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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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時空風

[七月 二十八日]


 智也と別れた後、朝霧は昏の家の前まで来ていた。


朝霧はチャイムを鳴らすが、応答はなかった。


(......誰もいないのか......)朝霧が出直そうとした時、そこに昏がやって来た。


「あの、私の家に何かご用ですか?」昏が尋ねた。


朝霧は昏の方を振り向いて言った。

「ああ、紗由理さんに会いたくてね、君は智也くんの言っていた昏ちゃんかな?」


「え、智也の知り合いですか!? ......もしかして、朝霧さん、ですか?」昏は尋ねた。


「そうだよ。よくわかったね」


「金髪の人ってここらではあまり見ないので......とりあえず、どうぞ中へ」


「すまないね。お邪魔するよ」


 朝霧と昏は家の中へ入った──


朝霧は昏に客間まで案内され、正座して座った。しばらくすると昏がお茶を提供した。


昏は朝霧の向かい側に座り、朝霧に話しかけた。

「朝霧さんって、智也の魔術の師匠なんですよね? 智也って魔術師としてはどのくらいの腕があるんですか?」


「魔術の熟練度で言えば未熟な感じはあるけど、魔術の戦闘に関しては相当なものだよ。なにせ、神の分体を滅ぼしたのだから」と朝霧は嬉しそうに言った。


「神を............そう、ですか」昏は微笑んだ。


朝霧は尋ねた。

「そう言えば、昏ちゃんは幼馴染と聞いているけど、智也くんのことをどう思っているの?」


「どうって......どういうことですか?」昏は不思議そうに聞き返した。


「......なら、単刀直入に聞こう......君は、智也くんのことが好きなの?」朝霧は意気揚々とした表情で言った。


 昏は一瞬固まった。次の瞬間、頬が急激に赤くなった。

「............そ、そんなわけないじゃ無いですか! 智也とは友達だし、それに......初対面でいきなり聞くことですか!?」


「ははは、いやすまないね。智也くんは君のことを話す時、いつも以上に楽しそうだったから、何かあるのかと思って......ね?」


「ね? じゃ無いですよ!」


「まあ、この話は置いといて、少し真面目な話をさせてもらうよ」朝霧は言った。


「......はい」


「数年くらいから紗由理さんに変わったことは無い?」


「......無いです」と昏が僅かに焦った様子で言った。


「正直に答えてくれ。人の生死に関わることなんだ」と朝霧は問い詰めた。


「......お姉ちゃんは、数年前から何かを探していました。それが誰かを助けるのに必要なものっていうのは何となくわかるんですけど、詳しくはよくわからないです」と昏が言った。


(二条 紗由理の助けたい人物.......見たところ、昏ちゃんには悪い力は感じないし、彼女では無いはずだ.....だとしたら、誰だ?)朝霧は少し考え込んだ。



「話してくれてありがとう。ちなみに紗由理さんがいつ頃帰ってくるかわかる?」と朝霧は尋ねた。


「そろそろ帰ってくると思いますよ。今日は魔術に使う材料を少し調達しにいくだけって言ってましたから」と昏は言った。



 ちょうどそんな話をしていた頃、玄関が開く音がした。

「ただいま.......え、朝霧さん!?」


客間を見た紗由理は目を見開き、かなり動揺したように見えた。


朝霧は言った。

「お邪魔しています。さきほど、昏さんに家の中に入れてもらいました」


「そうでしたか......それで、何のお話をしに来たんですか?」と紗由理は尋ねた。


「......昏、少し二人にしてもらっても良い?」と紗由理が言った。


「......わかった」昏は不安そうな表情で家を出た──






「......それで、何のお話ですか?」と紗由理は尋ねた。


「......五つの厄災、過去二つの厄災の元凶となったのは神だった。だから第三の厄災も何らかの神が引き起こす可能性が高いと私は思っています......」


「......」紗由理は無言のまま朝霧の方を見つめた。


朝霧は言った。

「厄災の引き金となり得る【神の招来しょうらい】、神と縁のあるモノを使って儀式を行うことで神を呼び出す......四ヶ月ほど前、その痕跡を発見しました。調べるのにかなり時間を要しましたが、あれは、貴方がやったものですよね?」


