表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第2章 異常な日々
18/88

琥珀色の彗星

楽しんでいただけると嬉しいです。

 突如現れた男は既に魔物が寄生したゾンビのようなものだろう。


足音がしたことから、透明化の魔術で隠れていたが姿を現したと言ったところだろう。おそらく誠太さんを襲った時も透明化の状態で近くにいたはずだ。



智也は故流取に向かって訊いた。

「誠太さんは生きているのか?」


「さあな、あの首飾りに吸い込まれちまったからな」と故流取は言った。


(あの首飾りに......?)智也は驚いた。


智也はもう一つ聞きたいことがあった。

「......どうして、息子の死体を利用してまでこんなことをした」


「ああ、バカ息子の蛮行のせいで家族の私まで面倒な目にあったからね、それに誠太とやらがバカ息子を捕まえたのも原因の一つ、償ってもらわないと」と故流取は言った。


それは智也の常識とは完全に逸脱した相容れないものだと理解した。


「そうそう、この魔物に入れ物にしている男は私の素顔をネットでさらしたんだ。魔術師としてあまり顔を知られたく無いってのに......だから、こいつは一番最初に殺した」故流取は語った。




(これで、準備は出来たな)智也は話している間に準備した『不可視の衝撃』を故流取に向かって放った。


しかし、故流取はそれを魔物の体でガードした。。

「あんた、気配がわかりやすいね!」


 故流取はニヤリと笑うと空中に魔術陣を構築した。何かの魔術を発動されると思った僕は先に防御魔術を自分にかけて一歩後ろに下がった。


するとゾンビの腹から巨大な魔物の口が現れて智也に喰らい付いてきた。


呑み込まれる寸前で智也は避け、魔物が攻撃した後の一瞬の隙をついて『不可視の衝撃』を故流取に向けて放った。


 しかし、故流取は魔物の体を枝分かれさせ、肉の盾にすことで防いだ。


「ふっ、やっぱりな。あんた、まだ人を殺したことが無いんだろ?」と故流取は笑いながら言った。


 智也はその言葉に動揺した。


「あんたの魔力量なら、本気で撃てば肉壁なんぞ貫いて私をぶち殺せたはずだ。でも出来なかった。それは、まだあんたが一般人パンピーだからだよ!」


「......どうして、あんたはそんな簡単に人を殺せるんだ?」智也は尋ねた。


「ふっ、魔術連という組織は隠蔽のためなら最小限の人間を殺しても良いことになっているんだよ。だから、もう何人も殺して来て、ブレーキがぶっ壊れちまったのさ!」

故流取がそう叫ぶと、魔物の肉体がさらに枝分かれし、その触肢の一つ一つに口が現れ、それが僕目掛けて襲いかかった。


 その時──


「場所を移そうか」と言う朝霧の声がしたかと思うと、智也たちの目の前に朝霧が現れ、足元に大きなゲートが開いた。智也と故流取はゲートの向こうへ落ちて行った。


◇◇◆◆◇◇


ゲートは地面と近いところにあり、智也たちは無傷で地面に着地した。


 ゲートの向こうは、以前『不可視の衝撃』の練習をしていた荒地だった。


「全く、人通りが少ないとはいえあんな見通しの良い場所では戦わないでくれよ」と朝霧が少し怒った口調で言った。


「す、すいません......」


「まあ、幸い誰も見てないことは確認済みだよ」と朝霧は言った。


「朝霧 黎......最強の魔術師とか言われているらしいが......クソ喰らえだ。世代交代といこうじゃないか、ババア!」と故流取が挑発するように言った。


朝霧はそれに怒ったようで、これまた挑発するように言った。

「智也くんに魔術の実戦を見せる機会も無かったしちょうど良い。かかって来な」


「ふん、所詮しょせん最強などと言う肩書きは飾りに過ぎないと証明してやるよ!」と故流取が叫ぶと、ゾンビの体が突然震え出し、そして内から肉を裂くように巨大な赤茶色の肉塊が姿を現した。


「この魔物は私の魔術で作った寄生型の魔物。しかし、体内で成長して成体となればもはや宿主など不要なのだ!」と故流取は高らかに笑う。


 魔物の大きさは智也の五倍ほどの大きさで、その巨大から感じる圧迫感は人のものとは違う本能的な恐れを感じた。


 巨大な魔物は、口の付いた巨大な触手を空に伸ばし、智也たちの方をその黄色い複数の目で見る様子は獲物を狙っているように感じた。


「この魔物をつくるのには二十年かかったさ。命令を忠実に実行し、人間社会に溶け込めるように......長かった。だと言うのに、まだ完成はしていない。力の強さはお前たちを超えているだろうがな!」と故流取は叫んだ。



