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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第3章 狂気の月と蒼い星
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月と兎

最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 一方、朝霧は村役場で村長である『尊亜そんあ 師吾郎しごろう』とのコンタクトに成功し、面会をしていた。


師吾郎の外見は九十代ほどで、顔にはシワが多くあり、声もしわがれている。常に目が細いのか眠っているような顔をしていて活力というのが感じられない男だ。


朝霧はウィンダーについて村長に聞いた。

「師吾郎さん、ウィンダーという人物があなたの家に尋ねて来たと思うのですが、何かお話をされましたか?」


師吾郎は答えた。

「ウィンダー......神主と一緒に来たやつか......あいつには、こう言ったな。『出ていけ』と」



「出ていけ......ですか......ウィンダーと何かあったのですか?」と朝霧は訊いた。


「何もない。この村に外の者がやってくるのは許さない......ただ、それだけだ」と師吾郎は無表情で言った。


朝霧は理由が気になり尋ねた。

「......それは、なぜですか?」


師吾郎はまたもや無表情で言った。

「"古き伝統"を守り、受け継ぐために部外者は排斥しなければならいのだよ」


「その伝統というのは......」


朝霧が言いかけた言葉を遮って師吾郎が低い声で言った。

「まだわからんか、さっさとこの村から出ていけ!」カッと見開かれた師吾郎の充血した目は非常に迫力があった。


(出ていけか、初対面の人物に向かって言う態度か?)と朝霧は内心怒りを覚えた。


朝霧は席から立ち上がり、ニコッと笑った。

「......部外者に対しては誰でも出ていけとおっしゃるのですね......それならば出ていきますとも」朝霧はゆっくりと立ち上がった。


「そうだ、早く出ていけ」師吾郎は鬱陶うっとうしそうに言った。


 朝霧は苛立つ気持ちを抑えて部屋を後にした。



「我らが伝統を、部外者に穢させはせぬぞ......ああ、我らが月の主よ、私たちに祝福を......!」と師吾郎は一人祈った。




──朝霧は村役場を出た後、智也との集合場所に向かうために村の中を歩いていた。


 この村では師吾郎だけではなく、老人の世代は村の伝統とやらを守るために部外者を排斥はいせきしようとする思想が強いようで、目立つ金色の髪をいているからか、老人たちの視線は朝霧に集中していた。


 朝霧はそれに居心地の悪さを感じた。

もしこの村が自分の故郷で、村八分むらはちぶにでもされたらこれ以上に不快な気持ちになるのだろうか?

そんな妙なことさえ考えてしまう。



 そんなことは置いておき、朝霧には村長との会話で気になることが一つあった。それはウィンダーが神主と共に来たということだ。


この村に神社は亜様神社だけなので、智也の向かった神社にいる神主がおそらく話に出て来た人物だろうと私は思った。 




◇◇◆◆◇◇


 朝霧と合流する前に、智也は村の様子を詳しく探っていた。


 村の周囲を探し回っていると奇妙なものを見つけた。

その場所は木が鬱蒼うっそうとしげる森の中だったが、その場所は不自然にひらけていて、さらにはクレーターのような大きなくぼみがあった。


「何だこれ.....」

智也は秘境巡りで自然の神秘を人よりも多く体験して来たと自負しているが、こんなものは初めてだった。


 なぜなら、その場所はまるで森の一部分だけを巨大な真球の形にくり抜いたように地面と木が削り取られていたからだ。


 地面は大体十メートルほど下まで削られて窪みができており、周りにある木々は不自然なほど滑らかな曲線を描いて削られている。


そして地面と木の削られて空白のできている部分がちょうど半径十メートルほどの球に見えるのだ。


これはどう考えても人為的につくるのは困難だ。これに一体何の意図があるのかもわからないが、より一層この村で何かがあったと確信させられた。




──そして十七時になり、智也と朝霧は合流して情報共有を始めた。


その結果、亜様神社の神主さんが嘘をついて何かを隠していることを確信した。加えて昼に感じた妙な気配も気になるので、もう一度行ってみようとおもったのだが......


数人の老人たちが智也たちの近くに集まって来て「私たちの村から出ていけ!」と叫んできた。


それがなかなかおさまらないどころか、周りにいた他の老人たちも集まって来たので智也たちはやむおえず村の外へ出た。



「あれじゃあ、亜様神社に行けませんよ......」と智也は愚痴をこぼした。


「どうやらこの村の連中は村長含めどうにも部外者が気に入らないようだけど......まさか、ここまで面倒だとは......」と朝霧さんは呆れた表情で言った。



 そんな時、朝霧に電話がかかって来た。


数分ほどして朝霧が話を終えた。

「どうやら、連絡のつかなくなった魔術師たちと連絡が取れたらしい。情報共有のために一度会ってくる」


「なら、僕はどうすれば良いですか?」


朝霧は時計を確認した。

「......そろそろ呼んでおいた私の弟子が来る。だから一旦、智也くんへの指示はそいつに任せるよ」


「わかりました......ちなみに、お弟子さんはどんな人ですか?」僕は尋ねた。


「......うーん、あいつはもうジジイって感じの見た目だね。基本は渋いけどカワイイ見た目の時もある。まあ頼りになるやつではあるよ」と朝霧は言った。


智也は朝霧の言っている意味がよくわからなかった。

「......渋いのにカワイイ? とりあえず老人男性なんですね。わかりました!」


「少し一人にするけど、何かあったらすぐに連絡してくれ」朝霧はそう言うとゲートをつくりその場を去った───




 亜様村の外はほとんど森になっている。暗く鬱蒼とした夜中の森は物音があまりしないのでそれがかえって不安を駆り立てる。


 しばらく待っているが、一向に朝霧の言っていた人物は来ない。そんな時、茂みの方からガサゴソと音が聞こえた。


智也は緊張の糸が張っている状態だったので、音のした方を勢いよく見た。すると、茂みの中から一匹の白い兎が現れた。


(何だ、ただの兎か......)僕はそっと胸を撫で下ろした......



 突然、渋い老人の声が聞こえた。

「お前が朝霧さんの言っていた前兆か......」


その声は明らかに"兎"から発せられていた。

「いま、喋った......?」



 すると、兎の周囲にボンと白い煙が現れた。


やがて煙が薄くなってくると、その煙の中にいた"人物"が見えるようになった。


 百九十はあるだろう背丈に、見るからにガタイの良さがにじみ出る風格のある老人がそこに立っていた。そのいでたちは仁王像を彷彿ほうふつとさせる。


 突然現れた人間に智也は空いた口が塞がらなかった。

「う、兎が人に......!?」


老人は智也に話しかけた。

「俺の名前は『宇佐寺うさでら 隆盛りゅうせいお前の兄弟子だ」



読んでいただきありがとうございます。

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