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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第1章 禁忌への入り口
2/88

遭遇

楽しんでいただけると幸いです

 鳥居の境界の向こうはまさしく"宇宙"と言った場所だった。


どの方向を見ても星が見え、それは地上で見るものよりも何倍も綺麗だった。それと同時にここが完全な異界であることを智也は強く実感した。


その空間に足場は無く、上下左右の方向感覚が完全に狂ってしまいそうだった。


すると突然、智也は頭が痛み始め浮遊感と自分自身が拡散していくような奇妙な感覚に襲われた。


 気づくと、彼は荘厳そうごんな玉座の目の前にいた。その玉座は一目見ただけで人の技術を超えた代物しろものだと理解でき、その大きさは人よりも遥かに大きかった。


玉座には奇妙な文字がいくつも刻まれ、その大部分が純白でそこに黄金の装飾がなされている。そして背もたれの部分には大樹のようなものが描かれており、その周りに十四の美しい宝玉のようなものがはめられている。


 その玉座には誰も座っていないが、そこには確かに"何か"がいると智也は感じた。その何かは姿こそ見えないものの、あの神と似た強い気配を感じた。


 すると何かは智也に語りかけた。


「お前は何を望んでここへ来た?」


その声はまるで人の声が多重たじゅうに合わさったような声で、智也は声を聞いただけでも体が震るほどだった。


 そして彼は確信した。その何かが高次こうじの存在だと。


 彼は震えが止まらず、何よりその場にいるだけで、鉛のように重たい空気を吸い込んでいるかのように息苦しかった。


「僕は、過去を変える力を求めてきました」智也は言った。


「ほお、過去を変えるか......人間には過ぎた力だ......ならばお前は、何を対価にする? 腕か? 足か? 心臓か? それとも魂か?」高次の存在は言った。


智也はそれに対して即答した。

「何だってあげます。だから、過去に戻る力をください!」



「......ほお、本当に何でも良いのか?」


「......僕のものであれば、何でもあげます」智也は覚悟を持った目で高次の存在に言った。


「そうか......ならばお前との契約はこうしよう」


 高次の存在の持ちかけた契約は"タイムリープ"であり、これは過去に記憶のみを飛ばすというものだ。


そして二つ注意点がある。


 一つ、タイムリープは一度しか使えない。


 二つ、過去に戻っていることを人に話してはいけない。また人に気づかれてもいけない。どちらかの状況になった場合は智也の記録は世界から抹消される。つまるところ存在が無かったことにされる。


「対価は何なんだ?」智也は尋ねた。


「......対価は      」高次の存在は言った。


「......わかった。それでいい。ただし、その代償は未来を変えた後にしてくれ」と智也は言った。


 高次の存在はしばらく黙ったが、ほんの少し笑うような声で言った。

「それに関しては問題ない。未来を変え、代償を払ったとしてもお前はそのままの生活が送れる」


「......まあ、わかった。それで、僕はどのくらい過去まで戻れるんだ?」智也は尋ねた。


「人間の精神を時空移動させるなら、一年半前だな。それ以上だとお前の記憶が失われる」神は言った。


「......なら、一年半前に戻ったらどの程度記憶は失われる?」智也は尋ねた。


「......細かな記憶は失われるだろうが、ほとんどの記憶は失われないだろう。ただ、失われる記憶が悪ければ我と会ったことすら忘れるかもな」と高次の存在は答えた。



(......もし失われる記憶が未来の出来事だったら危険すぎるな......)智也は考え、最終的に一年半前に戻ることに決めた。


「では、一年半前でいいのだな?」高次の存在は言った。


智也は答えた。

「はい」


 その瞬間、智也の周りが白色に輝き、周りに虹色の粒子が散った。しかし、特に変化は無かった。


「お前にタイムリープの力を与えた。強く念じればお前の行きたい時間に行ける」


 そう言われた智也は一年半前に戻ることを強く念じた。


その瞬間、彼からまばゆい光が放たれ、やがて光が視界を奪った。


 過去と繋がる刹那、智也には高次の存在の声が聞こえた。

「神にもてあそばれるあわれな者よ、お前がその運命に抗う姿を見させてもらうぞ──」


◇◇◆◆◇◇



 視界が開けると、そこは夜道であった。彼はスマホで時間を確認した。


[2022年 3月12日]


