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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第2章 異常な日々
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真犯人

楽しんでいただけると嬉しいです。

 智也はコンパスを辿り雪野の元へ向かうため、一度家に戻り制服を着替えてから私服の状態で家を出た。


その時にカバンを持って行き、その中に一枚の写真を入れてある。その写真は故流取 湘一さんの写真と月桂樹の花束の写真で、これを手渡して指紋を取ろうと考えている。


ゲートを使って移動し、コンパスの方向を見つつ僕は歩いた。その頃には日が暮れ始めていて空が段々と暗くなっていた。


 しばらくして、智也は一人で歩いている雪野を見つけた。


雪野は横断歩道を渡ろうとしているようで、まだ歩道の信号が赤かったので智也は近づいた。


 やがて信号が青になり、雪野は歩道を渡り始めた。


ちょうどその時、突然トラックが猛スピードで走ってきた。歩道が青信号であるのにもかかわらずだ。ブレーキをかける気配もなく、危険だと感じた智也は急いで走りだした。


雪野はトラックが近づいて来ていることに気づき、咄嗟のことだったからか、迫り来るトラック「動けなくなっていた。


 智也はなんとかトラックと雪野の間に入り、防御魔術でトラックの衝撃を受け止めた。流石に防御魔術にヒビが入ったが、雪野は無事のようだった。


「怪我は......無いですか......」智也は息を切らしながら雪野に言った。


「え、あ......無いです」雪野は気が動転しているのかしどろもどろに言った。


「良かったです......」


 大きな衝突音が鳴ったため、近くの住民がこちらへ様子を見に来に来た。智也は雪野を連れて人目につかなそうな場所へ行った。


その時にトラックの運転席を見たのだが......"そこには誰もいなかった"──



「えっと、さっきは助けてくれたみたいで......ありがとう。あなたさっきの人よね? 誠太さんのこと探しているって話の」と雪野は言った。


「そうです。良ければお話し聞かせてもらえませんか?」と智也は言った。


「......まあ、さっきのお礼もあるし良いわよ。ちなみにあなたって名前なんて言うの? 私だけ名前を知られたく無いのだけど」と雪野は言った。


「あ、すいません......僕は彩島 智也と言います。実は誠太さんの奥さんと付き合いがあって、それで誠太さん探しを手伝っているんです」と智也は言った。


「......まあいいわ。それで、何の話をすればいいの?」


「この写真の花に見覚えありますよね?」と言い智也は写真を手渡した。


雪野は写真を手に取りそれを見た。


「何でこれを......」雪野は花束を知っている様子だった。


「誠太さんを探していたら見つけまして。その花、献花ですよね? 先ほどのあなたの反応からして知っている様子でしたが、なぜここに花を供えたのですか?」と智也は言った。


「......いや、違う。これは献花じゃない、落としたのよ」


「落とした......?」


「そう。おかしな話かもしれないけど、突然人間の体から怖い化け物が現れて、それに驚いて落としてしまったの......」と雪野は答えた。


(もしかして魔物に襲われてあの場所で落としたってことか? それならあの場所に魔物の痕跡があったのも納得できるけど......)


