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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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聖剣

 ゴブリン集落へ向かう前、智也は少しの間ファングと話をしていた。



 かつて私の父は言った。

「魔物は人に害を成す。だからこそ、守るために我々は武器を振るうのだと、今でも、その教えは私の根幹にある」と


しかし、それと同じ、いやそれ以上に、私は魔物という生命に対して安らかな死を与えることを自分の役割だと感じている。


「いくつもの魔物を狩るうちに、魔物というのは生まれながらの"悪"であると気づいたんだ」ファングは言った。


「生まれながらの悪? それってどう言うことですか?」と智也が尋ねた。



「魔物はじょうを知らない。敵が死のうが、仲間が死のうが、そこには悲しみも怒りも無く、ただ無関心。あるのは生存本能と闘争本能。力を振るい、破壊し、殺し、奪う、それにのみ快楽を感じる」


「それが、生まれながらの悪ってことなんですね」


「そうだ。誰しも、生まれは選ばない。ましてや、魔物というのは生まれた時点で悪となる。だからこそ、私は魔物を憎まない。故に、私はおのが正義と信念を込めた一撃必殺の剣を振るう」



◇◇◆◆◇◇


「智也を抱えて逃げろ、純也!」ファングがそう叫んだ。


その次の瞬間、ファングの背後の魔術陣から灰色の液体が噴き出すように溢れ出た。


それを見た純也は危機を察知した。


(あのゴブリンとの戦いで何かあったのか! でも今の俺はかえって足手まといだ。ならせめて、智也を安全なところへ連れて行かないと)


純也は智也を安全なところへ連れて行くためにその場から走り去った。

「ファングさんも、やばい時は逃げてくださいよ!」純也はそう叫ぶと森の奥の方へと走った。




 ファングは魔術陣に対して向き合い、そこから溢れる灰色の液体を剣で切り裂こうとした。しかし、剣の刀身がその液体に触れた瞬間に溶解してしまった。



(この液体、溶解液か!)


ファングは再び距離をとった。

すると広がっていた灰色の液体が魔術陣の方へと戻り始め、魔術陣の中から高貴なローブを身に纏った魔人が現れた。


「どうじゃ、古代魔術は初めて見るだろう? どうじゃ? 現代のチンケな魔術よりも遥かに強大だろう?」魔人はニヤニヤと笑っている。


「古代魔術、やはりか。お前の周りにあるその粘液のようなもの、それはなんだ?」


「これは"不浄の魔"と呼ばれる存在でな、生物の負の感情を糧として生まれる魔物みたいなものじゃ。わかってるとは思うが、こいつはワシが命令したもの全てを溶かして呑み込み、糧とする。お前さんらがゴブリンを大量に殺したお陰でこれを顕現させることが出来た。感謝しよう」と魔人は語った。



「......まさか、そんなことも出来るとは、それに不浄の魔、聞いたことのない魔物だ。見たところ脳も存在しないと見える」ファングが言った。


「その通り、こいつに弱点となる部位は無いし、何より全てを溶解させられる。お前に残された道は、逃げるか、潔く死ぬかだ」と魔人が言った。



「......道は定められるものでは無い。自らの手で切り開く」ファングはそう言うと手に剣を握った。


その剣は等身に魔術言語が刻まれ、淡く白い輝きを放っている。


魔人はその剣を見ていぶかしげな顔をした。

「その剣、見たことがある......そうだ、千年前ワシを殺した前兆の仲間の一人が持っていた剣、名は.......」


ファングは魔人が言うよりも先にその名を語った。

「【ルーク(─luke─)】我が先祖より受け継いだ剣だ」



「......ほお、まさか憎き前兆に加えて、ワシを討ち取った奴らの子孫と遭遇するとはな......千年後にこんなことになるとは、運命とは実に面白い!」魔人はニヤリと笑った。


 魔人が腕を振ると灰色の液体が槍のような形状になってファングに襲いかかった。


ファングはそれを避けるが、変幻自在なその化け物は避けたファングの体目掛けて体を変化させて襲い続けた。


 避けきれないと悟ったファングは剣に魔力を込め、白く輝くその剣を横に振るった。


その瞬間白い閃光と共に風が舞いおこり、その聖なる力を宿す光と風が不浄の魔の体を消滅させた。


「不浄の魔は生物の負の感情から生まれる.......その剣にやどる聖なる力とは相性が悪いな」と魔人は言った。



 ファングは基本的にこの剣を魔物狩りに用いない。なぜなら、この剣は常に魔物の力と相反する聖なる力を放つため、殺し切る寸前に強烈な痛みを与えてしまうからだ。


しかし、今の相手は痛覚も思考もない存在、それに対してならば彼はその剣を存分に振るえた。



ファングは右手にルークを持ち、左手に鋼で出来た剣を持った。


「参る」

ファングは地面を強く蹴り込み駆け出した。


 魔人はファングに対して不浄の魔をけしかけた。まるで竜のような灰色の魔がファングに向かって突進し、ファングは白い光の宿った剣を振るって不浄の魔を削りながらスピードを落とさず猛進した。


進むに連れて不浄の魔の力が強くなっていき推進力が衰えて行くが、それでもファングは速度を維持したまま魔人の喉元まで辿り着いた。


その時、突然灰色の液体が泡立ち始めファングに槍のような形状になって襲いかかった。


不浄の魔の体は次第に黒く変化していき、黒く変わったその体はルークの光を突破してファングの体を貫いた。



 その瞬間、ファングの体を焼けるような鋭い痛みと衝撃が襲った。


ファングの体が強張り、その隙に魔人は『幻影の手』でファングの首元を掴んだ。




 魔人は首元を掴む手に対して力を込めて首をへし折ろうとした。しかし、その首は折れなかった。


鍛えられた肉体と魔力の集中による防御でそれをなんとか防いだのだ。しかし、段々と首が締まり窒息している。


(ちっ、心臓を狙うべきだったか)魔人は心の中でイラついた。


空間転移テレポート』ファングは無詠唱でそれを発動させ魔人から距離をとった。


「驚いた、まさか人間程度の耐久力で生き延びるとはな」



「......当たり前だけだ。この程度で死にはせん」ファングはそう言うが、首元には紫色の手型のアザがあった。


「わからんな、お前なぜ戦う? 逃げれば良いじゃないか、お前の弟子も逃げただろう?」と魔人が不思議そうに尋ねた。


「確かに、私は逃げるべきだろう。だがしかし、今ここで私が逃げれば、知能あるお前を討つのは困難を極めるだろう。だからこそ、私が今ここで狩る」ファングは言った。


魔人はファングを睨み、そして笑った。

「......昔、お前の先祖も似たようなことを語っていた。やはり血は継がれるものなのだな......ワシを討ち取った英雄の子孫よ、名は何と言う?」


魔人は、目の前の敵に対して、一武人としての敬意をはらった。


ファングもそれを感じ、名を名乗った。


「......我が名はファング・オーガー、狩猟者だ」


「ファング・オーガーか、名を覚えておこう」魔人はニヤリと笑った。



「明哲の魔人ファナティスよ、我が剣、我が正義、我が決意、全てを込めた全力の一撃を持って、貴様を狩る。次が最終最後の一撃だ!」ファングは叫んだ。


 ファングは剣を強く握り、魔術を発動させた──




次回は一週間後!次回とその次くらいでゴブリンのところは終わる予定です。

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