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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第1章 禁忌への入り口
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日常と非日常

 朝霧との話が終わり、智也は家に帰るために夜道を歩いていた。


その時、前方から白いスーツを着た胸元にローマ数字の「Ⅴ」と刻まれたバッジを持つ男が歩いて来た。


智也はあまり見慣れない格好をした男をチラリと見た。


 しかし何事もなく男は通り過ぎた。


そして、智也はそのまま歩いて行った。一瞬、男から妙な"気配"がしたが気のせいだったのだろうか......?




一方、白スーツの男は智也とすれ違った後、立ち止まって振り返った。

「あの魔力量......間違いなく"前兆ぜんちょう"......神殺しの短剣を創れるかもしれない......」


男は再び歩き始めた。




 智也は家に入り、電気をつけた。

「ただいま」と言うが返事は無い。


リビングに向かい、テレビをつけて夕食の準備を始めることにした。

といっても、今から調理するのは面倒なので適当な冷凍食品を温めて食べるだけだが......


 そして智也が冷凍食品を取り出そうとした時に玄関のチャイムがなった。


「......誰だ?」


 智也はすぐに玄関に向かい扉を開けた。目の前には幼馴染のこんがいた。


智也はなぜか目がしらが熱くなった。彼はとっさに横を向いた。


「智也! 昨日の夜、家に帰ってないみたいだったから心配したんだよ!」昏は少し怒った口調で言った。


「悪い、色々あったんだよ」


「へえ......」昏はいぶかしんだ目でこちらを見つめる。


「まあいいじゃねえかそんなことは。寒いだろ、早く家に帰れ」


「もう。わかったよー、でも夜遊びはダメだよ!」


「夜遊びはしてないから心配すんなって。じゃあな」智也は急いで昏を帰らせて部屋の椅子に腰掛けた。


 目からは涙が出てきていた。


 未来で死んだであろう親友に再び会えたことが彼にとってたまらなく嬉しいことだった。



「今度は、絶対救ってみせる」智也は呟いた。



 ふと時計を見てみると時刻じこくは二十一時になっていて、彼は夕食を食べるのをやめ、ベットの上でゆっくりと今後のことを考えることにした。



 まず彼のやるべきことは一年半後に起こる厄災の正体を知らなければならない。そして、それを退しりぞけるために魔術も学んでおく必要もある。


 未来での朝霧の口ぶりからこの町で何かしらの"神"が現れ、それが原因で世界が滅ぶと考えられる。


加えて、見たら死ぬと言う話だったため、おそらくだが神が現れた時点で勝ち目はほぼ無いだろう。つまりは事前に阻止しなければならない。


しかしながら手がかりはほとんど無いに等しい。智也は大きなため息をついた。


(こんなことなら、もっと過去にタイムリープするべきだった。いや、でもそれだと......)色々考えたが、やはり一年半前がベストだったと考え直し、それについて考えるのをやめた。