「......なんの、お話ですか?」


次元じげんかみ」朝霧がそう呟くと、紗由理が僅かに動揺した。


「......気づいていたんですね」


「......なぜ、そんなことをしようとした? 神の招来の被害がどうなるのかは君もわかるはずだろ?」朝霧は怖い表情で言った。


「............理由は、言えません。もし理由を話せば、私は死にます。そういう"呪い"をかけられてしまった......それでも、理由を聞きたいのなら、私の意思を受け継いで欲しい。貴方には、それが出来ますか?」紗由理は真剣な眼差しで言った。


「............そうか......なら、理由は聞かない。智也くんの大事な人を、私が殺すわけにはいかないからね......けれど、これだけは聞いておきたい」




「招来した神はどこへ行った?」



◇◇◆◆◇◇


[ゴブリンの集落]


 智也の頭が不可視の魔弾によって貫かれた......かに見えた。


智也は無傷でそこに立っていた。



 その魔弾が撃たれた元を智也が見ると、そこには一匹の平凡なゴブリンがいた。しかし、智也はそいつの表情、そして手に持っているマグナムを見て確信した。


智也は目をギョロリと動かした。

「ゴブリプス、見つけたぞ......」


「へっ、マジかよ......」ゴブリプスは冷や汗を垂らした。



 ゴブリプスは偽装ぎそうの魔術を使い、一体のゴブリンを自分に見せかけて森に逃走させ、自身は平凡なゴブリンに紛れて息を潜めていた。


そして、一瞬の隙が生まれたタイミングでゴブリプスはマグナムから不可視の魔弾を放った。一発目に純也に放った魔弾は青い光を放っていたが、それをブラフに不可視の魔弾を放った。


加えてその魔弾に偽装の魔術を施すことによって、その弾道を完璧に隠蔽いんぺいした......はずだった......


 智也は、なぜか魔弾をかわした。


◇◇◆◆◇◇


 『空風そらかぜ』の習得中、智也は自身の魔力特性【圧縮】と『空風そらかぜ』の空間圧縮をうまく活用できれば魔術発動をより早く出来るのでは無いかと考えていた。


そして、無詠唱と並行して『空風』に【圧縮】の魔力特性を付与して魔術を扱う練習をしていた。その時、ほんの一瞬だけ何かがズレるような感覚がした。


 通常、空間転移魔術は固体や魔力体を通過したりなどは出来ない。しかし、智也の魔力特性を付与した魔術は固体や魔力体を通過できた。


朝霧もこの原理はよくわかっていなかったが、一つ、仮説を立てた。


 智也の魔力特性は【圧縮】ともう一つ、後天的に"契約"によって得た力があるかもしれないと──


◇◇◆◆◇◇


 智也は魔弾がある直前、魔力の揺れを感知し『空風』を無詠唱、さらに魔力特性を付与した状態で発動した。それにより一時的に透過状態になることによって魔弾を避けたのだ。



「智也、お前大丈夫なのか!」と純也が心配して声をかけた。


「大丈夫、無傷だよ」



「人間、お前の魔術は異常だ。透過魔術でも魔力体は透過出来ない。何をした!」ゴブリプスは目を見開いて叫んだ。


「教えるわけ、ないだろ」智也は『空風』を即座に発動した。


そして複数のゴブリン達をすり抜け、一瞬でゴブリプスの前方に現れた。


(まさか、先程のは空間転移魔術......!)ゴブリプスがそう思考するのも一瞬、流刃がゴブリプスに向けて振り下ろされた。


 ゴブリプスは回避をしながら、智也の腹に複数の魔弾を放った。


しかし、智也は自身の腹に『流盾』を発動しており、その魔弾を防いだ。


(魔術を二つ同時に発動出来るのかよ......!)ゴブリプスはなぜか笑った。



智也の後方から三体のゴブリンが襲いかかった。

純也は智也の援護のために黒い槍を放ち、その三体を貫いた。


「行け、智也......!」と純也が叫んだ。



 ゴブリプスは手のひらに赤い魔術陣を構築し、智也に向けて発動した。その瞬間、智也の動きが突然止まった。


まるで何かに掴まれて身動きが取れないようだ。


幻影の手(ファントムグラスト)

