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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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守るための力

 智也は一度家に帰ってから朝霧と会うためゲートをつくろとした。


その時、玄関のチャイムが鳴ったため智也はゲートをつくるのをやめて玄関の方へ向かった。


 その扉を開くと、そこには昏がいた。


「昏......どうしたんだ?」智也は尋ねた。


「智也、昨日何かあったでしょ、急に家から飛び出したり、黒戸神社に救急車が来てたし......それに、なんだか顔が怖いよ」昏は心配そうに言った。


「ああ、爺ちゃんが怪我しちゃって、命に別状は無いんだけど、それでな」智也は朗らかに言った。


「......嘘だ、それだけじゃ無いでしょ。何と言うか、雰囲気が怖いもん」昏は智也に強く言った。


「......何でも無いって、僕はこれから行くところがあるから、じゃあな」智也は扉を閉めようとした。


しかし、閉められなかった。

 昏の足が扉の隙間にはさまっていたのだ。


「昔のセールスマンかよ」智也は思わず呟いた。


「待って、智也、何かあったんでしょ。言ってよ。言ってくれないと、わからないよ!」昏は智也を真っ直ぐ見つめた。


「......わかったよ」

智也はしぶしぶ扉を開いた──




「それで、何があったの?」昏は尋ねた。


智也は今までの経緯を話した。



「............ごめん、辛い話させて......智也の両親のことも、お爺ちゃんの事情もわかったよ。それで、智也はそのグリフィンって奴をどうしたいの?」昏は尋ねた。


「僕は、グリフィンを殺すつもりだ」智也は迷わず言った。


「.......智也は本当にそいつを殺して良いの? 後悔とか、罪悪感とか、何も感じないと思うの?」昏は尋ねた。


「....... あいつは自分の為に平気で他者を弄び、殺す......ただの魔物だよ。だから、僕があいつを殺しても、何も感じるはずは無い」智也は机の下で服を強く掴み、昏の目を見た。


 智也の目には迷いがあった。


 あの時、智也は怒りのままただ殺すことを考えて人の形をしたものを殺した。

しかし、祖父を生かすために行動し、流楽や昏と話しているうちに、自分の怒りが冷めているのを感じてしまっていた。


 あの時の激情が"殺す"ことよりも"生かす"ことに関わるうちに薄らいでいく。自らの家族のかたき、しかしそれに対する殺意は弱まっていく。それではまるで自分が両親のことなんてどうでも良いと思っているようで、さらに嫌な気分になる。


あの時の怒りこそ、殺意こそ、本当に自分が家族のことを思ていた時の感情だったのでは無いかと思えてきてしまう。だからこそ、人であったグリフィンを殺すことに躊躇ためらいそうな自分を押し殺してでも、智也はあの時の感情を燃やしていた。



「.......智也、私としてはね、グリフィンを殺しても良いと思ってる。まあ、出来れば智也の手を汚さないで欲しいとは思うけどね。でもさ、智也が一番迷ってるのはそいつを殺すかどうかじゃ無いと思うんだよね」昏は言った。


「......」智也はそれに無言だった。


「智也は、今すごく怒っていると思う。でも、今の智也はそのグリフィンにやられると思う」昏は言った。


「そんなわけ無いだろ!」智也は椅子から立ち上がって言った。


「いや、絶対やられる。智也はいま自分の怒りのためだけに戦ってるから......智也はいつも誰かの為に戦っていたはずだよ」


「......そんなこと無いよ。僕はいつも、自分の為に戦ってる」智也は弱い声で言った。



「............覚えてる? 小学生の頃、私が年上の子に目も髪も変だって馬鹿にされて泣いてた時、智也は小ちゃい体で『あやまれ!』って年上の子に勇気を出して言ってくれたこと」


「......」


昏は続けた。

「私のお母さんが死んだ時に、智也は一緒に泣いてくれた。この前もそう。私がピンチの時はいつも助けに来てくれたし、庇ってくれた。誰かを守ろうって勇気出して動いている時が、智也は一番かっこいいよ。それは今も昔も変わらない。だから、怒りに任せてその力を使うんじゃなくて、誰かを助ける為に力を使って!」昏は俯く智也の顔を上げさせて真っ直ぐ見つめた。


「......」


「......智也は自分よりも、誰かの為に戦っている時の方が強い。だから、亡くなった二人よりも、生きているお爺ちゃんや、他の人を守る為に力を使って」


 昏は強い意志のこもった目で智也を見つめた。智也はその目にうつる自分の不甲斐ない姿て、やっと気づいた。


「こんな、カッコ悪い目してたんだな」智也は苦笑した。

そして一度目を閉じ、もう一度開いた。


 その目は真っ直ぐに昏を見ていた。


「よし。そうでなくっちゃね!」昏は満足気まんぞくげに笑った。


「ありがとう、昏。お陰で目が覚めた気がする」


「どういたしまして。でも言ったでしょ、こう言う時は頼って欲しいって。だからさ、悩んだ時は私にも話して欲しい」昏は言った。


「......その、悪かった」


「謝れて偉い!」昏は冗談混じりに言った。


「子供扱いするな!」


「ははは、あ、そう言えばこれから朝霧さんと会うんだよね?」昏が尋ねた。


「あ、そうだった、早く行かないと!」


 智也は昏をしり目にゲートをつくった。

「ありがとな昏。またあとで!」


「うん。またね」昏は手を振りかえし、智也はゲートをくぐった──



◇◇◆◆◇◇


 智也が去った中、一人部屋に残された昏は智也の目を思い出していた。

「............あの智也の目、化け物を殺そうとするような、あの人の目と同じだったな......」


 二条 昏の髪色が虹色の光沢を帯びた銀色へと変わり、瞳の色も変化する。右目は赫く染まり、左目は美しい虹色の星空のような瞳へと変わった。


「もし、私が化け物になったら、智也は私を殺してくれるかな?」


 昏はどこか悲し気な表情で足元を見つめた。

その足元は透明なガラスのようで、その奥に紺色こんいろそらに逆さに生える真っ黒な大樹があった──



次回は12/25です。     

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