表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
60/88

魔人の残滓

注意)智也は朝霧に英語の知識を魔術でインプットされた状態で話しています。

 かつて、第一の厄災によって魔物がこの世界に溢れかえった。そして、通常産まれるはずのない人間の魔物が産まれることがあった。


 人間以上の脳を持ち、人間以上の魔力、身体能力を持つ人間の魔物、それは【魔人】と呼ばれ一夜で一つの国を滅ぼした伝説も残されている。


 魔人は英雄たちによって全て討伐され、今では産まれることも無く、存在しない。しかし、その残滓ざんしは今も存在している──



◇◇◆◆◇◇


 森の奥に踏み入り、しばらく歩いたが何も発見はできず、智也たちは森の真ん中で休憩していた。



「智也、見てくれ!」と純也が叫んだ。


智也は気になって純也の方を見た。そこには白い斑点のある赤いキノコ......ベニテングダケがあった。


「見ろよ智也、このキノコ食えそうだぞ!」


「いや食えねえよ!」


「ははは、冗談だよ」と純也は笑って言った。


「びっくりした......マジで食おうとしてんのかと思った」


「実は、昔食ったことあるんだよ」と純也が言った。


「えっ」


「あの時はファングさんが三途の川の向こうで手を振ってる姿が見えたもんだよ......」


「いやファングさん死んでねえよ!」智也は思わず言ってしまった。


「ははは、なんか喋り方がフレンドリーになったな智也」


「そうか.....? そうかも」智也は笑った。



「ベニテングダケと言えば、ベルセルクの話が有名だな」と突然ファングが話に入った。


「ベルセルク......? って何ですか?」と智也は尋ねた。


ファングは語った。

「ベルセルクとはベニテングダケを食い、恐怖心を忘れ闘う狂戦士のことだ。まあ単に毒で酩酊状態になって戦っているだけだがな......そういう意味では魔物もそうだ。あふれる魔力によって常に気がたかぶり、恐怖心の無い怪物となる。言わば、魔物はベルセルクと言うことだな」


(しばらく一緒にいてわかったけど、この人の話らだいたい魔物の話に繋がるな......)と智也は思った。



「さて、そろそろ移動するぞ」とファングは二人に告げ、そのまま歩き始めた──




 

 森の奥は静まり返り、自分たちの足音や息遣いしか聞こえてこない。静寂がかえって心を揺さぶる。


ある時、ファングが突然止まった。


「どうしたんですか?」と純也が言った。


「見てみろ、この足跡」とファングが指差したところには複数の人の足跡のようなものがあった。見たところ素足で歩いており、大きさは成人男性ほどの大きさだ。


引きずられたような跡や、ところどころ靴を履いた足跡もある。


「もしかして、人が遭難しているんですか!?」と智也は尋ねた。


「いや、違う。この周囲からは魔物の気配がする」とファングが言った。


「もしかして......亜人あじんですか?」と純也が言った。



 亜人とはかつて猛威を振るった魔人たちの残滓ざんしであり、いわば劣化した魔人と言える。とは言え身体能力は人間よりも高く、知能も持っているため他の魔物よりも脅威になりやすい。


「まさか、この森の奥に亜人がいたとはな......おそらく森の奥で魔物と遭遇しなかったのは亜人たちが魔物を狩ったからかもしれないな」とファングは言った。


「亜人って、そんなに強いんですか......?」と智也は尋ねた。


「ああ、個体によって魔術も扱ううえに、人間よりも身体能力が高い。単純に言えば人間の上位互換だろうな。ただ、奴らは科学技術を持たない。その点では人間が勝っているだろう」とファングは言った。


「亜人とは、コミュニケーションは取れるんですか......?」と智也は尋ねた。


「......そんな馬鹿なことは考えるな。奴らは人間とは違う。根本的に価値観が違う、奴らは人間を殺すことやいたぶることを好む。話しかけらたとしても無視しろ」とファングは言った。