「.....はあ、どうせなら中二の夏頃なつごろに戻りたかったな......」


 もうどうにもならないとはわかっているが、それでも、もう一度だけ"二人の"顔を見たかった──


◇◇◆◆◇◇


中学二年の夏休み、智也の両親は突然とつぜん行方不明ゆくえふめいになった。あの時のことを、彼は今でも夢に見る。


 朝起きても二人がおらず、家中探しても見当たらなかった。


【眼】はずっとニタニタと笑い続けていていて、不安な思いで胸がいっぱいになった。


 しばらくして彼の両親は行方不明ということになった。


 本当に突然で、その時は状況が飲み込めていないせいか涙も出なかった。昏と紗由理とは昔から付き合いがあったので、両親がいなくなった後にとても世話になった。


 二人からは家事を教わり、昏の存在で救われることも多かった。


 彼の祖父も時々家まで来てくれるようになり、それまでは少し疎遠だったが仲が良くなった。


しかし、両親がいないという喪失感と悲しみはなかなかに癒えないもので、智也は両親の写真を見ては涙を流すこともあった。


 あの時に戻って両親の未来を変えたのなら、それはもはや智也の知っている未来ではなくなって、本来の人間関係が変わってしまうのだろう。


もし智也が中学の頃に戻れたとしても、今の人間関係は築けないだろうからタイムリープする時間はこれで良いと言えるのかもしれない。



 そうこう考えているうちに、時刻は深夜十二時過ぎとなり、智也は眠ることにした。


◇◇◆◆◇◇


──朝早く起き、智也は早速出かける準備を始めた。今日は探偵事務所に行って魔術を一つ教わる予定なのだ。


 探偵事務所に着き、チャイムを鳴らした。


「おはようございます」


 しかし、朝霧が出てくる様子は無く、扉が開いていたので智也は中へ入ることにした。


 事務所の中に入り「朝霧さん、いますか?」と言ってみたが応える声は無く、奥の扉をノックしてから開け、奥を覗いてみた。



「え、めっちゃ散らかってる......」


 その部屋は足の踏み場もないほど紙が散乱しており、机の上には本が山積みになっていて部屋にある本棚の意味が無いのではないかと感じるほどだった。


 そして、よく見るとソファの上で朝霧がうつ伏せで眠っていた。


(えっ、寝てるの? 朝早く来てと言っていたのに?)と彼は内心ないしん思った。


 

「朝霧さん、起きてください!」大きめの声で言うと朝霧がハッと目を覚まして飛び起きた。


「あれ、もうこんな時間! えっ智也くん来てたの! ごめんちょっと待って......」


 朝霧は慌ててドタバタしていると、ソファの下に転がり落ち、机の上にあった山積みの本がドタバタと朝霧に落ちた。


「うわ、ちょっ、ヘルプ! ヘルプ頼むよ智也くん!」朝霧は本の下敷きになりつつ叫んだ。


「わ、わかりました!」踏み場のない紙の絨毯じゅうたんをどうにか乗り越え智也は朝霧を引っ張り出した。



「いや〜、ごめんね智也くん。本を見てたらいつの間にか朝になっていたよ」



(朝霧さんって思ったよりだらしない人なのかな? 初めの印象とのギャップが凄い......)


「いえ、これくらいお安いご用です......でも、部屋は片付けたほうがいいと思いますよ......」智也は言った。


「いや〜、よく読むから片付ける必要が無いかな〜って......まあ、明日片付けるよ」朝霧は笑って言った。


(これ、片付けないやつだ)と智也は思った。




 そんなこんなで、智也は魔術を教えてもらうことになった──


「それじゃあ切り替えて魔術について教えていきますか!」と朝霧が元気よく言った。



「と言うことで、魔術を使う為にまずやることがあってね、おでこ出してくれる?」と朝霧が言ったので智也はひたいにかかっていた髪を上にあげた。


 すると朝霧は人差し指を智也の額に当て、よく分からない言葉をつぶやいた。その瞬間、指先に緑色の魔法陣が現れ、智也の脳内に様々な"記憶"が流れ込んできた。


「ぐわあああ!」


 突然様々な記憶を流されたことで智也は激しい頭痛がした。


「よし、これでOKだね」朝霧はうなずきながら言った。


「これは、一体......」


「......ああ、ごめんね。記憶を一気に流すと頭が痛くなるんだよ。でも、これが一番手っ取り早いから」



 とても不思議な感覚だが、知らなかったはずのことを智也は鮮明に覚えている。


朝霧に送られた記憶は『魔術言語まじゅつげんご』と呼ばれるもので、例えるならプログラミング言語に近いものだった。


 魔術言語には文字や発音があり、魔法陣のような術式にその文字を刻み、術式の詠唱えいしょうすることで魔術の発動が出来るのだ。


 魔法陣のことを魔術だと魔術陣と呼ぶようなので智也もそうすることにした。



「魔術言語についてはわかったと思うから、早速さっそく、一つ魔術を教えるよ」朝霧は言った。


「お願いします!」


「オーケー、これから君に教える魔術は『カルザスのよろい防御魔術ぼうぎょまじゅつに分類されるものだよ。ちなみにカルザスが何なのかは分かっていないよ」朝霧は言った。


「防御魔術ってどんなものですか?」


「防御魔術にも色々あるけど、カルザスの鎧は一番スタンダードなやつだね。この魔術を発動中はつどうちゅうは魔力をちょっとずつ消費しょうひしていくけど攻撃を受ける瞬間に魔力の鎧で身を守ってくれるよ」朝霧は言った。