この魔術は対象を不可視の力によって掴む。持続時間は短いが汎用性は高く、先程純也の『黒魔槍』を防いだのもこの魔術である。


ゴブリプスは雄叫びをあげながら思い切り智也を横に投げ飛ばした。智也は勢いよく吹き飛ばされ、少し離れた樹木に衝突した。


 樹木は音を立てて折れ、智也の方へのしかかった。その瞬間、智也は蒼い残像を残して瞬間移動した。


しかし、ゴブリプスとの距離は未だある。


(どうやら、透過する空間転移は距離が短くなるようだな)とゴブリプスは見抜いていた。


ゴブリプスは智也目掛けて魔弾を放った。


『空風』は連続で使用するとしばらくの間、周囲の空間が乱れやすくなり魔術を発動すると危険な状態になる。故に智也はゴブリプスまで走って辿り着かなければならない。


智也は身体強化魔術の出力を上げ、走り出す。青い魔弾の軌道を瞬時に見極め上手くかわし続けた。


そして、一瞬にしてゴブリプスまで近づいた。

そのタイミングでゴブリプスは懐からもう一丁のマグナムを取り出し、智也の眉間に目掛けて引き金を引いた。


 そのマグナムにはかなりの魔力が溜め込まれており、通常の三倍の速度の魔弾が至近距離で放たれた。


純也も周りのゴブリン達の攻撃により援護が出来ない。

魔弾は確実に智也に命中するとゴブリプスは確信した。


 その魔弾は智也の目の前で軌道を変え、智也の頰を掠めた。


『空風』


三倍の速度の魔弾、しかし身体強化魔術で動体視力の上がっている智也は僅かに反応することが出来た。そして、『空風』の対象を魔弾にし、瞬時に横にずらした。


空間が乱れている中で『空風』を発動すると四肢が千切れたりと最悪死ぬ可能性もあるが、魔弾を対象にすればその心配も無い。




(こいつは......俺なんかよりも遥かに化け物だな)ゴブリプスはニヤリと笑った。


智也はゴブリプスの頭部に『不可視の衝撃』を放った。

その刹那、ゴブリプスは「だがな......」と呟いた。




 ゴブリプスの頭が弾け飛び、身に纏った遺品の数々が地面に落ちた。そして、その肉体は塵となり霧散した。



その瞬間、周囲にいたゴブリンたちが突然苦しみ始めた。ゴブリン達の目が赤く裂け、身体が一回り大きくなり爪と牙が急速に伸びた。


「智也、近くで魔術が発動した感じがした。そいつがゴブリン達を凶暴化させているのかもしれない」と純也は言った。


「......なら、持久戦が出来る僕がここで戦う。純也はそいつを倒して」智也は言った。


「了解。なるべく早めに倒す!」純也は走り始めた──


次回は二週間後とかになるかもしれません...あと久しぶりに設定まとめ


○ゴブリプス

幼少期に人間に捕らえられ、数年間檻に閉じ込められていましたが、檻の中で言語と魔術を習得。ちなみに魔人・亜人は生まれつき魔力の感知ができます。

その後脱走。自らを捕らえていた魔術師を殺害後家の中にある魔導書や資料を漁り尽くし、偽装魔術や幻影の手などの魔術を習得、魔術師の家にある金が尽きると別の人間の家へ行き、主を殺害後同様の手口で乗っ取るということを繰り返し、興味本位で自身の同族を探しに今いる森へ向かい、文化レベルの低い同族を嫌悪し同族狩りを行う。

その後、自分がゴブリンたちを導かなければならないという思想と、ある魔導書に書かれていたある存在を召喚するための人手を集めるためゴブリン達と接触する。

そして、ゴブリン達の文化レベルを急激に上昇させるなどするが、ゴブリン狩りをしたことは秘密にしており、今でもその時のことを考えて思い出し笑いをする。後悔もしていない。また彼には収集癖があり、殺害した人間の持ち物をトロフィーのように収集していた。

その後、死す!


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