月の影
楽しんでいただけると嬉しいです。
智也は月が嫌いだった。確かに夜空に輝くその姿は美しいとも感じるが、彼には月に関するトラウマがあった。
智也が物心ついて初めてスーパームーンを見た時、スーパームーンにうっすらとだが【眼】があったのだ。
今まで見たこともないほど巨大なその【眼】に当時幼稚児だった智也は腰を抜かしてしまって、今でもトラウマを覚えている。
しかし、疑問に思うこともある。【眼】は生物のみについているというのに、なぜ月にも【眼】があったのだろうか?
◇◇◆◆◇◇
[2022年 7月9日]
探偵事務所に依頼が来た。どうやら魔術連からの依頼のようだ。
依頼の内容はとある魔術師の捕縛で、魔術師の名前は【ウィンダー=ジェーン】と言い、アメリカのカルト教団の幹部だ。
そのカルトは、【月食教団】と言い、何の神を信仰しているのかは不明だ。
ウィンダーという男が日本に来て何か恐ろしいことを計画している可能性があるということで彼らは調査することになったのだ。
ウィンダーは、【S県 亜様村】で最後に発見されたようだが、追跡をしていた魔術師とは現在連絡が取れていないため、注意が必要だろう。
「どうやら、今回の依頼は危険度が高そうだね......久しぶりに呼ぼうかな」と朝霧が呟いた。
「誰を呼ぶんですか?」
智也が尋ねると朝霧は言った。
「......二人目の弟子だよ」
智也たち二人は亜様村へと向かった──
◇◇◆◆◇◇
S県亜様村、そこは自然豊かな場所で周りを山で囲まれた盆地にある村だった。家は瓦屋根のものが殆どで人口はあまり多くない。亜様村は小さな村だが神社や村役場もあるので限界集落では無さそうだった。
智也たちはまず聞き込みを始める事にした。
しかし、村の者......特に老人たちは二人のことを無視した。ただ、村の中の若い者たちからは話を聞くことが出来た。
「このウィンダーという人を見ましたか?」智也は写真を見せながら尋ねた。
「ああ、見たよ。髪色とか目が特徴的だったから覚えてる。確か亜様神社と......あと村長の家で見たな」と村の者は答えた。
「ありがとうございます」
他の村の人たちにも話を聞いていくと、ウィンダーが訪れた二つの場所がわかった。
一つはこの村にある神社で【亜様神社】と言う。その神社には若い神主がいるようなので、智也は後でその神主さんに話を聞いてみることにした。
もう一つは村長の家で、話によると村長は現在、村役場にいる。智也と朝霧は話し合い、行く場所を分担することになった。
智也は亜様神社に行き、朝霧は村役場へ行く。その後十七時頃に合流して情報共有をする予定だ──
智也は【亜様神社】に着いた。
多少古びていたが、黒戸神社よりは手入れされているように感じた。
境内には話に聞いていた若い神主がおり、眼鏡をかけたその神主は境内の掃除をしていた。
智也はその神主に話しかけた。
「こんにちは!」
「......おや、珍しいですね。こんな村に人が来るなんて」と神主は言った。
神主は白い勾玉のついた紐を手に巻いており、その風貌や掃除の丁寧さから真面目そうな人という印象を受けた。
「こう言う自然のある場所が好きなんです......そう言えば、この神社はなんの神様を祀っているんですか?」
「............この神社は『亜様』という神を祀っています」
「亜様......亜が名前でそれに様がついているってことですか......亜様って地名じゃなくて神様の名前なんですね」と智也は興味深いと思った。
「......ああ、そうなんですよ。少し変わった名前ですよね」と笑う神主は疲れているような目をしていた。
「貴方に聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」と智也は尋ねた。
「いいですよ」と神主は言った。
「ありがとうございます。それで話というのは、このウィンダーという男の話なんですけど......」と智也は写真を見せながら言った。
神主はその写真を見て一瞬驚いていたように見えた。
「......すいません、この人が誰だかわからないです」と神主は言った。
「......本当ですか?」智也は先程の動揺を怪しく思い、再び聞いた。
「本当ですよ。確かに見かけたことはありますが、別に話したりとかもしてませんから」と神主は言った。
その後、もう少し話をしたがウィンダーに関して有力な情報は得られなかった。
しかし、神主......いや、亜様神社からは妙な"気配"がした──
読んでいただきありがとうございます。
今回からしばらくは情報集めが続きますが、わかりやすくできるよう頑張ります。
設定まとめは書くことがないです...




