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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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明哲の魔人

 純也が小屋に入った少し後、ファングが森から集落へと戻って来た。

ファングは数多のゴブリンを剣を一振りして薙ぎ払い、そのまま応戦している智也に近づいた。


「すまない、戻るのが遅れた。純也はどこへ行った?」とファングは尋ねた。


「純也はあの小屋の中にいる魔術師を倒しに行ってくれました。どうやらゴブリン達が狂戦士化しているのはそいつの魔術かもしれないと言ってました」


「なるほど......ならば私も加勢しに行こう。ここは任せて平気か?」とファングが尋ねた。


「はい」


「何かあれば、迷わず逃げろ」とファングは言い残し小屋へと向かった──



 そして現在、突如として小屋が弾け飛んだ。智也はその光景を目の当たりにし、すぐさま小屋へと走った。


周囲が土煙で隠れているが、そこには明らかに巨大な何かがいる。土煙が段々と晴れ、智也はなんとか純也を見つけ出した。


それと同時に、狼の怪物も目撃することになった。智也は純也の呪いの話を聞いていたためその存在が何なのか瞬時に理解できたが、その存在から感じる"蒼白の化け物"と似た気配が体を少し強張らせた。


 

 青い呪狼はその巨椀を振り上げ、倒れている純也に向かって振り下ろした。智也は強化魔術の出力を無理やり上げて間一髪のところで純也を救った。


智也の体の筋繊維が少し切れたが、彼はその程度ではもはや止まらない。


 智也は怪物と相対する覚悟を決めた。その時、【眼】が閉じた。



 周りのゴブリン達が怪物の方へと走り出し、鋭い爪で襲いかかった。


 狼の怪物は智也の方を睨んだ。ゴブリン達は静止している狼の怪物を攻撃するが、その爪により攻撃は全てすり抜けている。


刹那、狼の体が強く発光し、景色が虫メガネで覗いたように歪んだ。その歪みの波がその周囲を襲った。その瞬間、ゴブリン達の四肢が無惨にもげ、バラバラになり、その体は霧散した。


(空間を歪める力......間違いない。こいつは次元の神の眷属だ。でも、どうして純也を......?)と智也は思考を巡らせた。



 狼の怪物は周囲のゴブリンをあらかた殲滅した後智也たちの方へと向き直り、車のような速度で突進してきた。


智也は純也を抱えたままその攻撃を避け『空風』を使って後方へと逃げた。


 その時、怪物の周囲の空間が歪んだ──



◇◇◆◆◇◇



 ファングは両手に短剣を持った状態で一匹のゴブリンを警戒していた。


(佇まいでわかる、このゴブリンは只者では無い。こいつは、ここで必ず仕留めなければいけないと私の直感が言っている)ファングは警戒を強めた。


「おや、仕掛けてこないのか? なら、こちらから仕掛けてやろう」


 ゴブリンは小さく何かを呟くと手の甲に小さな赤い魔術陣をつくり、その手のひらをファングに向けた。そして、ゴブリンは自身の拳を思い切り握った。


それはまるで何かを握りつぶすかのようだった。



 その時、ファングは自身の心臓の辺りに短剣を突き刺した。

自害した......かに見えたが、そうでは無い。


「ほお、この時代の人間もなかなかやるな。ワシの『幻影の手』は人間の体内でも効果を発動できる。心臓を握りつぶしてやるつもりだったが、まさか防がれるとは......」ニヤけながら笑うゴブリンの手の甲には切り傷が出来ていた。


ファングは自身の心臓の間際に発生した『幻影の手』を突き刺したのだ。その魔術はどうやらゴブリンの手と連動しているようで、『幻影の手』が負ったダメージはそのままゴブリンの手に還元される。


(咄嗟に体が動いたが、今のは危なかった。急所は外しているが、二度目は通用するかどうか......)ファングは止血を済ませてゴブリンに攻撃を開始する。



 ファングは左手の短剣を投擲とうてきした。しかし、その短剣はゴブリンに当たる前に何かの衝撃によって起動を逸らされた。おそらく『幻影の手』の力だろう。


短剣を投げた直後にファングはゴブリンに向かって走り出し、もう片方の短剣を投げた。そして、それも同様に弾かれて起動を逸らされた。


ファングは二本の短剣を投げた直後の刹那の間に亜空間から取り出した拳銃で二つの短剣が弾かれた位置の隙間を縫うように銃弾を放った。


 その銃弾は的確にゴブリンの頭を捉え、弾かれることなく直進した。しかし、ゴブリンはその銃弾を読んでいたかのように避けてしまった。


「ヒヤヒヤするな、だがこれも生の醍醐味だいごみじゃ!」


なおも接近しているファングは剣を取り出して右手で握った。そして、そのままゴブリンに向けて剣を振り下ろした。


ゴブリンはその剣を左手で受け止めた。しかし、直接触れてはいない。ゴブリンの手と剣の間に不可視の力が働いてそれを止めているのだ。


 ゴブリンはそのまま剣を握って破壊し、右手でファングの首に手を伸ばした。ファングは危機を察知し後方へと跳んで難を逃れた。


「貴様、ただのゴブリンでは無いだろう。何者だ」ファングはたずねた。


「......そうじゃな、名乗っていなかったわい。ワシは【明哲めいてつ魔人まじん】ファナティス。千年の時を経てよみがえった魔人じゃ」


「魔人、だと......」流石のファングでもこれには動揺を見せた。確かに佇まいからしてただのゴブリンとは一線を画すものがあったが、滅びたはずの魔人が復活していると言われたならば驚くことだろう。


ファングは尋ねた。

「だが、お前の魔力量、身体能力は明らかに平凡なゴブリンと同じだ。本当に魔人なのか?」


「お前らは知らないようだが、魔人は神に近しい存在でな、亜人という眷属を作り出すことで自身の魂を何とか存続させていたのだよ。とは言え、やっと復活できたのだが、残念ながら記憶は蘇っても力までは取り戻せなかったがな」とファナティスは言った。


「まあいい、たとえ貴様が魔人であろうと、魔物であるならば、私が狩る」ファングは冷静な顔つきで言った。


「そうかい、じゃあ殺し合いの再会といこうか!」と一匹の魔人は笑った。


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