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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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次元の眷属

 ゴブリンの集落での出来事から一日経ち、ある程度回復したファングは智也達と共に森に魔物が残っていないか見回りを行った。


結果として、この森に魔物は確認できず、ゴブリンの残党も確認されなかったため、調査は終了した。


 

 調査が終わった後、ファングは智也に話しかけた。

「智也すまんな、魔物との戦闘の仕方を教える機会が無かった」


「いえ、あんなイレギュラーな事態が起こったんですから、仕方ありませんよ」と智也は言った。


「......すまんな、体力さえ残っていれば君の戦いにも加勢したかったが、現状私は戦力に慣れそうにない。その代わり、君に魔物との戦闘法を教えよう」とファングは言った。


「よろしくお願いします!」





◇◇◆◆◇◇



 時はさかのぼり、朝霧が二条家を訪問していた頃になる。



夕暮れ空の日差しが窓から差す中、朝霧は二条 紗由理にたずねた。


「招来した神はどこへ行った?」



紗由理はそれに対して沈黙した。

いくつかの間の後、紗由理は口を開いた。

「神は、招来しなかった」


朝霧は驚いた。

「どう言うことだ?」


「招来したのは、次元の神では無く、その"眷属けんぞく"でした」


紗由理はその当時のことを話した。



──彼女は周辺被害のことを考えて神の精神だけをこちらに顕現させる、招来の儀式を行い、それに成功した......はずだった。


彼女は次元の神との縁《繋がり》がある物品として、"ある鍵"を用いた。しかし、顕現したのは次元の神では無く、その眷属。


その眷属は蒼白いボロ布を纏ったミイラのような姿をしており、その周囲には虹色のオーブのようなものが浮かび、空洞となった眼窩がんかには青い陽炎かげろうのようなオーラがあった。


そして、紗由理は精神だけを呼び出そうとしていたが、その眷属は"鍵"に受肉し、肉体を持った状態で顕現してしまった。


神の眷属は受肉を果たすと不思議そうに周囲をキョロキョロと見渡し、紗由理の方を向いた。眷属は空洞の空いた眼窩で彼女を凝視した。


そして、その眷属は彼女に対して幾重いくえにも重なる薄気味悪い、合成音声のような声で言葉を発した。


しかし、その言葉を紗由理は聞き取ることが出来なかった。


すると、眷属は突然苦しみ出した。眼窩で燃える青いオーラが、一時的に虹色へと変わった。眷属の体が何かに抵抗するように激しく脈動し、やがてその体は三つに別れた。


 三つに分かれたその体はそれぞれ"青"、"蒼白"、"虹色"をしていて、青と虹色の肉体はどこかへと飛び去り、蒼白いミイラのような体だけがその場に残った。


そして、蒼白のミイラはしわが枯れた合成音声のような声で言った。


「うしろ」


 紗由理が後ろを振り返ると、そこには赫い瞳をした女がいた。顔や姿はモヤがかかったように思い出せないが、その身体的特徴だけは覚えている。


その女は紗由理の額に触れ、聞いたことのない不快な旋律を唱えた。その瞬間、赫く燃えるような無数の眼が紗由理を覗き込んでいるように感じた。


そしてその直後、女は言った。


「あなたに呪いをかけました。もし、貴方が神の招来を行った動機を他者に伝えた時、貴方の心臓は弾け飛びます。くれぐれも、言わないように」女はそう告げると霧のように消えた──





「これが、神の招来を行った時のあらましです。これ以上のことは、私にもわかりません」と紗由理は朝霧に向かって言った。


 朝霧はあごに手を添えて熟考した。

(神の眷属が顕現し、それが三体に分かれた......さらに"赫い瞳の女"、これは間違いなく"魔女"だ。そして、もう一つ気になるのは"鍵"についてか)



「将来の際に使った"鍵"というのは、何の鍵ですか?」と朝霧が尋ねた。


時空門じくうもんを開く鍵です」と紗由理は言った。


「時空門......まさか、過去や未来に行けるものだと!?」


「......おそらく。この町にある、黒戸神社には【時空門伝説】という伝承がありまして、それには大昔に時空門を使って未来の人間がやって来たという記述がありました。そして、二条家に代々伝わる"鍵"には"時空門を開く"力があると言われています」


「その鍵を使ったことは?」朝霧が尋ねた。


「無いです。鍵は使用出来ないように二条家の始祖が【変形魔術】を用いて非活性の状態にしています。それに、時空門がどこなのかもわからないですから」と紗由理は言った。


「使用は出来ない、ということですか.......まあ、現時点で手元に無いわけですからね......」と朝霧は言った。



(もし、過去に戻る力を持つ"鍵"があるなら、第三の厄災を阻止不可能な状況になってもやり直せると思ったが、そんな甘い考えは捨てるべきだな)と朝霧は考えた。



「それはそれとして、今後、神の招来を行うとするなら、智也くんのこと関係なく、私は君を処理しなければならない。この星も、人類も、人柱の神によって簡単に滅びるということを忘れないでくれ」と朝霧は言った。


「それは、重々承知しています......それでも、あの子が、その犠牲になるのだけは............いえ、何でも無いです。忘れてください」紗由理は暗い顔をした。


(呪いに関することか? だとすると、これ以上は聞けないか)と朝霧は考え、二条家を去った。



 その会話を、昏は家の裏手からこっそりと聞いていた。


(お姉ちゃん、そんなことを......どうして、言ってくれないの......)昏は心の中で呟いた。


 こん黄昏空たそがれぞらを見上げた。

分厚い雲が風によって流され近づいて来ていた──



 ◇◇◆◆◇◇


二日後、グリフィンとの戦いを一日後に控え、智也はファングに別れの挨拶をした。


「三日間、ありがとうございました」智也は頭を下げてお辞儀した。


「私の出来ることをしたまでだ、礼はいい。それよりも、本当に一人でグリフィンとやらに挑むつもりか?」とファングは尋ねた。


「はい。この件は、僕一人で片を付けたいんです」智也は言った。


「君の力ならそれも可能だろうが、流石にそれは危ういのでは無いか?」とファングは言った。


「......本当に危ない時は、朝霧さんを呼ぶつもりです。でも、あいつは僕が殺さないといけない」智也は暗い目でファングを見つめた。


「そうか......深淵教団グリフィンは魔物の大量発生にも関与している。魔物たちの無念も、これまでそいつが殺して来た人間の無念も、晴らしてやってくれ」とファングは言った。


「はい」智也は言った。


また、智也にはもう一つ目的があった。それは深淵教団オキュラスカルトの情報をグリフィンから手に入れることだ。


現状、深淵教団の情報はほとんど無い。ゆえに、その幹部であるグリフィンの持つ情報を手に入れることこそが一番の目的だ。



「智也、行くんだな」と純也が言った。


「うん。純也にも色々助けられたし、ありがとう」


「......死ぬなよ、智也」純也が言った。


「絶対に、死なないよ。純也の方も、気をつけてね。気負いすぎたりしないでくれよ」と智也が言った。


「? お、おう。じゃあ、またな」純也が言った。


「うん。また会おう」



 智也はゲートをつくり、その奥へと入った──


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