35話 分析という非情
「まずは腕を鍛えるぞー! まずはダンベルフライとハンマーフライを3セット、はいせーの、ほいほいほい……」
「ぐああっ……5回目くらいから急にきつくなってくる……」
「ほら追い込め、追い込め!」
「ぐああああああああ! 腕が腕じゃなくなっていくうぅ……」
苦痛。アツトが筋トレというものを本気でやるのはこれが初めてだ。女子からモテるために何度かスクワットをやってみたことはあるが、気が向いた日に10回やって終わり、を1ヶ月ほど続けてみたことならあるが、当時ここまで追い込むということを意識してはいなかった。
痛い。ボディビルダーとかスポーツ選手の苦労を少し味わっただけでその職業のすごさを実感した。
「がんばれー、アツトくーーん!」
「そうですよー! 負けないでくださいー!」
ルクスとルワは後ろから声援を送ってくれている。それが今のアツトのやる気の原動力となったようで……
「……うおおおおおおお! なんだか、できる気がしてしたぞおおおお!」
「……素晴らしい」
アツトはさらに腕を追い込んでいく。見ているだけで暑苦しいまでのその姿に、スーアはウンと頷き、タオルと水を持ってアツトに近づく。
「一度ここで休憩しよう。まずは水を飲んだら、奥にあるマシンに腕を突っ込んでくれ」
「あぁ、ありがとうございます……ところでマシンとは?」
「フフフ……この世界で大革命を起こしたゴーレム族の技術……ご覧あれっ!」
「な、何だこれえええ!?」
アツトの目の前にはいかにも凄そうなマシンが3台ほど設置されていた。体重計のような土台部分からモニターやコンピューター、スマホや電流計のようなものなど様々なマシンが繋げられている。さらにはゲームを彷彿とさせる「ステータス」という表示もある。
スーア曰く、これはトレーニング後の成果を一瞬で分析し、それにより得られた能力上昇を数値で表してくれるらしい。さらに、トレーニングを続けることでスキルポイントなるものが溜まっていくようで……
「1度本気でトレーニングすると、スキルポイントが0.5から1ほど貯まる! それが8貯まれば、この街での買い物が1度だけ15%オフに……」
「いや散髪屋のポイントカードかいっ!」
アツトは思わずツッコミを入れる。
「えー、アツトくんも髪の毛おしゃれするんだー。年頃だね、かわいいんだからぁ」
「言い伝えによると人間はオシャレを楽しむ人が多いと聞いておりましたが……本当みたいですね、かわいいです!」
「えっ……ありがと……」
「女子」からのかわいいという言葉に思わずデレていると、スーアが笑いながらこのマシンについて補足を入れてくる。
「冗談だ、冗談。スキルポイントを貯めると、魔法や武術のスキルが身に付く。とは言っても種族や個人によって適正のあるものに限定されるけどな」
「本当にゲームみたいな感じなんですね……」
「とにかく、まずは見てみよう。いまのとれーにんぐのせいかをな、ほれっ」
スーアはアツトをマシンに乗せると、そのマシンはピコピコと音を立ててアツトを分析し始める。
カメラが全身を周りながら、時にはライトを点灯させながら頭から足の先まで細かく見ていく。そして3分ほど経ったところで、ステータスなるものを表示させた。
陽川アツト 16歳 男
職業:学生 レベル6 人間
HP50 平均70
MP50 70
攻撃35 50
防御45 50
知能90 85
敏捷40 50……
画面に映し出されていたのはほとんどが平均以下のステータスだ。他の種族の平均値も見ることができるが、ゴブリンですらHP、力、防御が人間の2倍ほどある。
アツトはその表示を見て絶望してしまった。ゴブリンって弱い敵として描かれることが多いけど、俺ってルクス達の力が無いと何もできないじゃん……と。
途方に暮れていると、スーアとルクス、そしてルワまでがアツトのことを励ましてくれた。
「自分じゃ何もできない? そんなことは無い、これから成長できるじゃないか!」
「そうだよアツトくん……それに私達、憑依することでそれぞれの何倍、何十倍と能力をアップできるんだよ? 逆に言えば、アツトくんがいないと私達だけでも世界を救うのは難しい」
「ですよー! 私とも相性良かったじゃないですか! 私達もトレーニング一緒にやります、頑張りましょう、一緒に!」
「み、みんな……!」
その後、3人でトレーニングを一緒に、たくさん行った。互いに励まし合いながら、競い合いながら。これこそ、仲間だ……!