 どうやらタイムリープは成功したようだ。


そして、一つ分かったのはタイムリープは過去の自分の記憶を上書きするものでは無く、過去の自分に記憶を送るものだということだ。


つまりは、智也には未来の記憶と、この夜道を走っていた時の記憶があったのだ。



 その時、智也は気づいた。自分が"追われていた"ことに......



 突如、【眼】が笑い始めた。その次の瞬間、智也の前方の空間が裂け、その奥から蒼白いボロ布を纏った人型の化け物が現れた。


 その化け物のボロ布の隙間からちらりと見えた腕は骨と皮だけで、干からびたその腕はまるでミイラのようだった。


その化け物の気配はどこと無くあの高次の存在に似ており、何かの関係性を感じさせた。



(こいつは何なんだ......? 今までこんな化け物に遭遇そうぐうすることなんて無かったぞ......)予想外の出来事に智也は動揺どうようした。


 相手の様子をうかがおうと智也が身構えた時、蒼白の化け物はそのミイラのような人差し指を突き出した。


 すると、その指先に魔法陣のようなものが現れ、智也の顔のすぐ横を"何か"がかすめた。


 智也の頬から血が流れ、彼の背後にあった金属製の標識は小さな穴が開き、彼に向かって倒れた。


 智也はそれをなんとか避けて化け物から逃げ出した。


(なんだあれ、魔法陣みたいのは出した途端に何かが僕めがけて飛んできた......もしあの攻撃がれていなかったら今頃僕もあの標識みたく風穴開けられて死んでたのか......?)


 突然の危機に彼は動揺を隠せなかったが、こんなところで死ぬわけにはいかない。彼はひたすら走った。



 彼はある時"壁"にぶつかった。


しかし、そこに壁は無かった。まるで透明な壁が彼の進行方向を妨げているように思えた。


(見えない壁......? 一体何なんだ!)智也は壁とは別の方向に向かい走った。そこには壁が無かった。


 しばらくの間、智也は見えない壁に阻まれつつも蒼白の化け物から逃げることが出来た。しかしながら、彼はいつの間にか森の方へ来てしまい、獣道を走り続けた。


後ろも振り返らずただ走り続け、やがて周りがひらけた。


 そこには小さな廃教会があった。


後ろを振り向いたが化け物はいなかった。智也はそこを見つけた時、なぜかそこに入るべきだと感じた。


彼は直感のような衝動に突き動かされ廃教会の中へと駆け込んだ。


◇◇◆◆◇◇


 その廃教会の中は外観通り廃れており、ステンドグラスは割れて散乱し、木製の椅子はほとんど腐ってしまっている。


 智也は廃教会にあるはずの何かを探した。その間に智也は今の状況について考えた。



 蒼白の化け物はタイムリープが原因で智也の前に現れ、なぜか襲って来ている。


化け物は魔法のようなものを使って攻撃してくる。威力は金属に穴を開けるほどなので当たりどころが悪ければ確実に死ぬ。


また見えない壁をつくったり、突然空間を裂いて現れたりとどこにいようと逃げ場は無い......



 智也はそれに対処するすべは無いが、この廃教会には化け物に対抗するための何かがあるという予感がしていた。



 そしてこの廃教会を探索してみると、祭壇さいだんの裏に地下室への扉のようなものを見つけた。


「この奥......」


 智也は少し躊躇ためらいつつ地下への扉を開き、ゆっくりと中へ踏み入った。



 扉を開けるとすぐに長い階段があり、その先の地下室は光源があるのか明るかった。


 そして階段をおりて地下室を見ると、そこには半径一いちメートルほどのあかく発光する魔法陣のようなものがあった。


その魔法陣の中心には、智也に見えている【眼】の模様が描かれており、ゾッとした。



 しかし、この魔法陣を見てなぜか彼は確信することが出来た。これこそがあの化け物に対抗するための手段だと。



 彼が試しにその魔法陣に触れてみると、その魔法陣はまばゆい光を放った──



その時頭の中で断片的な声が響いた。

「前兆─厄災─魔女─無還─殺せ─」



 光が収まり、智也はそのまま地面に伏せた。


 彼はまるで自分の形が不定形になったのではないかと感じるほどの強烈なめまいに襲われて動けなくなった。


(なんだ、急にめまい......? いや、違うこれは......!)