「智也くん、今回は私が魔術の手本を見せる。よく見ていなさい」と朝霧は智也に言った。


「話はもういいだろ? さあ、惨殺劇ざんさつげきを始めようか!」


すると魔物が突如として動き出し巨大な十数個の口で朝霧に向かって襲いかかった。


その光景はまるで大きな赤茶色の波が押し寄せてくるようだった。



「智也くんにもわかりやすく出来るように、初級魔術だけでケリをつけようか」朝霧はそう呟くと不敵に笑った。


 朝霧は指で銃を撃つポーズをすると、その指先に小さな魔術陣が構築された。


不可視ふかし衝撃しょうげき」と朝霧が唱えると、魔術陣から智也の時よりも小さな魔力の塊が放たれた。


 その魔力の塊は銃弾と同等の速度で放たれ、一瞬にして赤茶色の波に大きな風穴を開けた。


(魔力をそれほど込めていないのに、どうして僕のものとあれほど威力が違うんだ......?)


智也が驚いていた時、朝霧は言った。

「同じ魔術でも工夫次第でその効力を何倍にも上昇させられる。これはすぐにでも出来るよ」



「ふん、その程度か? うちの魔物はとんでもない再生能力を持っているんだよ!」と故流取は叫んだ。


魔物に開いた穴は瞬く間に再生され、勢いは止まったものの魔物にダメージはない。


 朝霧は大量の魔術陣を空中に展開し、その照準を全て魔物に向けて放った。まるで雨のように放たれるその攻撃は魔物の体にいくつもの風穴を開け続けた。


魔物はそれでもなお再生を続けるが、再生の速度が次第に落ちていく。


 智也は朝霧の勝利を確信した。しかしその時、突如として地中から魔物の巨大な口が現れた。


「朝霧さん......!」智也はその瞬間に危機的状況だと感じた。


その時、朝霧は落ち着いた声で言った。

「平気だよ」


 完全な不意打ちだと思ったその攻撃を朝霧はわかっていたかのように容易に対処したのだ。


「自身の魔力を地中まで広げて周囲の状況を感知すればどんな奇襲にも対応できる」朝霧は言った。



(まずい......このままだとうちの魔物がやられる。最強の魔術師というのはダテでは無かったか......なら)故流取はそう考えた後、紫色の液体の入ったガラス瓶を魔物に向かって投げた。


 ガラス瓶は魔物に当たるとパリンと割れ、中に入っていた紫色の液体が魔物にかかった。


その瞬間、魔物は大きな雄叫びをあげ、その体色は青色へ変化した。


体躯も先ほどよりもひとまわり大きくなり、肉塊のような形状から足が生え、形が固まっていき、やがてヒドラに似たおぞましい怪物の形状になった。


「さあ、やれ!」と故流取が言うと魔物は先ほどよりも素早い動きで巨体を動かし朝霧に喰らいついた。


 その巨体から繰り出される攻撃は避ける隙間すらなく、朝霧は『不可視の衝撃』を放ち威力を相殺したが、魔物の体を貫くことは出来なかった。


(防御力も上がっているのか)と朝霧は思った。


魔物は再び朝霧に狙いをつけると今度は複数の触手を勢いよく伸ばして攻撃した。


朝霧はそれを避けながら、余裕のある様子で智也に言った。

「智也くんもそろそろ魔術に慣れてきていると思うし、そろそろ応用技を教えよう」


 朝霧はそう言うと再び指先に『不可視の衝撃』の魔術陣を展開した。


(応用......? ただの『不可視の衝撃』に見えるけど......)と智也は思った。


 しかし、その術式をよく見ると少しだが変化が加えられていた。魔術陣に刻まれている術式には"耐熱性"を上げる術式や速度、威力を変え術式、他にも様々な改良の跡があった。


