32話 パーカノヒモ村 その2
「それで、詳しく現状を聞かせてもらえませんか? いきさつとか、どうすれば直るのかとか」
早速アツトはゴーレム達に尋ねる。すると、ヒゲを生やした1人のゴーレムが杖をつきながら3人の前に立ち、ゆっくりと話し始めた。
「……これはつい2週間ほど前のことじゃ……いつも通りこの周辺の気温や地熱が平常通りであるかを確認していたいつも通りの朝のこと。突然、あやつらは現れたんじゃ……」
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『マググ長老! 今日は少し熱が弱いみたいです、火力を強めてもよろしいでしょうか?』
『ホッホッホ、ンザカよ、それじゃあお願いするよ』
『はい……デ、デライッ……!』
『おぉ、火が強まったぞい。流石じゃの、ンザカは』
『そうだぞー、ンザカ! とっても頼りになるぞ』
『魔法が使えるゴーレムなんて珍しいからねぇ……助かるわい』
『へへへ、ありがとうございます……』
ンザカは、30年前にパーカノヒモで生まれたゴーレムである……と言っても、人間で言えばまだ6,7歳くらいだ。ンザカはゴーレム族には珍しく魔法を扱え、村の住民からは天才だとして一目置かれていた。
しかし、ンザカには悩みがあった。それは……
『よーし、それじゃあ燃料も持ってくるぞー!』
『ンザカも手伝ってくれるか? 石とか運ぶの、今日は50トンぐらい納品されているからなぁ』
『へっ……? あっ、ボ、ボクは火を見張っておくよ! 万が一のことがあったら、だからさ』
『おーう、それじゃあよろしく頼む!』
『う、うん……!』
(……運べないよ、ボク。150キロくらいが限界なのに……何往復しても足りないよ……)
ンザカの悩みとは、力がないことだった。他の種族や人間に比べればかなり力持ちではあるのだが、それでもゴーレムの中では腕力は絶望的だったのだ。
無論、ほとんどのゴーレムはそれを蔑むことなく関わってくれる。だが、中には心無い言葉をかける者も存在した。
なぜ自分は力ではなく魔法に長けているんだろう? なぜ自分はフィジカル面が弱いんだろう? なぜ自分は周りとは違うんだろう? ンザカの心の中は、孤独そのものであった。
そんな日々が続いた、ある日のことだった。季節は真夏、そんな日に雪が降ったのだ。昨日まで空には入道雲が浮かび、眩しい日差しが村に降り注いでいた。にも関わらず、その白い異物はますますその勢いを強め、村を局地的に真冬に変えてしまったのだ。
山とその周りの気候を維持していたコークス炉は半壊し、村はパニック状態だ。
これは目撃情報をつなぎ合わせたものだが、当時、ある巨大な影が村の方をじーっと見つめていたらしい。それは毛深く、巨大で、何より吹雪の化身のようにも見えたという。
村の力ある者はその”影“に挑んだ……が、ゴーレム軍はたちまちやられ、何とか撃退させることができただけだった。そして、この陰は最後にこう言い残したそうだ。
『……再び現れる、近いうちに世界を冬に染めるため』
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「冬に染めるため……その脅威に立ち向かえる者をずっと待っておった。そして、その者は言い伝えの勇者であると確信しておった」
「そうでしたか……」
「その影はあまりにも強かった。だから、念のため勇者様達が立ち向かえる程の実力を持ち合わせているかを見せてほしい」
マググは相撲とりのように強く四股を踏んだ。すると、村の奥から屈強そうなゴーレムが現れた。身長はざっと見て3メートルはあるだろうか、とにかく大きい。
そのゴーレムは自己紹介を始めた。名前はスーア。年齢150歳、人間で言えば30歳程にあたる。昔村で行われた力自慢大会では、片手で600キロの岩を持ち上げてダントツで優勝した経歴がある。
その男はアツト達を見下ろしてカタコトで声をかけてきた。
「……少年達、戦おう、力見せてほしい」




