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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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記憶のカケラ

 狼の怪物が消滅した直後、智也の頭の中に奇妙な記憶が流れ込んだ。それは自分自身では体験したことのないものだが、実際に体験したかのように鮮明な記憶だった。


頭が割れるように痛み、渦巻く憎悪の感情が起こった。


 智也はその衝撃に耐えられず、意識を手放してしまった。


「おい、智也! しっかりしろ!」と純也が体を揺さぶるが、智也は気を失ったままだった──



◇◇◆◆◇◇



 智也達と怪物が戦闘をしていた頃、ファングと魔人は戦闘を続けていた。



ファングは短剣を振るい、魔人は『幻影の手』を纏わせた拳で格闘をしている。


 ファングと魔人は達人の体捌きで剣と拳を衝突させる。


(この人間、常に急所を狙って攻撃してくる、逆に言えばそこしか狙わない分わかりやすい)魔人はファングの動きに順応しつつあった。


しかし、それはファングも同じだ。

(流石は魔人、古代武術に加えてマーシャルアーツなども取り入れた格闘術を駆使してくる。とは言え、目で追えるならば問題は無い)


 

「幻影のファントムグラスプ

魔人がそう唱えた瞬間、ファングの体を巨大な不可視の手が掴む。その手は防御魔術を無視してファングの体を直接握った。


 その強大な握力によってファングの体は鷲掴みにされ、吐血した。


ファングは脱出が不可能だと悟ると魔術を発動させた。

空間転移テレポート


その瞬間、ファングの姿がたちまち消え、『幻影の手』の範囲外へと逃れていた。


「空間魔術......適正者が少ないと聞くが、お前は使えるのだな」と魔人が興味深そうに言った。



(今のは危なかった。しかし『幻影の手』の能力もあらかたわかった)


『幻影の手』は不可視の手の形をした力を生み出し、それを自由自在に操るものだが、明哲の魔人のそれは少し違う。


本来この魔術は人体の中で心臓を鷲掴みにするような芸当は出来ないが、この魔人にはそれが可能だ。


そして魔人は二つの手を同時に扱えるが、先ほどのように巨大な手をつくり攻撃する場合は手を一つしか出せない。もし二つ出せているのなら掴んだ後に頭を握り潰すことも出来たはずだからだ。


 

「どうやら、『幻影の手』だけではお前さんを殺すことは難しいようだな。ワシもそろそろ、少し本気を出してやろう」魔人はニヤリと笑い、巨大な赤い魔術陣を構築した。


 魔人は唸るような悍ましい言葉を唱え始めた。それはまるで呪文を唱えているようで、その空間が恐怖で満ちていく。


「......まさか、古代魔術か!」

ファングはそれを阻止すべく全力で駆け出した。


そして刹那、魔人の体が縦に真っ二つにされた。魔人の肉体から紫色の血が溢れ出した。



──しかし、詠唱は止まらなかった。

目の前の魔人は完全にこと切れているというのに、その死体から声が聞こえ続けている。


(なぜ、止まらない......)ファングは床の下から詠唱を唱える声がしたため、床を剣で刺した。


 しかし、止まらない。


その声はどこから聞こえるか、床の下か? 天井か? 壁の裏か? はたまた背後か? それとも、頭の中か?


違う。どこからも聞こえている。この悍ましい声は空間全体で発生しているのだ。


 ファングは床の下を剣でくり抜いた。

床の下にあったのは脈動する緑色の皮膚だった。その皮膚には牙のある口が無数についており、それら全てが呪文を唱えている。


(この異空間のことを魔術の一種だと思っていた......違った。ここは、魔人の腹の中だ)




「不浄の魔よ、顕現せよ」



 詠唱が終わり、魔術陣が赤く発光した。魔術陣は黒い穴へと変わり、その奥から灰色の粘液のようなものが溢れ出した。


床まで溢れたその粘液は一気に床の上で広がり、波のようにファングの元へ押し寄せた。


 ファングは急いで入ってきた魔術陣へ駆け出し、粘液が触れる前にこの空間から脱出することに成功した。




魔術陣から出たファングは周りの光景を見て驚いた。なぜなら入った時にあった小屋は木っ端微塵にされ、地面には奇妙なクレーターがいくつかあったからだ。


そして智也が倒れており、純也が彼に話しかけているのがわかった。


「智也を抱えて逃げろ、純也!」ファングがそう叫んだ瞬間、背後の魔術陣から灰色の粘液が噴水の水のように溢れ出した──


次回は一週間後の予定です。

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