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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第2章 異常な日々
16/88

潜む脅威

楽しんでいただけると嬉しいです。

 なぜ、あの場所に献花があったのか?


過去十年の間、あの場所で事件や事故が起きたという記録は残っていない。


つまり献花をすること自体おかしいのだ。


そして咲が調べた結果、二日前の夜以降の足取りがわからないのはほぼ確実に亡くなっている証拠だ......


しかし、何らかの魔術によって探知できないようにされている可能性もある。


(......まだ、ほんのわずかかもしれないけれど希望は残っている。だからそれを信じて今は犯人を探すことに集中しよう)と智也は思った。


 それなら、誰があの場所に献花をしたのか考える必要がある。


過去十年間あの場所で死亡した人間はいないのだから、献花をした何者かはおそらく誠太に危害を与えた者だと智也は推測したからだ。



 現場に残されていた魔物の痕跡から、犯人は魔物......しかし不可解な点も多い。


例えば、あの場所にだけ魔物の痕跡が残っていたことだ。

知性のある魔物なら偽装を出来るかもしれないが、基本的に魔物は知性を持たないと朝霧は言っていた。


魔物が痕跡を残さないように隠蔽しているようで少し違和感がある。朝霧の考えでは、人間が魔術か何かを使い魔物を操っていると考えるのが妥当だとうだと言っていた。


 智也と朝霧は献花をした人物を探すことにした──



 まず、朝霧が探偵事務所で献花をした人物を探るために献花からこぼれていた月桂樹げっけいじゅの花びらを拾い探知魔術を使おうとした。


しかしながら探知魔術を発動して数分後、探知魔術が何らかの影響で阻害された。どうやら探る途中で探知が弾かれたようで、情報を手に入れることは出来なかった。


なのでまずは献花をした人物を探すために智也と朝霧は手分けをして聞き込みを開始した。


そして数時間が経ったが、雨が止んで人が多くなって来ているというのに、一向に献花をした人物を見たという人はいなかった。


それでも根気強く探していると、初老の女性が献花のある場所を通っていたので僕はその人に聞いてみることにした。


「すいません......! 人探しをしているんですけど、ここに献花をした人を見たことってありますか?」智也は聞いた。


初老の女性はかなり穏やかな印象の人物だった。


「人探し? ごめんね、今急いでるのよ」と初老の女性は言った。


「お願いします。少しだけ......!」


「ええ......まあ、その人なら昨日の昼に見たわよ」と初老の女性は言った。


僕はその言葉に驚きがっつくように聞いた。

「本当ですか!? その人って、どんな人でしたか?」


「暗くてよく見えなかったけれど、多分都間沢とまざわ高校の女生徒さんだったわね。こんなところに献花なんて珍しいから記憶に残ってたわ」と初老の女性は答えた。


「何か特徴はありませんでしたか?」


「特には......あっ、そう言えば不思議な首飾りをしてたわね。魔法陣っていうの? そんな模様のついた変わった首飾り」


「なるほど......! 貴重なお時間をありがとうございます。おかげで見つかるかもしれません」


「まあこのくらいならいいわよ。それじゃあ急いでいるから」と初老の女性は去っていった──




 三十分後、僕は朝霧さんと合流して情報共有をした。


「なるほど、首飾りをした女子高校生が献花をしていたということか......それはほぼ確実に今回の事件と関与していそうだね」と朝霧は言った。


「僕もそう思います。でもどうすれば見つけられるか......」


「もう一度献花をする可能性にかけて張り込みをするという手もあるけれど、一番は都間沢高校を調べるとかかな......」と朝霧が言った。


「かなり厳しそうですね......」


「うーん、なら智也くんは明日その高校に行ってみてくれ。校門を張ってその特徴に会う人物がいたらバレないように尾行するか私に知らせてくれ」と朝霧は言った。


「え、高校に行くんですか!」


「明日はちょうど月曜日だし、放課後くらいにゲートを使ってバレないように見に行ってほしい。難しいとは思うけれど、智也くんみたいな若い子のほうがこういうのは向いているからね」と朝霧が言った。


「わ、わかりました」


「それじゃあ、頼むよ......もう時期日もくれるし疲れただろう。今日はとりあえずここで捜索を止める。また明日、頼むよ智也くん」


「でも、そうしている間に誠太さんが死んでしまったら......」


「......私がしっかり捜索は続けておくから、智也くんはもう帰りなさい。明日は学校があるんだからね」


「......わかりました」


「じゃあまた明日会おう」


朝霧と別れた後、智也は人気のない場所でゲートをつくって帰った──



◇◇◆◆◇◇


「......若い間は智也くんに辛い思いをさせたくはないけれど、難しいかもしれないな」智也がその場を去った後に朝霧は呟いた。


朝霧は谷越 誠太が死んでいると考えていた。状況からしてそう考えるのが自然だろう。実際、相当な奇跡が起きない限り、この状況で彼が死んだことを否定する方が難しい。


 人の死に魔術師として多く関わってきた朝霧には死んで欲しくは無いという気持ちはありつつも、死んでいたとしても割り切れてしまう。


(智也くんも、内心では彼が死んでいると勘づいているだろうけれど、やはり希望は捨てきれないものだ)朝霧は過去の記憶を思い出しながら心の中で呟いた。


 朝霧にはやるべきことがある。それは一刻も早く犯人を捕まえて魔術や魔物の隠蔽をすることだ。


魔術や魔物の存在が世間に知られれば、社会は大きな混乱に包まれる。それだけは確実に阻止しなければならない。


──その時、朝霧は過去に"ある人物"に言われた言葉を思い出した。


「あなたは()()()


