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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第3章 狂気の月と蒼い星
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月の石3

[日善タワー トップデッキ]


 智也たちが亜様村へ向かってから十分が経過した。


月の神が言った。

「おや、時間のようだ。魔導具を起動させる時間だね」


「そうはさせない」朝霧はそう言うと十分の間に準備しておいた魔術を発動させた。


 突然、魔導具に触れようとした月の神の動きが止まった。

「おや、動けないね」


「拘束魔術、『亡者もうじゃくさり』その鎖は"人間"を殺すのに躊躇ためらいのない者ほど効果を発揮する」朝霧は言った。


「なるほど、私のような人外に有効な魔術ということか......面白い。こんな変わった魔術は初めてだよ。他にはどんなものを知っているんだい?」と月の神は余裕そうに言った。


「答える義理は無い。さあ、これで終わりだ」


朝霧は魔術陣の刻まれた石板を取り出し、言葉を唱えた。その発音は魔術師ですら到底理解できないものであった。


「※※※※※※※※」


(その発音......もしや......)月の神は何かに気づいたようだが、黙ってニヤニヤした笑みを浮かべたままだった。


 朝霧がその言葉を唱え終わると、石板に刻まれている魔術陣が赫い輝きを放ち、月の神は石板に引きずり込まれるように引っ張られた。



そして、月の神の肉体はスパゲッティ現象のように引き伸ばされ、石板の中へと入った。


 朝霧は大きく息を切らして石板を手に持ったまま膝をついた。


「どうやら、成功したみたいだ」


 朝霧の使った魔術は『封印魔術』と呼ばれる古代魔術の一種であり、現代の魔術に比べ大きな力を発揮するが、精神を大きく削る諸刃の剣である。


 そして、封印魔術は物体に魔術陣を刻み、その物体に対象を封じ込めるものであり、格上相手にも通用する大昔の魔術師の使った最終手段だ。



 しかし、朝霧はここで違和感に気づいた。


古代魔術の代償であるはずの"精神的負荷"が発生していないのだ。そして、朝霧はその原因にも気づいた。



 空気が大きく揺れた。朝霧は全身の産毛が逆立つのを感じ、すぐさまその場を離れた......


  

 しかしながら、それはほんの少し遅かった。


突如として朝霧の左腕が消滅した。それはまるで"空間ごと削られた"ようであった。


「片腕をやられるとは......油断したよ」朝霧は言った。


 朝霧の目の前には月の神がいた。


 封印魔術は対象の封印が失敗した場合、負荷が発生しないという特性がある。故に朝霧は古代魔術の負荷を受けなかったことに違和感を感じたのだ。



「封印されたらどうなるのか気になったのだけど、思ったよりも簡単に出られてしまったよ。その発音、古代魔術というやつだよね。五百年前くらいには途絶えたと思っていたけど、まだ使える人物がいるとは......」




 突然、月の神が左腕を空に掲げた。すると、左腕の肌の色だけが僅かに変わった。


「君の左腕の形......いいね。気に入ったよ」月の神は無邪気に笑った。


朝霧はその行動に僅かに動揺したが、平静を保った。

「......悪趣味だな」



「ふふ、私は人間の"形"が好きなんだ。だからもっとたくさんの人間を吸収したいのだけどね......それはあの方が許さないからさ」月の神は残念そうに言った。


(さっきから言っているあの方とは一体なんだ?)朝霧は疑問を感じたがそんなことを考える暇は無いので考えるのをやめた。


 

月の神は言った。

「......さて、頼みの綱だった封印魔術は効かなかったみたいだけど、これからどうするんだい?」


(......勝ち筋を探すなら、一つだけ、ほんの僅かな可能性がある)朝霧は考えた。



朝霧は神に言った。

「"神は殺せない"だが、月の神よ、お前は複製体が時間を経て神へと昇華する。だからこそ、一つ仮説を立てた」



 朝霧は続ける。

「複製体が殺せるのなら、元は複製体である月の神、もとい星蝕の神のカケラであるお前ならば、"殺せる"違うか?」



月の神はその仮説を聞いて微笑んだ。

「ふふ、その通りだよ。本体ではなく分体の私ならば殺すことが出来る。けれど、分体とは言え私は神格、人間ごときが殺せるとは思わないことだ」月の神の瞳から、冷たい恐怖が押し寄せた。



 朝霧は震える体を抑えて深く息をした。

その時恐怖を一時忘れ【眼】が閉じた。

「......さあ、神殺しといこうか!」


月の神は言った。

「一人で逃げればまだ命は助かったかもしれないのに......ふふ、なら君の形、全て奪わせてもらうよ」──


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