33話 歴戦のゴーレム・スーア
「よし……それならオレ達の戦闘スタイルでいかせてもらいます」
アツトはポンとルクスの肩を叩き、舞台に登る。ルクスもその意味をすぐに理解してくれたようで、すぐさま後ろからアツトに密着した。何度も経験したあの混ざり合う感覚が、アツトとルクスを包む。
光の中から現れたのはサキュバスと人間の融合体、自陣満々そうなその表情を見てスーアはニヤリと笑う。
(合体して戦うスタイル……やはり言い伝え通り)
スーアは腰に巻いた帯をギュッと締めなおして深々とお辞儀をした。アツトもそれを見て頭を下げる。
「スーアさん、頑張れー!」
「勇者様も負けないでー!」
「いい試合を頼むよー!」
観客はよそ者のアツトを軽蔑することなく、むしろリスペクトしながら声援を送ってくれている。ならば本気で戦う、アツトはやる気に満ち溢れた。
2人が頭を上げると、審判がドラを叩く音と同時に試合が始まった。スーアはかなりガタイがいい、フィジカルでは勝てそうにないが……まずは! アツトは素早く後ろに回り込み、回し蹴りを喰らわせる。そして追撃で、パンチを何度も何度も当てていく。
「おらららららら! 硬すぎるぞ、こっちが逆に体力削られてそうだ!」
「ほう……手数で攻めてくるのか」
《アツトくん、落ち着いて! ゴーレム族に物理攻撃はまず通じない、ここは魔法で削るしか!》
「ま、魔法!? でもヒガンバってかなり殺意剥き出しの技じゃ……」
《問題なし、私達サキュバス族は魔法を熟知してる! 例えば風魔法とか!》
「風……どうやってやるの!?」
《普通に台風とかをイメージして詠唱するだけ! 名前はリナ、スリナ、そしてエリスリナ! さ、やってみよ!》
「お、女の子の名前みたいで照れるけど……やってみる、リ、リナアアアッ!」
アツトが魔法を詠唱すると、竜巻のような渦がスーアに衝突した。観客たちはその突風に驚き、身をかがめる。
だがスーア本人には全く効いておらず、むしろ涼しげだ。スーアは強風に晒されながらも口を開く。
「物理がダメなら魔法で……そんなに甘い世界じゃないぞ、組手はっ!」
スーアは両腕を振り上げ、思いっきり地面にその腕を叩きつけた。その振動はかなりのもので、真っすぐ立っているのが精一杯だ。
「くっ……! まるで足の骨から入って髪の毛まで揺されているみたいだ……!」
「ハハハハハ! それなら、もう一発!」
スーアは再び両腕を空高く構える。同じ手には引っかかるもんかと、アツトは宙に浮遊しながらスーアから間合いを取る。それを見たスーアは今度はパンチを繰り出してくるが、アツトはそれを難なく避け続ける。
スーアの動きは単純だし、動作も遅い。だがあの防御力にこの剛力、一度でも攻撃を受ければそれだけでノックアウトされそうだ。
「くっ、こうなったら力で勝つしかない!
詠唱、ラフレシッ……うおおおおおお! 力が湧いてくる、よしこれで早速――」
《アツト君待って! ゴーレムはそんなに柔い種族じゃ……》
「甘いぞ勇者! 必殺・エルタンケストーンズ!」
スーアは四つん這いになったかと思うと、そのままアツトめがけて突進してきた。その勢いはまるで戦車、アツトは避けようにも間に合わず、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「ウアアアアッ!」
「そこまで! 勝者、スーア殿!」
審判の判定に、ギャラリーは湧いた。