智也は続けて訊いた。

「なら、この人に見覚えはありませんか?」


 僕は死体を操られていた男性の顔写真を雪野に見せた。


すると雪野さんは驚きと共に少し怯えるような表情をし自分の片腕を掴んで何か落ち着かない様子になった。


「その人......もういい。全部話す」と雪野は言い、二ヶ月前の出来事から話し始めた──



◇◇◆◆◇◇


 二ヶ月前、私がいつも通り学校から帰宅しようとしていたら、突然路地裏に引っ張られて、その写真の男に襲われそうになった。


その時、偶然居合わせた誠太がその男を捕まえた。それがキッカケで私は誠太さんのことが好きになった。


その日以来、誠太さんのことをたまに見に行くようになって、時々話しかけるようになった。


その時に色々と話をして、少し前にやっと誠太さんの身の上話をたまに聞けるくらいの仲になった。


 誠太さんは幼い頃に両親に捨てられて、親戚もいなかったから色々と苦労したとか、そんな話も聞いたことがある。



(だから、僕が誠太さんのいとこって嘘をついた時にあんなに怒っていたのか.......)と僕は思った。



誠太さんから後で聴いた話だけれど奥さんの話は話しだすと止まらないから私にはあまりしなかったと言っていたわ。


 そんなある日、二週間前くらいになって誠太さんが捕まえたあの男が私の前に現れた。


あの男は『捕まって前科がついたせいで人生めちゃくちゃだ! お前のせいだ!』って私のことを罵ってきた。


自分でやったことなのに本当にバカなやつ。でもそう言う人間って自分が悪いと思っていても他人のせいにしたがるものでしょ。だからそいつは私のことを殺そうとしてきた。


その時も誠太さんが助けてくれた。偶然通りかかっただけと言っていたけれど、それは違うと私にはわかっていた。


誠太さんは私の事件から巡回する範囲を広げて細かく見てくれていた。だからこそ、私は助けられたの。


恥ずかしいけれど、好きという気持ちがまた大きくなった。



 そして三日前、私は友達と一緒に占いをしてもらうことになった。駅の近くにいた占い師に声をかけられて、初めは断ろうとしていたのだけれど、その時占い師にあることを言われた。


「あなた、警官に恋をしていますね」


『好きな人がいますね』とか『何かに悩んでいますね』みたいなことを言う占い師は多いけれど、警官という職業まで当てられたのは初めてで私は少し気になって占いをしてもらうことにした。


 その占い師は本当に不思議なことに私が誠太さんに悩んでいたことを言い当てた。そしてその占い師は最後に「この首飾りには厄払いの効果があります。ぜひ告白して見てください」と言って魔法陣みたいなのが刻まれた首飾りを渡した。


私はそれで勇気付けられて、次の日に告白した。


 でも、結果はダメだった。


「ごめん、俺には妻と子供がいるんだ。だから君の気持ちには応えられない」と誠太さんは言った。


 正直、裏切られたような気持ちになった。その時は怒りも感じたくらい。でも、それ以上に悲しかった。


誠太さんは本当に優しくて誠実な人とわかっていたから、私もそれ以上は言わないでその場を去った。


 けど、モヤモヤした気持ちを残しておきたく無いと思って、私は花束でも渡そうと思ったの。結婚祝い? って言うのかな......自分でもどうしてそう思ったのかはわからない。ただ、誠太さんが幸せならいいなって思った。


それが二日前の夜のこと。私は誠太さんの巡回ルートを先回りして待って、誠太さんに花束を送ろうと思っていた。



 けれど、私がそこで待っていた時、不思議なことが二回起こった。


突然、身につけていなかったあの首飾りが自分の首元についていて、しかもそれが赫い輝きを放っていた。


夕暮れくらいだった時間が、突然夜になって、目の前には誠太さんと千鳥足の男がいた。誠太さんは男を連れて歩いていたようで、私は声をかけようと近づき、誠太さんに触れようとした。



でも、その手はすり抜けた。まるで幽霊になった気分だった。驚いたのも束の間、その男の背中から赤茶色の化け物が現れた。


その化け物は今まで見たどんなものよりもおぞましく、私は恐ろしくて震えが止まらなくなり、持っていた花束を落としてしまった。


化け物は誠太さんの背後に周り、誠太さんはそれにぶつかった。その姿を見た誠太さんは動転して拳銃を撃ったけれど、その化け物には傷一つ付かなかった。


 化け物は巨大な口を開き、誠太さんを呑み込もうと襲いかかった。


その時、私は無意識に誠太さんの間に入り、化け物は私に喰らい付いた。凄まじい激痛が走った。


そして私の意識が暗転する寸前、化け物がどこかへ立ち去った後に誰かがこちらは近づいて来た気がした。


 けれど、私は何故か生きていた。傷一つ無かったし服に血も付いていなかった。しかも目覚めた時には何故かベッドにいるし、不思議の一言では片付かない意味のわからない出来事だった。


