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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第3章 狂気の月と蒼い星
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悪夢の月

 ウィンダーの姿が変貌していく。


体が二回りほど大きくなり、背中には結晶のつばさと数本の触手が生え、全身を結晶のウロコに覆われた化け物の姿となった。


額には月のような第三の眼があり、三つの金色の眼が智也を見つめた。その姿はまるで悪夢に出てくる怪物のようだった。


 怪物と化したウィンダーは雄叫びをあげ、智也に突進した。


その速度は瞬きより速く、智也は突進をもろに喰らった。左腕を掴まれ、掴まれた箇所に鋭い針のような結晶が食い込み智也の左腕をえぐった。


 智也が突進の勢いのまま大木に叩きつけられそうになった時、突然体が宙に浮いた。


怪物は一瞬にして智也と共に地上を離れた。


 満月に少し近づき、怪物はすぐに急降下を始めた。急降下する先には大きな岩があり、怪物は急降下する勢いそのまま智也を岩に向かって投げた。


 智也は尋常ではないスピードで岩と衝突し、防御魔術が一撃で壊れかけた。そこに畳み掛けるようにウィンダーは上空から結晶の柱を飛ばした。


智也は『流盾』でそれを防いだが、その威力は相殺そうさいしきれず流盾は破壊され、智也は当たる寸前で横に避けた。


(今のを喰らっていたら、潰れていたな......)智也は息を切らした。


 ウィンダーは上空から『白の矢』を三発放ち、白い流れ星のような魔術が放たれた。


智也は強化魔術をフル稼働させ白の矢の射程範囲外へ逃げようとするも、わずかに遅れて右足が結晶に呑み込まれた。


 右足が結晶によって固められ、智也は動けなくなった。


その時、怪物が地上に降り立ち『イクリプス』を発動させた。


空気が揺れ、智也の全身に悪寒が走った。


 その刹那、智也は足元の結晶を蒼い魔力で殴って粉砕して範囲外へと逃げた。


智也は背中の辺りを少し削られたが、何とか生存した。


(一瞬も油断出来ない......気を抜けば死ぬ......)智也は怪物の方を見た。


 怪物は手のかぎ爪を伸ばし『流刃』を使って接近戦を仕掛けた。


斬撃が周囲を切り裂き、木々が根本から折れていく。


(木がどんどん無くなって、上空から身を隠す場所が無くなる......!)智也は攻撃を避けつつ蒼い魔力で怪物に打撃を加えた。


しかし、ヒビすら入らなかった。怪物は攻撃後のスキをついて背中の触手を突き刺した。


触手の先端の結晶が智也の体の中で枝分かれし、結晶が血を吸い取るように奪っていく。


智也はどうにか逃れようと体を動かすが、次第に力が抜けていき、その抵抗も弱まっていく。


「あの人間の仲間であるお前らを殺せば、あいつはどんな顔をするかな? ふふふ」


「お前、ウィンダーじゃ無いだろ?」智也は言った。


「そうだとも。私は月《イロウ=ルナ》の意思。ウィンダーは我が子だからな、人格を乗っ取るのも容易い」怪物は言った。


「......なるほど、お前は朝霧さんに負けたんだな。だから僕たちを殺して朝霧さんに復讐しようとしている。そうだろ」智也は言った。


 怪物は黙った。


(僕も、宇佐寺さんもだいぶ疲弊している。だけど、朝霧さんが不可能なことをやったって言うなら、僕だってそうするしか無い......!)


「月の神、僕はお前に会いたかった。いろんな人の人生を奪い、尊厳を、命を弄ぶ......お前は神なんかじゃ無い。ただの怪物だ!」


「どいつもこいつも、人間というのはおごりやがる。お前らに面倒な感情なんていらない。人形のように動いて美しいまま死ねばいい」それがお前ら下等種族の相応ふさわしい生き方だ!」怪物は智也の首をねた。


 そう思っていた。しかし、先に壊れたのは怪物の爪のほうだった。


 度重なる攻撃をしたことに加え、智也は攻撃される際、首に魔力を集中させてそれを防いだことにより怪物の爪は破壊されたのだ。



「そろそろ、お前との決着もつけてやる」智也はそう言うと、体が裂けるのも気にせず、触手を引きちぎった。


「バカか、そんなことをすれば無事では済まないはずだ」怪物は智也の行動に驚いた。


「まだ回復用のの魔導具が残っている。お前を倒した後に使えば問題ない」智也は言った。


「正気では無いな。負傷した状態で私に勝とうとは」


「勝てるから、言っているんだ」


「......ならばいいだろう。慢心を捨て、お前を確実に殺せることにしよう」怪物の周囲に一体の結晶の鎧が現れた。手には金色の新月刀を持っており、内側から黒い影がにじみ出ている。


「ウィンダー、お前はその姿で戦え。私が援護する」怪物は鎧に言った。


「はい、母さん」鎧が喋り、体を動かした。


「二体一、お前が勝てるかな?」怪物は笑った。


その時、もう一つ声がした。

「いや、ニ対ニだ」


その声は宇佐寺であった。森の奥から宇佐寺がこちらへと歩いて来ていた。


「宇佐寺さん! 怪我は平気なんですか?」


「大丈夫だ。しっかりと治ったぜ」宇佐寺は貫かれた腹を見せたが、そこに傷跡はなかった。隠しているわけでも無く、完全に治っているのだ。



「お前は任せろって言ってくれたがな、若いもんに任せっきりで寝てられるかよ。どうせ老いた身、こき使え!」





「......さあ、月の神、長い夜に最後の決着をつけよう」智也は月の神に告げた──


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