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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第4章 忘却の彼方
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元凶

 不気味な劇場、そこに響く謎の声は自らを【音の神 リディアロス】と名乗った。


「音の神......? どうして神が魔術連の本部に!」智也は慌てて席を立った。


「落ち着いて智也くん。この神は人間に害をなさないという契約をしているから安全だよ」と朝霧が落ち着いた声で言った。


「なら、事前に言ってくれても......」智也は言った。


「事前に言わなかったのは契約内容に試練を超えていないものにこの神について伝えないというものがあるからなんだ」


「......わかりました。でも、この神は信用できるんですか?」智也は朝霧に尋ねた。


「信用はしていない。ただ、情報源としては一番有益な存在ではある。事実この神の知識で魔術連は何度も助けられているからね」と朝霧が言った。


「私、信用されていないようですねー、まあ貴方たちが私を不審に思うのは月の神の一件からも当然と言えますが、私は邪神などでは無く、友好的な神だと思っていただきたい」と音の神が言った。


「......もうこの話はいいだろう。早速、本題に入ろうじゃないか」と朝霧が言った。


 智也も切り替えて席に座った。すると、劇場の中にあった白い人型の霊魂のようなものが実体化して十数人の人間が現れた。


全員魔術連のバッジをつけており、威厳のあるたたずまいで只者ただものでは無いことが一目でわかった。


そして劇場はいつの間にか円卓のような形に変化して、会議が始まった。


司会役のようなメガネの男が立ち上がって言った。

「これより、魔術連の幹部会議を始めさせていただきます。今回の議題は二つ。月の神事件の報告、魔物の異常発生の原因についてです」


 智也は会議の内容について聞くと真剣な面持ちになった。


「まず月の神事件の報告を朝霧さん、よろしくお願いします」メガネの人物が言うと、朝霧は頷いた後に立ち上がった。


「今回の事件は月の神イロウ=ルナ、及びその子供であるウィンダー=ジェーンによって起こされ、失踪者として亜様村の住民三十三名、魔術連の人間が十七名が大まかな被害です。また、魔力層に穴を開ける魔導具『月光鏡』も回収済みです。その発動に必要な霊媒『亜様』は全六体のうち五体を回収、最後の一体はおそらく月の神によって吸収されたと思われます」


 その後も朝霧は説明を続いたが、智也が不可解に思っているのは智慧の魔女である。


今回の事件において裏で暗躍をしていたようだが、まるで何がしたいのかわからない。それどころかなんの組織にも属していない一個人であろうその人物がどうやって月の神と接触出来たのか......


 他にも月の神が言っていた"あの方"と呼ばれる存在についてもわかっていない。あの方と言うぐらいなのだから月の神、いや星蝕の神よりも上位の存在とは一体何なのか......


 そうこう考えているうちに会議は次の議題へ進んだ。


「では第二の議題、魔物の大量発生についてです。まずは原因について、ファング様ご説明お願いします」メガネの男がそう言うと、顔に爪で引っ掻かれたような傷のある渋顔の男が立ち上がった。



「......単刀直入に申しますと、魔物の大量発生の原因は人為的に設置された"魔石"によるものだと判明した」


 智也は朝霧にこっそりと尋ねた。

 「魔石って何ですか?」


「魔石というのは魔力を蓄えた結晶だよ。大体手のひらサイズで三十人くらいの魔力量がある」


「そんなものが......」


 ファングの説明によれば、世界各地の人里に近い場所で巨大な魔石が人為的に設置され、その魔石から放たれる魔力により、周辺の生物に突然変異が起こり魔物が大量発生したのだ。


「調査の結果、この魔物の大量発生を引き起こした者たちは深淵教団オキュラス・カルト。深淵の神オキュラスを信仰する団体だ」


 その言葉を聞いた瞬間、場の空気がざわつき始めた。



「あの教団か......もしやとは思っていたが......」と朝霧がつぶやいた。


「朝霧さん、深淵教団オキュラス・カルトってどんな組織なんですか?」智也は朝霧に尋ねた。


「深淵教団は信者数が千人ほどの大規模なカルトで、構成員の半分が魔術師。この教団の教義が『混乱と破滅をもたらせば神が祝福を与える』といったものだから魔術連も危険視している」


「混乱と破滅......間違いなく危ないカルトですね......」


「その通りだよ。これまでにも一般人の誘拐や魔術による人体実験、百年ほど前には大量虐殺も行っている。それに......いや、なんでも無い」


朝霧は何か言いかけたがやめた。その表情からは僅かに"怒り"が感じられた。




「魔石の破壊はあらかた完了しましたが、未だ魔物が残存しているため、魔術連の者たちには引き続き魔物の駆除をしてもらいます。また、魔物による人的被害は今のところありませんが、ネット上に魔物と思わしき画像が投稿されており処理にあたっています」



(やっぱりネット社会の現代では魔術や魔物の隠蔽は難しいんだな)と智也は感じた。


「魔物の駆除はより早期に片をつけるため、大仕事を終えたばかりでしょうが、朝霧様にも協力をお願いします」メガネの男は礼儀正しく朝霧に言った。


朝霧は「もちろんだ」とそれを了承した。




「では最終議題、音の神の契約継承についてです」とメガネの男が言った。


 音の神は魔術連人間と契約をしているため友好的だが、契約をしている人物が死ぬとその契約も無くなり、魔術連の弱体化を招くことになる。


 そして音の神は契約者を一人だけと制限しているため、魔術連は代替わりで契約を維持している。その契約の継承をする人物をこの会議で決めるのだ。


智也にはその内容が聞こえないよう音の神の力によって別の場所に移された。


「一体、僕は何のために呼ばれたんだ?」智也は一人つぶやいた。


「おそらく、私と接触させるために朝霧連れてきたのでしょう」と頭の中に声が響いた。


「音の神......聞きたいことがあるんですけど、質問とか、してもいいですか?」


「一つだけなら、構いませんよ」


「なら遠慮なく......あなたは第三の厄災で具体的に何が起こるのか知っていますか?」


「知りませんよ。知っていたら魔術連の人間に教えていますよ」


「......だったら、深淵の神オキュラスについて教えてくれませんか?」


 朝霧から聞いた姿を見ると死ぬと言われている三柱の神。そのうちのオキュラスは深淵教団というカルトが神の召喚を行おうとしても不思議では無い。だからこそ、智也はこの神について尋ねたのだ。


「くくく、なるほど、その神について尋ねますか......そうですね、端的に表すなら"邪悪"の一言でしょうか。間違いなくあの神は最も人間を害している神だと言えます」音の神は笑っているようだった。


「......邪悪って、どう言うことですか?」


「彼の神は人間を狂気と混沌の世界へと引きずりこむ。知らず知らずのうちにね。そうやって出来たのが深淵教団。深淵に魅入られた憐れな者たちの組織ですよ」


「もし、深淵の神がこの星に召喚されたら、人類は滅びると思いますか?」智也は尋ねた。


音の神リディアロスは言った。

「......さあ? どうでしょうね。私にもわかりません。ですが、一つ助言をするならば、間違いなく深淵の神が【第三の厄災】の"元凶"ですよ」


投稿頻度が落ちすぎてヤバいですね...次は今日の十時です。

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