◇◇◆◆◇◇


「誠太さんもどこにいるのかわからないし、生きているのかもよくわからない......きっと奥さんも心配してるよね」と雪野は言った。


「......気になったことがあるんですけど、怪物が出てきた人間は写真の男でしたか?」と僕は訊いた。


「違う。知らない人だった」


「......なるほど......話してくれてありがとうございます。お陰で犯人がわかったかもしれません」




 雪野さんの話で三つわかったことがある。


 一つ目は、あの首飾りは魔物を操る術式が刻まれていたのでは無く、おそらく別のもっと複雑な術式が刻まれているということ。


 二つ目は、雪野は怪物の宿主だった男は写真の男と違うと話していた。つまりは......"怪物はもう一体いる"ということだ。


 智也は朝霧と遭遇した魔物と誠太を襲った魔物は同一個体だと思っていたが、それは違うと気づいたのだ。なぜなら、雪野は写真の男ならばそれに言及するはずだからだ。

おそらくは故流取 湘一とは別の人間の死体を利用しているのだろう。


 そして三つ目、智也は一人だけ嘘をついた人物を知っている。そしてそれは......



──次の日、僕は朝霧さんに昨日渡した指紋の鑑定結果とある人物についての情報を訊いた。


その鑑定結果はもちろん一致した。


 花束は元々雪野が持っていたものなので、おそらく男性の死体の服に付いていた指紋も揉み合いになった時に付いたものだろう。


 しかし、死体の服にはもう一つ指紋があったと朝霧は言っていた。それがおそらく真犯人のもの。


智也は学校終わりに朝霧からもう一つコンパスをもらってから花束のある場所へ行き、その近辺を探した。


そして、智也は"初老の女性"を発見した。


「あれ、君は昨日あった子じゃない。探している人は見つかったかい?」と女性は言った。


「いえ、まだなんです......そういえば、この前献花している人物を見たと言っていましたよね?」と智也は尋ねた。


「そうよ。この目でしっかり見たわ」


「でも、おかしいんですよ。彼女は献花した訳ではなく、あまりの恐怖に落としてしまったと言っていました」


「あら、私の勘違いかしら?」と初老の女性は笑って言った。


「それなら、貴方も見ていたはずですよね? 肉塊のような化け物を......街灯の少ないこの近辺で高校の制服を見分けるならあなたはその近くにいたはずだ。けれど貴方は化け物に襲われていない」智也は言った。


「化け物? 何の話だか......」初老の女性は困惑した様子で言った。


 智也は朝霧から貰っていたコンパスを手に取り、その女性の周囲を一周歩いた。


その針は常に女性を指していた。そして、智也が歩いている間に三人目の足音がした。


「コンパスは魔物の痕跡の方向を示す。この針は常に貴方の方向を指している。これが証拠です」


「......」初老の女性は黙っていた。


「朝霧さんに調べてもらいました。あなたは魔術連所属の魔術師であり、魔物の宿主にされていた故流取 湘一さんの母親。『故流取 誓子せいこ』......あなたが失踪事件の犯人ですよね」


智也がそう言うと初老の女性は笑い、その瞬間今まで感じていた穏やかな象から一変して威圧感を感じる佇まいになった。


「ははは、そこまで調べたのかい! あの朝霧の弟子だけあって、無駄に優秀だね。でも、この私は簡単に捕まるようなタマじゃないんだ!」


すると故流取の背後から一人の男がにじみ出るように現れた。その顔は青白く生気がない。


「ここで、死にな!」女性がそう言うと、男の体から魔物が現れ僕に襲いかかった──


今回はここまでです。

読んでいただきありがとうございます。

設定解説

●朝霧の年齢

 ......百二十九歳!

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