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セカンドエンド  作者: 米西 ことる
第1章 禁忌への入り口
12/88

犠牲はいらない

楽しんでいただけると幸いです。

 智也は無我夢中で走り、十数分もすると廃工場に辿りついた。


普段はこのような場所には近寄らないが、今は緊急事態なので立ち入り禁止の看板を無視して中へと入った。


 廃工場は想像よりも大きく、太いパイプが様々なところに通っており、少し入り組んだ構造をしている。



しばらく廃工場の中に入ると二人の黒服の男が現れた。


「前兆だな、こっちへ来い」

智也は黒服に案内され、ある部屋に辿り着いた。


そこに四人人の黒い服を着た男たちと、白いスーツを着たリーダー格とおもしき男がいた。白いスーツの男の胸元にはローマ数字の『Ⅴ』と刻まれたバッジがある。



そして、そこに昏はいなかった。



白いスーツの男は智也がその部屋に入ると智也に向かって言った。

「来たようだね、前兆よ。君の友人は別の場所に匿っている。とは言え、合図をすればすぐに殺せるがね」


「お前らは何が目的だ」智也は男に言った。


「目的は一つ、君と交渉がしたいんだよ」


「......交渉する気のある人間の行動には見えないけどな」


「まあ怒るのもわかるが君の友人のためにもここは大人しく話を聞いてくれ」男はそう告げると交渉の内容を話し始めた。


「君には無抵抗で私たちの拠点まで来てほしい。そうすれば友人は解放する」


「本当に解放するのか?」智也は疑って言った。


「もちろんだ。すぐにでも解放しよう。なんなら君の目の前でね」と男は言った。


(昏を助けられるなら、僕はどうなったって良い)と智也は思った。


「......わかった。条件を飲む。ただし、僕の目の前で解放しろ。そして、昏やその家族とは二度と関わるな」


「約束しよう」男はそう言うと仲間の黒服に目配せして智也に特殊な手錠をかけさせてから昏のいる場所まで歩き始めた。



(昏を助けられるならこの手錠、変な魔術陣が刻まれてる......一体どんな効果が.......)



 しばらく歩くと男はある部屋の前で止まり、錆びた金属製の扉を開いた。そこには縄で椅子に縛り付けられている昏がいた。


口にはガムテープを貼られてお。、智也を見た途端に何か言おうとしているのがわかったが、よくわからない。


「Ⅴ」の男が合図をすると黒服の男が昏のガムテープを剥がした。その瞬間、勢いよく昏が喋り出した。

「智也、早く逃げて! そいつらは智也のことを殺そうとしている!」


昏がそう言うと、Ⅴの男は言った。

「確かに、彼は死ぬかもしれない。しかし、それも人類、いやこの世界のためだ」


「お前らの目的は何なんだ?」と智也は聞いた。


「私たちの目的は......"世界を救うこと"ですよ」


「世界を救う? 僕を捕まえることと何の関係があるんだ?」智也は言った。



「......あなたは、アルファスの短剣を知っていますか?」と男が尋ねた。


「知っている」


「なら話が早い。アルファスの短剣は第一の前兆が自身の全てを代償に創ったもの......つまり、同じ前兆である君を代償にすればその短剣と同じ力を持つものが創れるのですよ」


「......なら、お前らは短剣を使って何をしたいんだ?」


「......"神殺し"ですよ。古来より、我々人類は神の脅威に晒されて続けている。正直なところ、人類は弱い。今我々が生存していることすら神の気まぐれに過ぎないのですよ。なら、我々も神に対抗する力が必要だと思いませんか?」と男は言った。



「短剣を創ったところで、誰がそれを使う? 神に短い刀身の剣を刺せる人間がいるとでも?」智也は未来での絶望的な出来事を思い出しながら言った。


「ええ、可能ですとも。私たちのリーダーなら」


「リーダー?」


「そう。私たち"救世団"のリーダーである【ノックス=ドーム】ならそれが出来る。事実、彼はアルファスの短剣で神を一柱殺していますからね」


 待て、ドームってアルファスさんの家名だったはず......それにアルファスの短剣を使って神を殺している? つまり、短剣を持っているのか?


「......アルファスの短剣があるなら、それを使えば良いじゃ無いか」智也は言った。


「五年前にノックスが神を殺して以来、アルファスの短剣は使用できない状態なのです。そんな時、私は君を、前兆を見つけてしまった。第三の厄災が起きる前触れ......それが短剣を使えない時に現れた。わかりますか、この危機的状況が?」と男は言った。


「だから、僕を短剣の代わりにするつもりなのか?」


「そうです。我々とて、あなたを殺すことになるのは心苦しい。しかし、これも世界のため......申し訳ありませんが、死んでいただきたい」男は冷徹に言った。




 智也は男の言葉に揺さぶられた。なぜなら、未来で理不尽に打ち勝つと決めたはずが、蒼白の化け物に敗れ、昏に傷をつけてしまった。挙げ句の果てには昏を人質に取られ、怖い思いをさせてしまったからだ。


 夢の中で言っていた、智慧の魔女とやらは『神を殺すためにアルファスの短剣を探せ』と言っていたが、それも現在は使えないとなると、第三の厄災を防ぐことすら危うい。


 智也はあることを考えてしまった。

『みんなを助けられるなら、自分が死んだ方がいいのでは無いか?』



(僕がいなくなっても、みんなが生きていればそれで......)智也はそう思ってしまった。




──その時、「バカ!」という声が響いた。それは昏から発せられた言葉だった。


「智也を犠牲にしてまで世界を救うとか、ふざけてるの? 私は、智也が犠牲になってまで救われた世界で生きたくない! 顔を見ればわかる。智也、そんなバカなことは考えないで」