(違う......! あの術式は『不可視の衝撃』と同じだけど、改良されている!)と智也は気づいた。


「いいかい智也くん。初級魔術でも自身の"魔力特性"の力を加えることで、より強くなるんだ!」

朝霧はそう言うと魔術陣は琥珀色こはくいろに輝き出した。


もはや不可視では無くなったその魔術の名を朝霧は唱えた。


琥珀色の彗星(アンバー・コメット)!!」 


 朝霧がそう唱えると燃えるように輝く琥珀色の魔力が放たれ、それは彗星すいせいのような尾を伸ばして魔物に向かって放たれた。


そしてそれは魔物に命中し、一瞬にして魔物の巨躯を琥珀色の炎で包むと、次の瞬間には魔物の肉体は燃やし尽くされていた。


 空からは魔物の灰が降り注いだ。それはまるで雪のようだった。降り注ぐ灰は空中で塵となって霧散した──



「バカな......私の魔物(さいこうけっさく)がこうも簡単に......」故流取は大きなショックを受けたようで膝から崩れい落ちた。


「どうやら世代交代には早かったようだね。百年後に出直してきな」と朝霧は故流取に言った。


「クソが......」故流取は諦めたように小さく呟いた。


「朝霧さん、凄かったです!」智也は朝霧に駆け寄って言った。


朝霧は自慢げに笑った。

「ふっふっふ、まあ年の功ってやつかな......! 智也くんもいつか出来るようになるよ」


「......」

しかし、ある考えがよぎり、智也は突然黙ってしまった。


「......どうしたんだい、智也くん?」朝霧は不思議そうに尋ねた。


「朝霧さんは、その魔術で......人を、あやめたことは、あるんですか?」智也は故流取の言っていたことが気になってそんなことを聞いてしまった。


朝霧は真剣な表情になって一言いった。

「......"ある"」


「そう......なんですね」

覚悟はしていたことだったが、朝霧の口からそう言われると智也は複雑な心境になった。


「魔術師には殺さないと止まらないような愚か者は多いからね。でも、君が人を殺すようなことはさせない......殺人者と一緒にいるってのは居心地が悪いかもしれないけれど、それでも良いなら今まで通り、助手をしてくれないかい?」朝霧は智也にそう言った。


「......まだ少しの間ですけど、朝霧さんたちと一緒に過ごして悪い人では無いとわかっています。それに、僕は朝霧さんのこと信じてます。だから、今まで通り魔術のこととか教えてください!」智也は言った。


「......そうか、ありがとう。そしてすまない。話すつもりではあったのだけど、なかなか言い出せなくてね」朝霧は誤った。


「まあ、言いにくいことですからね......いいんですよ」


「......そう言ってくれると嬉しいよ......じゃあ、とりあえず故流取は私が魔術連に引き渡しておくから、智也くんは先に帰っていいよ」


「わかりました」


◇◇◆◆◇◇


智也が帰宅した後も朝霧は故流取と共に荒地に残っていた。


「君、誠太さんを本当に殺していないの?」と朝霧は故流取に訊いた。


「知るか、あの首飾りをつけた女に聞け」と故流取は言った。


「そうか......はあ、君と戦ったせいでゲートが開けないよ」と朝霧は故流取に向けて言った。


「嘘をつけ、魔力はまだたっぷり余っているだろう」故流取は言った。


「正解! ただ、君と話したいことがあってね」朝霧は言った。


「話?」故流取は聞き返した。


「魔術連は魔術の隠蔽をする機関。だと言うのに、君は魔術の隠蔽どころか魔術を世間に広めるきっかけになるところだった。挙げ句の果てに私怨しえんで何人か殺しているだろう?」朝霧は威圧的な声色で言った。


「それがどうした......? 私の魔術の研究を妨げる奴は誰であろうとぶっ殺す。あんたも魔術師ならわかるだろ?」と故流取は言った。


「まあ、気持ちはわからなくも無い。ちなみに君はその魔術で何がしたかったんだい?」朝霧は訊いた。


「......本来なら魔物を宿主の中で増殖させてパンデミックまがいのことをしようとしていたんだよ。まあ、あんたらのせいで出来なくなったがね」と故流取はため息をつきながら言った。


「そうか......ただ、私は魔術の隠蔽に関しては厳しくてね......」朝霧は人差し指に小さな火を出した。


朝霧はその小さな火を故流取に向かって投げた。故流取の体は一気に火で覆われた。


故流取は慌てた様子で叫んだ。

「や、やめろ! 死ぬ、助けてれ!! ............熱く、ない?」

しかし、故流取は自分を覆う炎がほんのり暖かい程度の熱さしかないことに気づいた。


「ははは、その火の温度は四十一度だよ。にわとりの平熱と同じさ。君は鶏を抱っこしただけで死んでしまうのかい?」


「この......」故流取は朝霧の言葉にイラついたがそれ以上は何も言わなかった。


 朝霧が指を鳴らすと故流取の火が消えた。

「......智也くんには人を殺してほしくない。例え、それが間接的なものであってもね。だから君を殺すことはない。でも......"次はないよ"」朝霧の瞳は冷酷だった。


「......」故流取はそれに怯えていた。


「よし、じゃあ君を捕まえてもらう。せいぜいくさい飯でも食べて更生したまえ!」朝霧はそう言うと故流取の足元にゲートをつくった。


 故流取はゲートの下に叫び声をあげながら落ちていった。


「さて、とりあえず犯人は捕まえたから......誠太さんを探し出さないとね」


朝霧はそう呟くと探偵事務所へと戻った──



読んでいただきありがとうございます。

あとこれから第二章は続きますがこんなに聞き込みするのはもう一度くらいしか無いと思います。

ちなみに設定解説は本編の情報をまとめる用です。

●故流取 誓子

今回の事件の黒幕。二十年間魔物の製造と操る魔術を研究していた狂人。

息子がいたが自らの手で殺害。ついでに死体も利用している人です。

魔物を使ってゾンビ映画まがいのことをするのが目標です。

普段は穏やかな人物を演じていますが、中身は強気の狂人です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