31話 パーカノヒモ村 その1
ようやく小さな村が見えてきた。想像通り山の一部を切り崩して作った小さな村といった感じで、ンザカそっくりのゴーレム達の姿が見える。また、集落の一番奥、そしてその中央には大きな舞台と巨大なコークス炉のようなものが見える。
「もうすぐ到着です、ここがパーカノヒモ村です」
「ここが……目的地……」
ベチャベチャになった飴を頬張りながらアツトはその村を観察していると、目に映るのは異様な光景であった。祭りの屋台のようにいくつかで店が並んでいるものの、客も店主もほとんど姿が見えず、ところどころで何やら集まって深刻そうに話をしている。
「……ルクスさん」
「ん? どうしたの?」
「念のためだけど……本来、この世界でも祭りの屋台って賑わっているのが普通だよね?」
「うん……明らかにおかしいね、ここ」
どうやらルクスも「賑わっていない屋台」に疑問を持っていたようだ。温度や季節の異常、それについて皆心配しているのだろうか? だとすれば、かなり強大な何かが待っていてもおかしくない。アツトは戦いの心構えをする。
ンザカから下車した3人は、ンザカに連れられて村の中を歩いていく。民家はアツトやルクスが住むようなものではなく、どちらかと言えば巨大な穴を持った蟻の巣に近い。おそらく地面を潜るとそれぞれの家に繋がっているのだろう。
「へぇ、ゴーレムはこんな感じの家に住んでるんだ……」
「はい。それでも最近は困ってるんです。なぜなら……」
ンザカは井戸の方に視線を向ける。外から見ると何の変哲もない井戸だが、その異変にいち早く気付いたのはルワであった。
「この音、空気の流れ、それにこの感じ……凍っていますね、奥の方で」
「はい。そうなんです……最近はこの村の地面の中までもがとっても冷えてしまって、まるで真冬に布団も何もなしで過ごしているみたいです」
「そ、それは大変だなあ……」
アツトはゴーレム達に同情した。他にも様々な弊害についてンザカに教えてもらいながら村を歩いていると、到着直前に気になっていた舞台に到着した。
その前に立つや否や、ンザカは深々と頭を下げ、
「おまたせ致しました。勇者を3人、お呼びいたしました」
と呟いた。それを聞くと、周りのゴーレム達は3人をいきなり崇めるように頭を下げ始めた。
「おお、この方々が伝承の……!」
「まさか勇者様がこんなにすぐ現れてくださるとは!」
「ありがたや、ありがたや……」
「伝承、勇者!? 何のことおおおおお!?」
思わずアツトは飛び上がった。確かに世界を救うつもりでルクスと共に歩き始めたアツトだが、おそらく序盤であろうこの時期にいきなり思いがけず勇者扱いされたからだ。
あたふたしていると1人のゴーレムが石板のようなものを渡してきた。確かにアツト、ルクス、ルワらしき人物と、あと剣を持った謎の人物、そしてその周りに古代の文字で何やら彫られている。
「こ、これがオレ達、ですか……」
「そうに違いない! この華奢でかわいらしい妖精! 魅力溢れるお姉さんって感じの悪魔っ子! そしていかにも異世界に転生しそうなオタク! それと……恐らくこの村のゴーレムの誰か!
どうみてもお主らじゃろう!」
「て、転生しそうなオタク……確かにこの前異世界から来たけど……」
ゴーレム達の目は輝いている。アツト達を言い伝えの勇者と信じてやまないようだ。ならば、人違いですなどと言うつもりはない。
詳しく現状を聞いて、村と城下町を救おう。