 智也の姿に似た青年が朝霧をそう罵った。彼は軍服を着ており、その青年の表情は怒っているようだが、彼の声からは辛さ、悲しさが伝わってくる。


その記憶を朝霧は鮮明に思い出した。


 魔術の軍事利用をさせない。それが青年との最後の約束だった。朝霧はそのために魔術を隠蔽する。


 魔物を操る技術を世間に知られれば、今後何が起こるかわからない。朝霧は犯人を捕縛するという決意を再度固めた──



 そして、捜索は深夜にまで渡った。朝霧は魔物の痕跡を探りつつ市内を回っている。


 深夜とあって人通りは全くと言っていいほど無く、街灯も少ない田んぼ道を朝霧は歩いている。


(ここら辺は田んぼが多いな)と朝霧は思った。


そんな時、目の前に一人の男がいた。(こんな深夜に珍しい)と朝霧は思った。


 その男は酔っ払っているのかフラフラと千鳥足で歩いていた。しかしその男の顔にはまるで生気がなく、本当に酔っ払っているのかと疑問に感じるほど顔は青白かった。


そして男と朝霧がすれ違った次の瞬間、男の背中から巨大な口が現れた。


それは男の背中から朝霧に目掛けて伸びた。それは赤茶色の肉の塊に歯のついた巨大な口と数十個の黄色い目を持った怪物だ。


怪物はその巨大な口で朝霧を食い殺さんと迫り、そして朝霧の頭に食らいつく。


その寸前、朝霧の背後に半径一メートルほどの魔術陣が現れ、そこから即座に赤い熱線が放たれた。


 怪物は熱線を浴びて瞬く間に溶けて消滅し、男の背中から腹にかけて風穴が開いた。


 そして、男は力なくどさりと倒れ朝霧は振り返った。


「まさか魔物に遭遇するとは......しかしこれは......面倒なことになりそうだ」朝霧はそう呟いた。


◇◇◆◆◇◇


 次の日、僕は学校終わりにゲートを使って急いで探偵事務所に向かった。


「智也くん来てくれてありがとう。都間沢高校は授業時間が長いから二十分後には放課後になる。その前にパパッとやることを済ませるよと」朝霧は言った。


 そして朝霧は魔術を使い、智也の制服の見た目を都間沢高校のものに偽装した。


「これでよし......とりあえずあとは頼んだよ智也くん」


「はい。でも少し心配ですけどね......魔法陣のような首飾りをつけた女生徒ということですが高校にも首飾りを着けているんですかね......?」智也は思ったことを告げた。


「都間沢高校は特殊でアクセサリー等も許されているとから、おそらく付けていると思うよ。それに、付けていなくてもこれがあれば大丈夫だしね」と朝霧は小さなコンパスのようなものを渡してきた。


「これは何ですか?」


「そのコンパスには魔物の痕跡を探る魔術が刻まれているから、近くにその人物がいれば反応するはずだ。あと、一度痕跡を記録すればその方向を示してくれるから追跡も出来るはずだ」と朝霧は言った。


「すごい! ありがとうございます。じゃあ行ってきます」


「うん。くれぐれも気をつけてくれ」智也はゲートを使い都間沢高校へ向かった──



そして都間沢高校に着きしばらくすると放課後のチャイムが鳴った。智也は怪しまれないようこっそりと学校に忍び込み、下駄箱の近くで帰る人々を見張っていた。


(絶対に見つけ出さないと!)智也は帰る人々を観察していた。さりげなく見ているつもりだが、実際は少し目立っている。



そして、智也は見つけた。


首に魔法陣の刻まれた貴金属の首飾りをつけた女生徒だ。髪は染めているのか桃色で、目には水色のカラーコンタクトを入れている。


 朝霧からもらったコンパスの針は確かにその女生徒を指していて、この女生徒がこの事件に関与しているのを智也は確信した。


(いた......あの人だ!)智也はその女生徒に声をかけた。

「すいません、そこの桃色の髪をした人!」


 声に気づいたのか、彼女はこちらを振り返った。


「えっと、どうかしましたか?」と彼女は言った。


「はい。谷越 誠太さんの件であなたに話を聞きたいんです」智也がそう言うと、彼女は一瞬動揺し、睨むような目線をこちらに向けた。


「ここじゃあれなんでひとけの無いところに来てください」と彼女は言ったので、智也はついて行った──


校舎裏のほとんどひとけの無い場所で智也と彼女は向かいあっていた。


首飾りをよく見てみると、魔法陣と言われていた模様にはしっかりと魔術言語が刻まれており、これが魔術陣だと僕はわかった。


「あなたは、誠太さんの何なの?」と彼女は智也を睨みつけるように言った。


「僕は......誠太さんのいとこです」と嘘をついた。


すると彼女は突然、叫ぶように言葉を放った。

「嘘をつくな! あの人にはいとこも親戚もいない! お前は他人だろ!」


彼女のすごい剣幕に智也は少し震えた。


(落ち着け、怖気付おじねづくな)智也は精神を落ち着かせて話を続けた。

「すいません、嘘をついたことは謝ります。ですが、僕は失踪している誠太さんのことが心配なんです。だから、何か知っていることがあれば教えていただけませんか?」と智也は言った。