「......僕は、出来るなら会話がしたいです。本当に心まで怪物なのかどうかは、自分で決めたいので」智也は言った。


「......まあ、無駄な希望は見ないことだ」とファングは言い放った。



◇◇◆◆◇◇


 足跡を辿っていくうちに、いつしか日も暮れて来た。夜が近づき暗い森がさらに暗くなる。そんな時、明かりが見えた。


こんな森の奥に明かりがある。この不気味な状況の理由はすぐにわかった。


「あそこに、亜人たちがいる」とファングが言った。


 智也たちは緊張で心臓を高ならせながら一歩、また一歩と明るい方へ近づいた。

暗闇を照らす光は、普段ならば希望の象徴とも言えるべきものだと言うのに、今は恐怖の対象となっている。


 そして、彼らは明かりの元へ辿り着き、こっそりとそこを覗いた。そこには五人の亜人がいた。


緑色の皮膚に黄色い目、とんがった耳を持ち牙が剥き出している者もいる。それは【ゴブリン】と呼ばれる亜人だった。



 ゴブリンは人間より筋力が強い程度で亜人の中では弱い部類に入るが、狡猾こうかつなことで知られている。


ゴブリンたちはボロボロの布切れを纏っている程度の科学技術しか持っていないようで、武器も石器の斧や剣のようだ。


 ファングが率先して前に出たため、智也たちも後に続きゴブリンたちの目の前に出た。


ゴブリンたちは非常に慌てた様子で集まってよくわからない言語で話していた。手には石器の武器を持って震える体でこちらを威嚇する。



 智也はその様子にどこか同情心を感じた。


「......あの、人の言葉は、話せますか?」と智也は尋ねた。


純也はそれを制止しようとしたが、ファングが純也の肩に手を置いて目配せしたためそれをやめた。


「ワタシハ、シャベレル」と一人のハゲたゴブリンが言った。


「あなた達は、人に危害を与えますか?」と智也は言った。


「ワレワレハ、コノ森でヒッソリト暮ラシテキタ。人間ニ危害ヲ加エタコトハ無イ。モシ、ワレワレヲ殺スナラバ、ワレワレハ侵略者ニ対シテ抵抗スル」とゴブリンが言った。


「......ファングさん、このゴブリンたちは悪い魔物なんでしょうか? 何もしていないと言っていますし......それに、言葉も通じる」と智也は言った。


「......智也、お前の好きにしろ」とファングは言った。



 智也は一度ゴブリンと話してみることにした。本当に亜人が悪しき魔物なのか自分で見極めたかったからだ。


「ニンゲン、お前ハ話ガ、ワカル。良いヤツダ」とゴブリンが言った。


「......あなたたちは、いつもどんな生活を送っているんですか?」と智也は尋ねた。


「ワレワレハ、狩りヲ生業なりわいトシテ生活シテイル。コノ石器デ狩りヲスル」とゴブリンは言った。



 それからしばらくゴブリンの話を聞きながら智也たちは彼らの大元の集落のある森の最奥へと歩いた。


その間もファングと純也は渋い顔をしていた。


そして、智也たちは大きなゴブリンたちの集落へと案内された。


「驚いた、ゴブリンがこれほど大きな集落を持っているなんて......」と純也が呟いた。


「ワレワレハ、集マッタ。数少ナイ同胞達ト、集落ヲ作ッタ」とゴブリンは言った。


「数は減ってしまったのですか?」と智也は尋ねた。


「人間ガ、ワレワレヲ遊ビデ狩ッタ。ワレワレハソレにヨッテ、数ヲ減ラシタ」とゴブリンは悔しそうに言った。


「......人がそんなことを......すいません」智也が言った。


「モウ、昔ノ話ダ。ワレワレハ、遺恨ヲ残サナイ」





そして、智也たちは村長の家へと案内された。

「ようこそ、我々の集落へ。私はゴブリン達のおさ、【ゴブリプス】という者だ。


ゴブリプスと名乗ったゴブリンは全身にターバンのようなものを纏っており、耳にはたくさんの耳飾りをつけていた。ピアスのようなものや、宝石のついた耳飾りまで様々だ。


「僕は彩島 智也です。ゴブリプスさんは人間の言葉を流暢りゅうちょうに話すのですね」


「私は人間と友好な関係を築きたいと常々思っていました。これがその第一歩となることを期待しています」とゴブリプスは言った。


「......友好関係、ですか......なら、長である貴方に、一つ質問しても良いですか?」と智也は言った。


「良いですぞ」とゴブリプスは朗らかに言った。


智也は言った。

「......貴方たちがさらった人間はどこですか?」


「......攫った? そんなことは決してしておりませんよ」とゴブリプスは言った。


「僕は、少し前にゴブリンの足跡と靴を履いた人の足跡を見ました。貴方がたの生活水準は失礼ですが、あまり高いとは言えない。靴を履いている者なんていませんでしたし......それに、引きずられた後や持ち上げた跡もありました............どこですか?」智也は鋭い目つきで尋ねた。


「もしかすると、部下が私に独断でそんなことをしているのかもしれませんね......後で事実確認をしておきます」とゴブリプスは言った。


「......いや、貴方も知っていたはずだ。その耳飾り、明らかにプラスチックで出来ている......人間から奪ったものだろ」智也は言った。


「......ああ、ちっ、バレたか、面倒くせえな。いいだろう。全部話してやるよ」とゴブリプスは言った。



ゴブリプスは語った。

「確かに、ここらで遭難した人間が五人いたぜ。全員牢屋にぶち込んだ後、男二人は森に逃した後に逃げる背中を追って殺したぜ。助かったと思ったのか、希望に満ち溢れた目をした奴らを殺すのは最高にスッとした。女二人は下っぱどもが した後に殺されちまったみたいだな。酷いもんだったぜ。最後に男一人が魔術師だったみたいでよ、知っている魔術を拷問して吐かせて、そっから殺したぜ。人間の有効活用って言うのかな、ぐくく、俺はやっぱ天才だな」


「......」智也は怒りに震えた。わかっていたことだ。ファングや純也の言っていた通り、根本的に亜人と人間は違いすぎる。もう、自分の中で答えは出た。


こんなことを愉快そうに、淡々と話せるこいつは、人間では無く怪物だ。


「じゃあ、やるか」ゴブリプスはそう言うとターバンを脱いだ。

ゴブリプスは上流階級の人間が着るような身なりの良い服を着て、頭には中折れ帽を被り、手にはマグナムを持っていた。

そして全身に様々な飾りをつけており、耳飾りや首飾り、ブレスレットや指輪がジャラジャラとしていた。


「キマってるだろ。殺した人間から奪ったんだ」とゴブリプスは誇らし気に言った。


「殺して来た人間の遺留品を身につけるなんて......それは、その人たちの遺族に返してもらう!」智也はそう言うと蒼い魔力を全身にほとばしらせた。


ファングと純也も戦闘態勢に入り、集落中のゴブリンが集まって来た。


ゴブリプスが高らかに叫んだ。

「さあ、狩りの時間だ」


明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

もう新年、早い、早すぎるよ...今年は四章完結後にしばらく投稿できなくなると思いますが、気長にお待ちください。


ちなみに魔人は先天的に生まれる知能を持った人間の魔物で、魔術を使った反動で後天的に魔物になると知能の無い魔物になります。  

あとゴブリンは妖精とか悪魔の部類ですが、この物語では亜人という枠でよろしくお願いします。        

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