7話 神秘の集落
アツトはようやく気がついた。ゆっくりと開いた目に写ったのは大量の木々に木漏れ日だ。神秘的かつどこか恐ろしい、そんな雰囲気の中で依然ルクスはユウヤを引っ張っている。
「ちょっとルクスさん、耳に土入ってるよ! てか思ったけどこんなに怪力なら最初から荷物持ってよね」
「失礼ね! これはラフレシっていう魔法で攻撃力を強くできるの。 それを自分にかけて一時的に力を高めただけ」
「てかさ、そんなに魔法使えるならオレに取り憑かなくても全然戦えるんじゃないの?」
「人間とこっちの世界の人間、もといアツトくん達が言う怪異。2人で戦うよりも取り憑いた方がずっといいの、相性がいいならの話ね。実際私は今闇魔法は初級のヒガンまでしか使えないけど、アツトくんに取り憑いた時は中級のヒガンバまで使えたじゃない」
「じゃあオレとルクスさん、結構いいパートナー同士なんだね」
「……!!」
ルクスはまた顔が赤くなってしまったが、それを隠すようにうつむきながら「早く行くよ」とツンツンとアツトをつついて催促すると、アツトも地面に手をついて起き上がり、どこかニヤニヤしながら横一列に歩き始めた。
森の中は人の手がほとんど加わっていないようで、最低限の道が作られている以外は大自然そのものだ。川のせせらぎ、生き物の鳴き声、葉が風で揺られる音。そして澄んだ空気が辺りを包む中でアツトとルクスはエルフの集落へと足を進める。そんな中でもアツトは横目でルクスのことをチラチラ見ていた。
甘い香りにスタイルのいい体、サラサラな髪の毛に美しくも可愛らしい顔つき。ルクスがもしアツトと同じ高校生なら皆からの引く手あまたであろう。こんな経験元の世界じゃ絶対不可能だ! だからこそ、アツトはルクスの姿を少しでも目に焼き付けようと、そして何より一緒にいる今の時間を少しでも楽しもうとしていた。
「ちょっと、こっちジロジロ見ないでよ」
ルクスはようやく見られていることに気付いた。拳を頭をコツンと当てられたアツトはニヤニヤしながら軽く会釈した。
「もう、全く。ほら、そろそろ到着だよ」
「こ、ここがエルフの集落……」
鏡のように美しい泉。色とりどりに咲き誇る花々。そしてどこからか聞こえてくる鳥の鳴き声。そして、うっすらとした幻想的な光が辺り一面をふわふわと飛び回っている。
「め、めちゃくちゃ綺麗だ……」
思わずアツトは言葉を失った。その美しさのあまり口を開けたままのアツトにルクスは後ろから驚かせてみた。
「わっ! エヘヘへ、ビクってなった?」
「うぎゃっ! やめてよそういうの、寿命縮んだよ絶対」
「だーいじょうぶ! 若返りの魔法もエルフ達が知ってるからっ! ほら行くよ」
「ちょ、ちょっと速いって、飛ばないでえぇ!」
羽を使い飛んで移動するルクスと、それをドタドタと追いかけるアツト。2人の相性はまさに梅と鶯で、お互いいつの間にか心を開き合い始めていた。
ルクスはアツトのことを信頼していた。イケイケな感じではないけど、ぶっつけ本番でも勇敢に戦ってくれて、嬉しい言葉を何度もかけてくれて。相性がいいのは、戦闘時の憑依だけではなく人間性という面でも言えること、それか何より嬉しい。
アツトはどこか嬉しかった。引っ込み思案でヘタレでオドオドしている自分が意識せずとも本音で話すことができる数少ない相手がルクスであった。会って間もないはずなのに、一緒にいると楽しくて、ルクス側からもたくさん会話をしてくれて。人間不信状態のアツトでも、ルクスのことはすでに信頼している。
アツトとルクスはいつの間にか集落の一番奥、とても大きな大樹がある場所についた。何百年、何千年と折れることなく、腐ることなく幹を伸ばし続けた大樹はもはや神秘的なものすら感じる。
「ここにね、長老様がいるんだよ。ワケを話して強いエルフ紹介してもらおうよ」
「い、いきなり大丈夫なの?」
「大丈夫よ、こう見えても私知り合いなんだから、エッヘン!」
「つ、強い……」
「それじゃ、呼んでみるね! 長老様、私だよ〜!」