女生徒は少し考えた後に話をし始めた。

「............誠太さんはね、真面目で誠実な人。でも、だからこそ人を裏切るの。私も、好きだったのに......」


「でも、誠太さんには奥さんが......」


「あの人は奥さんがいるなんて一言もいってくれなかった」


「え、それって......」


「私はずっと誠太さんのことが大好きだった。でもフラれたの。奥さんがいるからって」と女生徒は言った。


(......なんだか、色々事情がありそうだな)と智也は思った。


「話はこれでいい? もう帰りたいんどけど」と女生徒は言った。


「ああ、すいません......最後にお名前を教えていただけませんか?」と僕は聞いた。


「は? なんであんたに教える必要があるのよ」彼女がそう言って去ろうとした時、前から人が走ってくるのが見えた。


「あ、雪野っち〜! どこ行ってたのよ!」と別の女生徒が大きな声で言った。


「雪野......さん?」と智也は小さく呟いた。


「最悪......」と首飾りをつけた女生徒は呟いた。


「ん? どうかしたの?」と走ってきた女生徒は言った。


「いや、別に......」と雪野は言った。


「ふーん、校舎裏に二人......なるほどね、私はお邪魔だったかな」と女生徒はニヤリと笑った。


「は? 違うから!」と雪野は強く否定した。


「へえ〜、ちなみにそこの男子は告白とかしたの?」と女生徒は突然智也に話を振ってきた。


「してないですよ!」と智也は答えた。


「ふ〜ん、そう言うことにしといてあげるよ。じゃあ、行こうか雪野っち!」と言うとその女生徒は雪野を連れて帰って行った。



(何だったんだろう、あの人.......まあいいか)

智也は探偵事務所に戻ることにした──



 事務所に戻り、朝霧さんに探していた女生徒を見つけたことを話すと朝霧はめた。

「ナイスだよ智也くん。あとは決定的な証拠を見つけて捕まえるだけだ」と朝霧は言った。


「決定的な証拠ですか......どうすれば良いんでしょうか......?」


「それは考えてあるよ。だから順を追って説明しようと思う」朝霧はそう言うと昨日別れた後のことを話してくれた。



「え、魔物に襲われたんですか!」智也は驚いて言った。


「そう。しかもその魔物は人体に潜むという特性があったんだ」


朝霧は魔物について判明したことを話してくれた。


 まず、朝霧が昨日倒した魔物は人体に寄生し、それによって痕跡が残らないようにしており、魔物の痕跡が部分的にしか残っていなかったのはそのためだ。


そしてその宿主だった男性はすでに死んだ状態であり、死体を魔物を使って操り、無理やり動かしていたので酔っ払いのような奇妙な挙動で動いていた。


宿主だった男性は『故流取こると 湘一しょういち』という人物で、過去に強制わいせつの未遂事件を起こしたことがある人物だ。 


「......魔物に襲われたのに怪我が無くて良かったです」と智也は言った。


「まあね。私、魔術師では最強だから」と決めゼリフ風に朝霧さんが言った。


「すごいです!」と智也は言った。


「そう言われると照れちゃうな......まあ、証拠について話すんだけど、魔物に操られていた死体の服に三人分の指紋が付いていてね、その指紋の一つと献花の花束の袋に付いていた指紋を調べた結果、"同一人物"だとわかった」と朝霧は言った。


「と言うことは、指紋がそれと一致すれば犯人だと確定出来るってことですか?」智也は尋ねた。


「その通り。もしくは魔術を使ったと言う確信が得られればさらに良いね」と朝霧は答えた。


「なら、僕はどうすれば良いですか?」


「智也くんには、どうにかして指紋を得てもらいたい。方法は君に任せるけど、手荒なやり方はダメだよ」


「......わ、わかりました」


指紋を手に入れるなら早い方が良いと思った僕は雪野と呼ばれていた女生徒の所にコンパスを使って行くことにした──


読んでいただきありがとうございます。

それでは設定解説をします。

●魔術言語

魔術に使用する言語です。

文字とその発音があり、プログラミングのように適切な文字式を書き、発声することによって魔術を発動させられます。(無詠唱はできる)

また、モノに魔術言語(魔術陣)を刻むことで魔力を流すだけでその術式を使えるようになります。今回出てきたコンパスや『Ⅴ』の男が使っていた銃もこれに当たります。                   以上。

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