 

昏は怒っていたが、何故か涙を流していた。


「ふん、何を言うか。この世界は多かれ少なかれ誰かの犠牲の元で成り立っているのだ。それとも身内は特別か?」と男は昏に強い口調で言った。  


「当たり前でしょ! 私は、私の大切な人が目の前で死にに行くのを止められない人間には成りたくない! もう二度と、大切な人を死なせたく無い!」


「バカバカしい! 世界のためだ、喜んで命を差し出すべきだ!」


「うるさい! 聞いて、智也! 私は智也がいなくなるなんて絶対に嫌だ! だから.......!」


 昏の語りかける声が、覚悟に満ちた眼差しが、智也の心に響いた──



そしてしばらく後に僕は言った。

「ごめん、昏。僕はこいつらに付いていくよ」


「待って、智也!」


その時、智也は昏にアイコンタクトを送った。それに気づいたのか、昏はハッとしたような表情をした。


「お前らと一緒に行く、だから昏を解放しろ」と智也は言った。


「わかった。解放しよう」男がそう言うと黒服が昏の縄を解いた。



「さあ、行きますよ」男はそう言うと魔術陣の刻まれた道具を取り出し、それに魔力を込めた。すると男の前にゲートが現れ、智也は男たちに連れられてゲートの方に向かう。


(昏の近くに黒服が一人、僕の周囲に黒服六人と白スーツの男......準備は出来ている。やるなら、今しか無い!)


 男たちに連れられる中、智也は立ち止まった。


「どうしました?」と男が尋ねた次の瞬間、智也は"魔術を発動させた"。


 しかし、今までの経験をフルで活かした魔術で無ければ、この状況を打開することは出来ない。


廃教会で化け物が使っていた全方位の魔術攻撃、そして純也の高速の魔術発動。


これらを真似て全方位に魔術陣を展開し、魔術を即時発動する。そのためのイメージの構築はすでに出来ている。



不可視ふかし衝撃しょうげき!!」智也がそう唱えると全方位に不可視の衝撃が放たれた。


昏に当たらないようあらかじめ魔術の軌道をずらし、さらに念の為智也の魔力で昏を守っている。


 

 放たれた魔力の塊は周囲の男たちを容易く吹き飛ばし、Ⅴの男は開いていたゲートの向こう側まで飛ばされ、その他の黒服は全員壁まで吹き飛ばされ気絶した。


「ありがとう、昏。お前の気持ちすごい伝わったよ」

 

「......智也、もう、着いていくなんて言ってビックリしたんだから......」


「まあいいだろ。結果オーライだ」


「......助けに来てくれてありが......」と昏が言いかけた時、開いていたゲートの向こう側から魔術とおもしき黄色いワイヤーのようなものが伸びてそれが昏の腕に巻きついた。


それに気づいた刹那せつな、昏はゲートの向こう側に勢いよく引っ張られ、ゲートの向こうへ吸い込まれそうになった。


智也は何とか昏の腕を掴むが、それはするりと離れてしまう。昏はゲートに吸い込まれてしまい、智也もそれを追いかけてゲートの向こう側に行った──


◇◇◆◆◇◇


 ゲートの向こう側は野原が広がっており、日も暮れているため薄暗い。光のワイヤーはその状況だと目立つため、昏の居場所は容易にわかった。


そして、光のワイヤーの元を辿るとあの白スーツの男がいた。


「このまま、逃すとでも......思いましたか?」男は立っているのがやっとのようでかなり消耗しているのが見てわかった。


(ありえない。気絶させられるように強めに魔術を撃ったはずだ。どうしてこいつはまだ立っている......?)この状況に智也は内心焦りを感じた。


「こちら側に来てもらうため貴方の友人を引っ張りましたが、これはもういいでしょう」そう言うと男はワイヤーの魔術を解いた。


「どうして魔術を......?」智也は言った。


「ここまで来たなら、人質なんてマネはしない。私の力で強引にでも貴方にはついてきてもらう!」


その男の目からは恐ろしいほどの執着しゅうちゃくのようなものが垣間見かいまみえた。


男の異常なまでの執着とそこから来る精神力は智也の心に少しだが恐怖を抱かせた。けれど、その恐怖は今は必要の無いものだ。


智也は深呼吸して心を落ち着かせる。その時、【眼】が閉じて見えなくなった。


 男はふところから魔術陣の刻まれたリボルバーを取り出して構える。智也は自分と、念の為に昏にも防御魔術をかけて臨戦体制をとった。


しばらくの緊張状態の後、男の銃から発砲音が響き、火花が散る。戦闘の合図がした──



読んでいただきありがとうございます。

なるべくわかりやすく出来るように頑張りたいと思います。

ということで設定解説をしたいと思います。

●蛇骨教の教祖

第五話で登場したカルト教団の教祖です。

蛇骨という神の眷属から力をもらい、神の眷属になった人物。この設定は後々詳しく書こうと思います。

主人公が固かっただけで実際はかなり強く、一般的な魔術師なら一撃で防御魔術を破れます。

また透明化も出来るのでかなり面倒な相手です。

また、主人公を異空間に閉じ込める魔法を使いましたが、あれは神との契約内容によってはどんな魔法使いでも使える効果になっています。これも後々詳しく設定を本編で出そうと思っています。

                      以上。

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