 智也はこのめまいの"原因"に気づいた。


 それは彼の周りを覆っている不定形のオーラのようなもので、そのオーラが、まるで自分の体の一部のように周囲のものを感じ取っているのだ。


つまり、オーラによって普段よりも広い範囲の情報を突然感じ取れるようになったことにより、彼の頭に普段の倍以上の情報が流れめまいがしたのだ。



 そしてしばらくするとめまいが段々と小さくなり、ついには動けるようになった。


「まだ少しクラクラする......この変なオーラとか、あの時の声とか、一体この魔法陣は何なんだ?」


 智也は一度地下室を出来ることにし、彼がゆっくりと祭壇裏の扉を出ると、廃教会の入り口に蒼白の化け物がいた。


 その時、先ほどまで見えていなかった蒼白の化け物のオーラが見えた。それは蒼白の光を放つ巨大なオーラだった。



化け物は再び人差し指を突き出し、魔法陣から何かを放った。しかし、先ほどと違い智也は放たれたものを感知することが出来た。


彼は間一髪かんいっぱつのところでそれを避けて化け物に向かって攻撃するため走り出した。  


(こいつが廃教会の入り口を塞いでいる以上逃げるのは難しい。だったらいちばちか攻撃して撃退げきたいするしかない!)


 彼は化け物に向かって殴りかかった。



 しかし、彼の攻撃は化け物に当たらなかった。いや、正確には当たらなかったのでは無い。まるで実体が無いかのように化け物の体をすり抜けたのだ。



 それに動揺したのも束の間(つかのま)、化け物は自分を中心に四方八方に魔法陣を展開した。


魔法陣から不可視の力が放たれ、一瞬にして廃教会は崩れ去った──





──智也は死んだ......かに思えたが、彼は奇跡的に廃教会の瓦礫がれきに埋もれず生きていた。


化け物の魔法陣から何かが放たれる刹那、彼は無意識に自分のオーラで身を守っていたのだ。


(あの化け物が何なのかはわからないけど、とりあえずどこかへ消えた......)智也は立ちあがり、その場を去ろうとしたが、その直後に強烈な眠気に襲われそのまま倒れてしまった。


◇◇◆◆◇◇



 智也の倒れた場所に向かって誰かの足音がした。


やがて、森の奥から一人の女性が現れた。


 その女性は金髪に金色の瞳をした人物......未来で智也の鍵を渡した人物だった。



「ここが崩れたと思って来てみれば......災厄の前触れとはね......」


◇◇◆◆◇◇


──智也が次に目を覚ますと、そこは見知らぬ部屋の中で、彼が少し起き上がって周りを見てみると自分がソファに寝かされていたことがわかった。



 この状況に彼が困惑していると部屋の奥にある扉から女性が現れた。

「お、目が覚めたんだね」


「......ここはどこですか?」智也は思わず言ってしまった。


「ここは【朝霧あさぎり探偵事務所たんていじむしょ】私の所有する事務所だよ」


「......あなたが僕をここまで運んでくれたんですよね。ありがとうございます」


「いいや、礼にはおよばないよ。聞きたいもあったからね。そういえば君、名前は?」


「僕は彩島 智也です」


「智也くんだね。私は【朝霧あさぎり れい】まあ朝霧さんと呼んでくれ」


「あ、朝霧さん......了解です......」


 朝霧はうなずき、椅子に座ってから智也にあることを尋ねた。



「ずっと気になっていたのだけど......君、何の神と契約した?」


見てくれてありがとうございます

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