏がここに!? 朝霧さんが守ってくれているはず!」智也は明らかな動揺を見せた。


「ほお、貴方には二条 昏が見えているのですね」とグリフィンは言った。


 智也は魔術を発動させようとするが、なぜか発動できない。


「そこにいるのは二条 昏ではありません。幻魔ピプシードという魔物ですよ。正体を知らない限り、声や姿などの認識をその人間の解釈によって変換する。要するに、貴方が名を呼ばれた時に誰を連想するかによってそこにいる人物は変わるのです」とグリフィンは言った。


そう説明された途端、目の前にいた昏だと思っていた者はのっぺらぼうのようになった。




「さあ、準備は整いました! 【智慧の魔女】さん、忌まわしき神の力を彼から剥がし取ってください!」グリフィンが叫ぶと、空間の裂け目と共に智慧の魔女と呼ばれる人物が現れた。



(智慧の魔女......!? 声からして流楽さんの中にいる魔女とは違う、朝霧さんと遭遇した方の魔女か!)智也は蒼い魔力を放出させるが鎖は壊れない。


魔女は智也に近づき、彼にしか聞こえない声で囁いた。

「......貴方の存在は私の計画を狂わせますので、ここで退場していただきますよ。"タイムリーパー"」


(こいつ、タイムリープのことを......!?)


魔女は智也の体に触れ、彼の魂にある"神の力"に干渉する──




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