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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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神の御業

 境内には血痕が広がっていたが、人の気配はしなかった。智也は急いで流楽に電話をした。


電話に出た流楽は先ほどよりも落ち着いてはいたが、どこか不安気な声色だった。


「智也くん、良かった連絡がついて。私とお爺ちゃんは今、深無病院にいるよ。でも、お爺ちゃん、なぜか血が止まらないみたいで......このままだともう長くないって......」そう話す流楽の声からは嗚咽が漏れていた。


「......すぐに行きます」


 智也は祖父の容態を確認するためにゲートを使って病院へ向かった。  




 すぐに病院へ辿り着き、智也は祖父の元へ急いだ。病室の前には俯いた流楽の姿があった。


「流楽さん!」智也は流楽に駆け寄った。


「智也くん、さっきから、何をしてたの? そんな服をボロボロにして......」


「えっ?」智也は自身の服が戦闘により傷ついていたことに初めて気づいた。


「後で話します。それより、爺ちゃんの容態は?」


「......今、集中治療室にいるんだけど、なぜか傷が塞がらなくて、出血が止まらないみたい。もうあと少ししか持たないかもって......」流楽は目に涙を溜めていた。


「.......きっと、まだやれることはあるはずだ」


とは言え、祖父が集中治療室にいる以上は迂闊に魔術は使えない。しかし、幸いにも智也は今、チェテンの回復魔導具を持っている。これを使えばもしかすると祖父を救えるかもしれない。


(どうする......ここじゃ魔術を使えない......爺ちゃんを強引にでもこの病院から連れ出すか? でも、傷が治らないって......)智也が思考を巡らせていると、突如として赫い宝玉が輝き、そこから声が聞こえた。


その声は中性的な声で、聞き覚えのある声だった。そう智慧の魔女の声だ。



「彩島 智也。君は祖父を助けたいか?」魔女は尋ねた。


「もちろん、助けたい!」


「......なら、一時的に私に流楽の体を借りさせて欲しい。君に渡した宝玉がある限り私は外に出られない」と魔女は言った。


「......お前を信用できない。それに、僕は回復魔導具を持っている」智也は言った。


「残念だが、その魔導具では君の祖父の傷は治せない。彼には癒えない傷を負わす呪いがかけられている。その魔導具を使っても無意味ということだ」魔女は言った。


「.......」


智也は迷った。この魔女を彼は信用できなかった。体を乗っ取れる以上、いつ何をしでかすかわからない。


しかし、この魔女が嘘を言っているようには感じない。だとするならば、言う通りにするしか無いのだろうか。


「お願いだ、智也。その宝玉を割ってくれ。必ず、君の祖父を救ってみせる。信じてくれ」魔女は真剣な声で言った。 


 すると、突如として祖父の容態が大幅に悪化したのが分かった。


(もう、迷っている時間は無い......!)智也は決心した。


「信じるぞ、智慧の魔女」智也は宝玉を破壊した。


 その瞬間、座り込んでいた流楽の瞳が赫く変化した。


魔女は立ち上がると智也に近づき告げた。

「力を貸してくれ。彩島 智也」


魔女は手を差し出した。


「わかった」智也はその手を取った。


すると、突然世界が静止した。歩いていた人々の動きが固まったように止まり、世界は静寂に包まれた。


「行くよ」魔女はそう言うと、智也の手を掴んだまま集中治療室の壁に向かって直進した。


しかし、壁にぶつかることは無く、智也たちの体は幽霊のようにその壁をすり抜けた。そして祖父に近づいた魔女は彼に手を当てて神秘的な赫い光を放った。


すると祖父の中にあった何かが黒いモヤとなって外に出され、傷口が塞がれていった。


「これで、もう大丈夫だ」魔女は優しげな表情で言った。


智也は泣きそうな顔になりながらも「ありがとう」と魔女に伝えた。


 二人は壁をすり抜けて集中治療室の外へ出た。その直後、静止していた世界が再び動き始めた。



「あれ、私、なんで立って......って、どうして手を繋いでるの!」流楽はこの状況に驚いていた。


 しかし智也は何も言わず、目から涙を流して流楽の方を向いた。


「......大丈夫。きっと、お爺ちゃんは助かるよ」


流楽が智也を励まそうとした時、ナースさんが二人に駆け寄った。


「お祖父様が、奇跡的に回復しました!」ナースさんも信じられないと言った気持ちでそれを伝えているのが見てわかった。


「お爺ちゃんが......!」流楽は内心助からないと思っていた祖父が回復したと言うことを聞いて嬉し涙を流した。 


「......私、もう諦めかけてたけど、本当に、奇跡ってあるんだね」流楽は大粒の涙を流しながら嬉しそうに智也に語りかけた。


「......爺ちゃんが助かって、本当に、良かった......!」


二人は嬉し涙を流した。今までの不安な感情を押し流すように涙がとめどなく溢れた。


 そして、彼らの祖父は目を覚ました──


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