「なるほど!」


「じゃあ一度、ためしてみようか」


 朝霧はそう言うと「カルザスの鎧」と唱え空中に魔術陣を展開し、やがてその魔術陣は弾けて光の粒子となった。しかし、朝霧には何の変化も見られなかった。


「智也くん、私に向かってパンチしてみて」


朝霧が手のひらを突き出しながら言うので、智也は少しだけ強くパンチした。



 すると、拳が朝霧の手のひらに当たる寸前に発光する薄いバリアのようなものにはばまれた。


それは言うなれば金属の板を素手で殴っている感じだった。


「痛っ!」智也は拳の骨に当たったため、思わずパンチした方の手を引っ込めた。


「あはは、ごめんね。でも鎧の強度きょうどを理解しておくと覚えが早くなるんだよ」


「そ、そうなんですか......?」



 その後、智也は『カルザスの鎧』の術式を学び始めた。朝霧の話だと先程のように記憶を流すだけでは魔術を使いこなすことは出来ないので、ここからは彼が自力で覚えなければならないとのことだった。


◇◇◆◆◇◇


──そして『カルザスの鎧』を学び数日が経った。

初心者向けの魔術とのことだが習得しゅうとくには思っていたよりも時間がかかった。



「じゃあ、試しにやってみようか」朝霧がそう言ったので、智也は魔術を発動することにした。



 神経を集中させて術式をイメージし、空中に魔術陣を展開。そして魔術言語で「カルザスの鎧」と唱えた。


その瞬間、魔術陣の光は輝きを増し、魔術陣がはじけ智也をおおうように集結した。


 

「いいね、出来ているよ。強度もかなりのものだ。君の魔力が多いからかな......とりあえず、初めての魔術習得おめでとう」朝霧は言った。


「ありがとうございます!」


「その調子で頑張ってね」


「はい!」



(魔術の覚えが早いな。魔力量が多いと調整に苦労するけど、この子はすごいな......)と朝霧は思った──



 そんな時、突然、事務所のチャイムが鳴り、玄関の扉を開くとそこには慌てた様子の青年がいた。


「あの、た、助けてください」青年は必死そうにげた。


朝霧はその青年に近づいた。

「どうしたんですか?」


「実は、変なカルト教団に拉致されて、俺は逃げられたんですけど、妹がまだ捕まってて......お願いです、妹を助けるのに協力してくれませんか?」


「............そう言うのは警察に言った方がいいんじゃないか?」朝霧は訝しんな目で言った。


「警察は当てにならないんです! そのカルト教団は警察を買収しているし、それになんか魔法? みたいなものを使うんです......」


「......魔法.......わかりました。それなら妹さんを助けるために協力しましょう」


「ありがとうございます......!」


「ですがこちらも準備がある。夜八時までここで休んでいてください」


「ということで、仕事だよ智也くん」


「は、はい!」


 こうして、智也は初めての仕事をすることになった。


 その仕事とは、カルト教団に捕まった青年の妹さんを助けることだ。



そのカルトは「蛇骨教だこつきょう」と言って蛇骨だこつという神を信仰しているようだった。


そして青年は疲れていたのかソファで眠っている。


「蛇骨教......調べたところ魔術師が数人と魔法使いもいる」朝霧は言った。


「......魔法使いが......もしかして、その蛇骨という神は実在するんですか?」


「そうだよ。でも、蛇骨だこつは厳密には神ではなくてあくまで神の眷属けんぞくだ。人でも兵器のたぐいを使えば殺せる。ただ被害は甚大じんだいなことになるだろうけどね」


「......うすうす勘づいてはいたんですけど、もしかして神は複数いるんですか?」智也は朝霧にたずねた。


「そうだよ。人類が確認できるだけでも大体六百柱、その内の百七十五の神にカルトが確認されているよ」


「そ、そんなにいるんですね......」



 未来でこの世界を終わらせる神の名前はおろか姿形さえわからない現状げんじょう、どうにかして手がかりを探さなければならない智也は朝霧に尋ねた。

「なら、その中に姿を見ただけで殺されてしまうような神はいますか?」


 未来で朝霧の言っていた『姿を見ただけでも死ぬ』ということから智也はそう尋ねた。


「うーん......わからないな......どうして智也くんがそんなことを気になったのかはわからないけど、何となく重要そうなことなんだろうね。調べておくよ」朝霧はそう言ってくれた。


「ありがとうございます」



 そして夜八時になり、智也たちと青年の三人はとあるビルへ向かった──

読んでいただきありがとうございます。

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