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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第3章 狂気の月と蒼い星
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蒼星の雫

 満月はいっそう輝きを増し、怪物たちと二人の人間は対峙たいじした。 


 怪物とウィンダーが示し合わせたように同時に動き出し、智也と宇佐寺に襲いかかった。智也は怪物の爪による攻撃を避け、宇佐寺はウィンダーの刀による攻撃を折れた刀身で受け流した。



 智也は怪物に向けてゼロ距離の『不可視の衝撃』を浴びせ、その直後そこに二度の『流刃』を喰らわせた。


 怪物の体にビビが入ったが、核が露出するほどでは無かった。


(今のこいつには、僕の攻撃がほとんど通用しない。おそらく結界の破壊は火力が足らないだろう。でも、一つだけ方法がある......!)


その方法とは、智也の魔力特性を魔術にのせることである。


しかし、彼は今までそれに成功したことがなかった。この油断の隙もない状況の中、彼は成功したことの無い魔術を成功させなければならないのだ。



 智也は怪物を『魔力糸』で縛った。少しの間ではあるものの怪物の動きが止まり、智也はその間に魔力特性を込めた魔術を発動した。   



 しかし、発動直前で魔術陣が砕け、小さな爆発が起こった。


「......? なんだ、このしょぼい攻撃魔術は?」

幸いなことに、怪物は魔術に対しての知識がほとんど無かったため智也の目論見が見抜かれることは無かった。



(まだ圧縮が足りていない。もっと、もっとだ!)


智也は再び魔術を発動した──


◇◇◆◆◇◇


 ウィンダーは金色の新月刀を振り下ろして宇佐寺に斬撃を飛ばした。


金色の斬撃が地面を断ちながら宇佐寺に迫り、宇佐寺のすぐ横を掠めた。


(この金色の魔力、俺の勘が言っている。数回喰らえば即死だ)宇佐寺はそう感じ取っていた。


実際、それは正しかった。金色の魔力は『狂気ルナティック』の神性を持つため、何度も傷を負えば精神に異常をきたして死ぬのだ。



宇佐寺は考えた。

(刀はやべえが、ウィンダー自体はだいぶ弱くなっている。さっきまでの速度も魔力も無い。ただ、おそらく今のあいつには核が無い。智也が本体を打ち倒さない限り、こいつは死なない......!)



 ウィンダーは金色の斬撃を放ち続け、宇佐寺は全神経を使って斬撃を受け流し続けた。


「なあ、ウィンダー......お前には感情ってもんをほとんど感じない。なぜだ?」宇佐寺は尋ねた。


「......」ウィンダーは何も言わなかった。


 

 ウィンダーは宇佐寺の言葉に、少しばかり過去を思い出した。


彼は産まれてからまともな人間と会わなかった。周りにいるのは月の神の狂信者ばかりで、母である神は人間の感情が理解できない化け物だった。


神は感情を嫌った。故に彼は何も感じないように生きた。母の命令をこなすただの機械のように、人間を殺しても、無数の傷を負っても、感情を押し殺して生きた。


しかし、彼は後悔していない。それがウィンダーという存在の宿命なのだから──



 ウィンダーは強烈な一撃を放った。それはまるで感情のたかぶりをのせるかのようだった。


「ボクは、神のカケラ......ただの一端、不要なものは捨て去った」ウィンダーは言った。


「......お前は、そう言う生き方しか出来ねえんだな。だったら、解放してやる」宇佐寺は刀を握る力を強めた。


◇◇◆◆◇◇


智也は手に魔術陣を作り出し、それに圧縮した魔力を込め続けていた。



 怪物は全身から触手を出し、十数本はあろう触手が智也の周囲を覆い尽くす勢いで迫り来た。


 智也はそれを避け、一定の距離を保ち続けた。



 怪物は智也に接近し鋭いかぎ爪を振り回した。斬撃が周囲に爪痕をつくりだしていった。



 突如、怪物の腹が割れ中からモンゴリアンデスワームのような口が現れた。その口に智也は呑み込まれかけたが圧縮した魔力の一部を放出することで自らを吹き飛ばし避けた。


(あの女と似たようなことを......)怪物は怒った。


 怪物は空中へ飛び、頭上から金色の魔力と白い魔力の矢を放った。


月光の矢(ルナ・アローレイン)


二十を越える金と白の矢が智也に降り注いだ。どれにあたっても即死するだろう。


(避けられない......!)智也は周囲一体に放たれた矢を避けるのは不可能だと直感的に感じた。


智也は鮮烈に「死」を感じた。


 しかし、この危機的状況が智也を急成長させた。



智也は足元に魔力をためた。足が蒼い魔力で覆われ、それを一気に放出した。その勢いによって智也は宙を跳び、空中を駆けるように跳び上がっていった。


(この魔力の矢は着弾しない限り攻撃力は無い。だから、矢が当たらない空中で、その間を掻い潜れば、効かない!)智也は空中に逃げることで月光の矢を避けた。


「魔術無しで、空を飛ぶだと? ありえないだろ!」怪物は声を荒げた。


怪物は智也目掛けて結晶の槍を飛ばして迎撃しようとした。しかし、智也はそれを避けながら空中にいる怪物に近づいてくる。


そして、智也は怪物の元まで辿り着き、糸で自らの体と繋いだ。


 極限の集中、そして不可能を可能にするという意思が、その魔術を完成させた。


蒼星の雫(そうせいのしずく)


 その刹那、圧縮された魔力が蒼い輝きを放ちながら放出された。その輝きは満月の光よりもまばゆく、まるで蒼い太陽のようであった。


空中で蒼い魔力が爆ぜ、地上にいる宇佐寺やウィンダー、亜様村にいる者たちすらもそれを見上げた。


(何という高密度の魔力だ、人間にこれほどの力が......!)


 怪物は迫り来る蒼い魔力をイクリプスで吸収しようとした。


だが、イクリプスも全てを吸収できるわけでは無い。吸収できる限界が存在する。


智也の魔術の持つエネルギーを怪物では吸収することができず、イクリプスは弾かれた。



 怪物の巨体と蒼い雫が衝突し、雫は圧縮された分、強大な力となって弾けた。


怪物の体は一瞬にして砕け散り、怪物の核を結界もろとも破壊した。蒼い魔力が怪物を包み込み、熱と光が襲いかかる。


閃光と轟音の後、その跡には体の大半を失った怪物の姿があった。  


消滅する寸前、怪物は言った。

「......まさか、この私が人間に二度も敗北するとはな......だが、私は月の神、いつでもこの星を狙っているぞ」


「お前が再びこの星を狙おうと、その時もまた、お前は人間に阻まれる。月の神......いや月の侵蝕者、お前の負けだ」智也は怪物に告げた。


「......それまで滅びるなよ、下等種かとうしゅ............」


 蒼色の魔力が散り、輝く粒子が星のように降り注いだ。怪物は白い光となって消滅し、月の神の脅威は消え去った──


読んでいただきありがとうございます。

全話三人称に変更しましたが、ご迷惑おかけしてすいません。誤字脱字の無い限りもう改稿をすることは無いと思います。


第三章はあと少しで終わりとなります。

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