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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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術式崩壊

 智也はグリフィンに対して言った。

「どうして、僕の両親を殺した?」


「本当は、貴方が欲しかったんですよ。ですが、邪魔が入りまして、残念ながら貴方のご両親を連れ去ることしか出来ませんでした」


「......」智也はグリフィンを静かに睨んだ。


「私、魔物という生命が大好きでして、特に人間が魔物に変わるのが大好きなのです。知っていますか? 人間は魔力量や精神の力が強いほどより強大な魔物になるのです。だから貴方が魔物と化した姿を見たかったのですが、残念ながら貴方の"祖父"に邪魔をされてしまったのですよ......」


(爺ちゃんが......!)


「......もしかして、お前、爺ちゃんにまで危害を加えたんじゃ無いだろうな!」智也は叫んだ。


「もちろん、真っ先に狙わせてもらいました。また邪魔に入られては困りますからね。あの方、以前は素晴らしく強かったですが、老いとは残酷なもので、ここ数年でだいぶ弱ってしまったようですね。非常に簡単に傷を負わせられました。おそらく、あと一時間もすれば失血死すると思いますよ」グリフィンは淡々と告げた。


 黒戸神社は病院からかなり遠い場所にある。加えて流楽も軽くパニックになっていた。このままだと、本当に......


「......」


智也ははらわたが煮えくり返る思いだった。自身の両親を殺され、守ってくれた祖父まで殺されかけている。怒りが湧かないはずがない。


 自分の守りたい日常、その中にいるかけがえのない家族を、こいつは容赦なく殺そうとしている。絶対に、許せない。許さない。殺してやる。

そんな強い感情を抱いた智也は殺意を露わにし、グリフィンに向かって魔術陣を展開した。


蒼星そうせいしずく


 智也は周辺被害、魔術の隠蔽、そんなことは考えず、あの怪物を一撃でほおむった必殺の魔術を人間の皮を被った化け物に向けて放つつもりなのだ。



「おお、これが前兆の魔力量と魔力特性による魔術! 素晴らしい! .......ですが、我々も何の対策も無く来たわけではないのですよ」グリフィンがそう言った次の瞬間だった。


──「術式崩壊マジック・ブレイク


 智也が展開した魔術陣が崩壊し、蒼い魔力が拡散して放出された。

『蒼星の雫』は発動する前に術式を破壊されて放つことが出来なかったのだ。


(どう言うことだ......!?)


すると、グリフィンの背後から一人の人物が現れた。

「グリフィン、これでいいんじゃな?」


「素晴らしいですよ、ミスティファさん!」


 ミスティファと呼ばれた人物は金色の髪に緋色の目をした人物で、肌はシルクのように白い。仮面を被っていて顔は見えないが、声の高さから女性だとわかった。


彼女は手に黒い包帯を巻いており、ローブを羽織っている。



「初めまして、前兆よ。わたしは深淵教団大司教【炎の目(フレイムアイ)】ミスティファ=ドーム。ここで貴方を始末させてもらうわ」


 しかし、頭に血が昇っている智也はお構いなしにグリフィンの元へ走り出した。


「ほお、この状況でなおわたくしに向かってくるとは素晴らしい! では、私も誠意を見せなければ!」


 突如として、グリフィンの手の中に魔術陣の刻まれた小さな石が現れ、男がそれに魔力を込めると、中から大きな黒い影が飛び出した。


 その黒い影は智也の前に立ち塞がるように現れた。その影の正体は巨大なトカゲの魔物だった。


そのトカゲは全身を青い鱗に覆われ、背や尾には棘がいくつもついており、時折り口から青い霧のようなものを吐いている。


「この青トカゲくんは最近新しく手に入れた子でしてね、たくさんの魔物たちの中からりすぐった一体なんですよ!」


「そうか......」


 青トカゲの巨体が進路を塞いでいるためグリフィンに攻撃するのが難しい。そのうえ、ミスティファという女は浮遊した状態で常にこちらを監視して来ている。


昔、智也は朝霧に聞いたことがあった。

術式崩壊マジック・ブレイク』という魔術は視認できる範囲でかつ、相手の使っている術式を理解できる時に発動が可能な魔術で、発動されると魔術陣が崩壊して発動が出来なくなる。

言ってみれば、万事休すの状態だ。


「だから、なんだ」智也は呟いた。


「さあ! 青トカゲくん、彼を倒すのです!」グリフィンがそう言うと、青トカゲはその巨体を動かし、前足にある爪を振り下ろした。


智也はそれを魔術で上昇している身体能力で回避した。


(身体強化魔術は体の内部で使うから『術式崩壊』で壊せないのか。なら、この戦い、勝機はある!)


 智也は直情的な動きで青トカゲに『流刃』を放とうとするが、直前に『術式崩壊』で防がれた。


 青トカゲは尻尾で周囲を薙ぎ払い、智也は高速で接近する尾に対して『流盾』を発動させて防ごうとするが、先に女の魔術によって発動を防がれ、尾が直撃した。


しかし、智也は無傷だった。彼は防御魔術と流盾の同時発動させていたのだ。そして、これによって智也は女の魔術の弱点に気づいた。


(朝霧さんにこの魔術について聞いた時、あの人は三つの魔術を同時に崩壊できると言っていたから、警戒していた。でも、あの女は"一つ"の魔術しか発動を阻止できない。それが奴の弱点だ!)


 魔術の同時発動というのは難しいスキルである。複数のことを同時に正確に行うのはかなり難しいことであり、それが出来ずに挫折する魔術師も多い。


しかし智也は魔力特性を使わない魔術ならば二つまで同時に発動できる。


「まずは、お前からだ!」智也は足に魔力を溜めて飛び上がった。そして、空を駆けるように智也は上へと昇っていく。


(本当に、魔術無しで飛べるとは......しかし、それも想定済みだ!)女の近くにはあの透明な触手の化け物が待機していたのだ。


智也はそれに気づいていないのか、ミスティファの元まで真っ直ぐ駆け上がった。


 ミスティファは『術式崩壊』で智也の防御魔術を破壊し、触手の化け物は智也の背後から槍のような触手を伸ばして攻撃した。


その瞬間、智也は足に魔力を溜めて自身の軌道をずらした。それにより透明な触手は空を切った。


「師匠に魔力探知は怠るなって教わっているんだよ!」智也は再び空中を蹴ってミスティファに向かって突進した。


「朝霧 黎......あの女に......」ミスティファは緋色の魔術陣を展開して火球を放った。


 智也は蒼い光を纏わせた拳で火球を殴ってかき消した。そしてそのままミスティファに向かって拳を叩き込んだ。


 その拳によってミスティファは意識を失い地面に向かって落ちていった。しかし下にいた透明な化け物がそれを掴んで助けた。


 智也は地上にいるグリフィンに向けて『不可視の衝撃』を放つが、青トカゲの巨体がそれを防いだ。そして智也は地上に降り立ち、再びグリフィンと対峙たいじした──


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