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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第3章 狂気の月と蒼い星
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月の神

[救世団本拠地]


 ノックスがⅢのバッジを持つ大柄な男に話しかけた。

「クリーア、君に頼みたいことがあるんだ」


クリーアと呼ばれた男はノックスに膝をついて向き直った。

「なんなりとお申し付けください」


「ありがとう............話というのはね、三日後に日本で大規模な魔術テロが起こるのだけど、それを君に止めて欲しいんだ」


「承知いたしました。して、私は何をすれば良いのですか?」


 クリーアがそう尋ねたので、ノックスは言った。


「朝霧 黎たちがそれを阻止しようとしているから、その手伝いをしてくれ」


「は!」クリーアはそう応えると立ち上がり数人の部下を連れて日本へと向かった──



◇◇◆◆◇◇


 時は経過し2022年 七月十三日の昼となった。この日の夜から次の日の夜明け前、三時三十分頃に完全な満月となり、それまでに月食教団の計画を阻止できなければ大勢の人が死んでしまう。


 その理由から朝霧は魔術連に人員を送るよう要請したのだが、どうやら世界各地で魔物の発生件数が急激に増加するという事態が起きており、戦闘に長けた魔術師がほとんど出払っているため、十五人ほどの魔術師だけを増援に向かわせると言われた。


 そして、残る大きな問題がある。それは複製体がどこかへ消えてしまったことだ。昨夜から亜様村を見張っていたが、突然複製体が消えてしまい、亜様村は混乱している。


 

 魔術師たちとの合流を急ぎたいところだが、時間が経っても彼らは一向に来ず、朝霧は魔術連に講義の連絡をいれた。


 しかしながら、魔術連のものはその魔術師たちは『間違いなく日本の日善市へ向かった』と語った。



 このままではいずれ夜になってしまう。朝霧は増援の魔術師たちを待たずして、智也と宇佐寺と共に日善タワーの中へと向かった──



 日善タワーにはこれから起こることも知らない人々が大勢中にいる。朝霧たちは透明化と気配遮断の魔術を使ってタワーの上のデッキまで行き、そこから日善タワーのトップデッキへと向かった。


 現在時刻は昼の十五時、夜まではまだ時間がある。ただ、ここまで来るのになんの妨害も無かったことが気がかりではあるが......


 そして、三人はトップデッキの扉を開く──




 扉を開くと、"夜"になっていた。


先程まで明るかった空は真っ暗に染まり、夜空には大きな満月が浮かんでいる。


 この光景に、三人は驚愕した。まるで時が一瞬の間に加速したような、そんな感覚だったからだ。



 そして、トップデッキの中には神の子であるウィンダー=ジェーンがおり、彼は立方体の黒い箱を手に持っていた。


 ウィンダーがそれを空に掲げると、箱に刻まれた幾何学模様の溝が光を放ち、その箱がまばゆいほどの白い光を放ちながら完全に開いた。



 その瞬間、朝霧含め三人全員が戦慄した。


目の前に現れた存在は姿形は"人間"であった。美しい女性の姿をしており、ウィンダーと同じく金色の瞳をした長い純白の髪を持つ姿だ。


 しかし、それから感じる気配は人のものとはほど遠く、蛇に睨まれたカエルのような気持ちだった。それがそこに存在するだけで彼らの体は震えた。


 三人は直感的に理解する。その存在こそが月の神【イロウ=ルナ】であると──



「君たちがウィンダーの言っていた魔術師か......しかも、あの方のお気に入りもいたのか......ふふ、実に興味深い」とその存在は一人呟いた。


(あの方......? 何の話だ?)智也は思った。


「......君たちがここに来ることはわかっていた。だから、ゲームをしようじゃないか」と月の神は言った。


「ゲーム?」と朝霧が睨みながら言った。


月の神はそれを意にも介さず話を続けた。

「これからウィンダーに亜様村を襲わせる。すでに二百体近い複製体が村を囲んでいるから、君たちはそれを止めるんだ。まあ、守れても守れなくても、三十分後に私がこの魔導具を起動させるけどね」


 神が合図するとウィンダーはゲートを開いてどこかへと向かった。


「......つまり、十分経てば村を守っている間だとしても魔道具を起動させて皆殺しにすると?」朝霧は怒気を含んだ声で言った。


「その通り。全員を救うには亜様村を守りきり、かつ私を止めなければならない。そして、私を止めないと亜様村の住民含めた大勢が死ぬ。しかしたった三人で私を止めて村を守ることなんて出来るのかな?」と神は笑いながら言った。



 朝霧は険しい顔になったが、それでも冷静に指示をした。

「宇佐寺と智也くんは亜様村へ行ってどうにかウィンダーを止めてくれ。私はここで奴を止める」


「確かに、亜様村の防衛には人が少しでも多い方がいいと思いますけど、それだと朝霧さんが一人で神の相手をすることになる。流石に無茶ですよ!」と智也は言った。


「......安心してくれ智也くん。私は勝てない戦いに挑むようなことはしない」と朝霧は言った。その表情はいつものような自信に満ち溢れた顔ではなく、どこか不安があるような表情だった。


神はその会話を聞いて笑った。

「ははは、勝つつもりなのかい? この私に......しかもたった一人で......面白いね」


「一人じゃないさ。さあ、二人とも行ってくれ」朝霧は言った。


「行くぞ、智也。朝霧さんなら大丈夫だ」宇佐寺は言った。


「......わかりました。絶対、また後で再会しましょう」智也はそう言ってゲートを開いた。


「ああ。必ずまた会おう」


 智也と宇佐寺はゲートをくぐった。


「ふふ、夜は長い。せいぜい足掻(あが)いてみてくれ」月の神は笑みを浮かべながら言った。


「もちろん、足掻いてやるよ」朝霧は神に告げた。


◇◇◆◆◇◇


 智也と宇佐寺が亜様村へ着くと、すぐに異変に気がついた。


村を囲む山々の中から白い結晶で体を覆われた大量の狼と、人型の怪物が現れ、村へと歩みを進めているからだ。


 すると、智也たちの目の前にウィンダーが現れた。


「母さんからの命令は、村人と、君たちを全員殺すこと.......」ウィンダーは冷酷な目でこちらを見つめた。


 宇佐寺は智也に言った。

「こいつの狙いは俺たちも含まれている。奴はここで俺たちを殺す気だ。とは言え、ここで二人で戦っていたら村人たちを守れない。だから智也、範囲攻撃の出来るお前が村を守ってくれ。俺はウィンダー(こいつ)と戦う」


「......すぐに戻ります」智也はそう言うと自身に強化魔術をかけて村の方へ走り出した。



「......母さんよりは弱いけど、ボクも月の神(イロウ=ルナ)の"カケラ"。一人で敵うと思っているの?」ウィンダーは言った。


「へ、こちとらどんだけの修羅場潜ってきてると思ってんだ! 俺が勝つに決まってるだろ!」宇佐寺は笑って言った。


「師弟そろって、バカだね君ら」ウィンダーは冷ややかに言った。


「バカ? ああそうだ。俺はバカじゃないが、朝霧さんはバカさ。だがな、その馬鹿げた行動を人は勇気と呼ぶんだよ!」


「......なら、その勇気は無意味だったと、今ここで知らしめよう」


 輝く満月の下、三人の戦いが始まろうとしていた──



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